父・松本幸四郎は「ずっと歌舞伎のことを考えている」
――父と息子というと、染五郎さんとお父さんの十代目 松本幸四郎さんとの関係性はいかがですか?
父は、普段の家にいるとき、舞台に立っているとき、お芝居を教えてくれるときとで境目のない人なんです。ずっと松本幸四郎でいて、ずっと歌舞伎のことを考えているから、普段もお芝居を教えてくれるときも変わらないです。だからこそ、自分にとっても歌舞伎が身近な存在だし、小さいときから、すんなりその世界の中に入れているのかなと思います。
――私は以前、13歳くらいのときにも取材をさせてもらったことがあるんですが、染五郎さんはそのころからすごく雰囲気があって。ともすればミステリアスな感じもあると思うんですが、ご自身の素はどんな感じなんでしょうか。
自分ではぜんぜんミステリアスだとは思わないですね。妹からは「おじさん」って呼ばれてます(笑)。若い人たちの流行りを全然知らないですし、妹が見ているものも「この人誰?」とか「この曲何?」って聞いて、驚かれてしまうので、そこから「おじさん」と言われるようになってしまいました。
――逆に最近は、山口百恵さんや沢田研二さんに興味があるそうですね。
今の年代のものより、そのころのものに惹かれてしまうんですよね。山口百恵さんや沢田研二さんの時代は、生放送の歌番組でも、毎回、見せることの熱量みたいなものがあって、時を超えて今映像で見ても、その熱量を感じます。そういうところが光って見えているのかもしれません。
三谷作品の魅力は「どのキャラクターも愛しいところ」
――ご自身も楽器を演奏されるんですよね?
そうですね。三味線や小鼓はもちろんですが、エレキベースとウッドベースも持っています。ジャズが好きなので。でも、単純に好きでやってるだけですね。
――以前のインタビューのときから、演出や脚本にも興味があるといわれていましたが、今も変わらず関心がありますか?
はい。新作も作ってみたいし。「作る」ということが好きなので、絵を描いたりもしていますし、衣裳なんかも作ってみたいなと考えています。
――脚本を誰かに見せたりもされていますか?
最近はなかなか書けていないんですけど、小さい頃は、自分で脚本を書いて、妹と大きなテーブルを舞台にして、ぬいぐるみでお芝居を上演して、家族に見せたりしていました。
――脚本や演出に関心があると、三谷さんの脚本に対しても学ぶところも多いのでは?
やっぱり印象的なセリフがいっぱい出てきますね。三谷さんの作品で自分が好きなのは、キャラクターひとりひとりの個性が際立っていて、どの人も愛しいところなんです。三谷かぶきのときもそうですし、どの作品にも共通する部分だなと思っていて。実際に三谷さんの作品に出させていただいて、愛情を持って書いていただいた役を演じていると、うれしい気持ちになりますね。
NHKエンタープライズ
発売日: 2022/07/22