「鎌倉殿」効果、若い観客の来場がうれしかった
――染五郎さんは、かなり前から「悲劇」がお好きということもうかがいました。実際に演じられるものも「悲劇」的な役も増えてきたと思いますが、実際に演じられてみていかがですか?
今も好きなんですけど、精神的にはきついところもあります。今年の「信康」は、喜怒哀楽の感情を全部出さないといけない役でした。まず楽しげな雰囲気から始まり、やがて父親の徳川家康の命により、岡崎城から追放される場面があって、そこからだんだんと不穏な空気になっていくんです。二番目の場面は、信康の家臣たちが信康を元気づけようと月見の席を設けてくれるのですが、その後、信康が徳川家のために命を絶とうと決意するところまで悲しさが募っていって、最後は切腹する場面になるので、計3回それぞれの悲しい場面に向けて熱を上げたり、冷ましたりというのが繰り返されるのは、演じがいもあるけれど、きついところもありました。
――そういうときっていうのは、演じ終わってもひきずったりするんですか?
家までは持ち帰らないので、家に帰れば普段と変わりないんですけど、最後に切腹して終わったときには、魂が抜けた感じはありましたね。
――「鎌倉殿」を経て、「信康」などの歌舞伎にも、その反響がありますか?
やっぱり大河を見てくださった方はすごく多いですね。「信康」にも、今までよりも若いお客様が多く来てくださっていました。若いお客様に歌舞伎に来てもらうというのは、自分の一つの目標でもあるので、すごくうれしかったです。自分はあまりSNSは見ないので、反響を把握できているわけではないですが、ドラマをきっかけに歌舞伎を新たに見に来てくれた方がいて、また見に行きたいと思ってくれていたらうれしいです。
――この「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」もそんな方が見にこられるといいですね。
この作品も、実際に演じたときの熱量や迫力がそのままに映像に収められている作品になっていると思いますし、それにプラスして映像ならではの臨場感も感じられると思います。セリフも現代の言葉で書かれていますし、笑いの場面も多いですし、すごく見やすい作品です。もし、歌舞伎に固いイメージを持ってらっしゃる方がいたら、そういう方にも気軽に見てもらえる作品になっていると思います。
■取材・文/西森路代
撮影/曽我美芽
ヘアメイク/AKANE
スタイリスト/中西ナオ
衣裳/シャツ33000円、パンツ26400円、ジャケット55000円(すべてガラアーベント/サーディヴィジョンピーアール) 、リング 31000円(サーディヴィジョンピーアール)
NHKエンタープライズ
発売日: 2022/07/22