2013年7月に始まり、2022年の最終章をもって大団円を迎えた人気アニメ「Free!」シリーズ。主人公の七瀬遙たちの水泳にかける日々を、TVアニメと劇場版の全8作を通して描き切るだけでなく、これからもずっと続いていくような予感を残した幕引きに、胸が高鳴ったファンも多いだろう。現在TVシリーズ2作目「Free!-Eternal Summer-」がTVerにて期間限定で全話無料配信中。このタイミングで、長年愛され続けてきた本シリーズの魅力を紐解いていく。(以下、ネタバレがあります)
「Free!」シリーズの根底にある大事な精神「つながり」
「Free!」シリーズ(以下、Free!)は、主人公の七瀬遙と仲間、ライバルたちが競泳を通して絆を深め、強くなっていくスポーツ青春群像劇だ。
競泳を題材にした作品だけあって、キャラクターたちが自身の専門種目を極めるべく日々努力を重ねる姿や、同種目で競い合い高め合うライバルたちとの関係性、勝負の世界の厳しさなどといった描写に、スポーツものならではの熱狂が感じられる。
ただ本作が一番描き、伝えたいのは、水泳に情熱を注ぐ者同士の中で生まれる強い「つながり」だと思う。そしてこれを象徴しているのが、それぞれが磨き上げてきた種目でつなぐメドレーリレーだ。TVアニメと劇場版、あわせて8作のシリーズのほとんどで、メドレーリレーが物語の集大成として描かれている。
たとえば1期のラストで描かれた、遙と幼なじみの橘真琴、かつて遙をリレーに誘った松岡凛、遙の泳ぎに惹かれた葉月渚の4人のメドレーリレー。「最高のチーム、仲間」だった小学生時代がウソのように、高校生になった彼らの間には深い溝ができてしまっていた。その起因となったのが、凛の挫折だ。彼は中学生の頃の水泳留学で、世界を目の当たりにし挫折を味わった。そして一時帰国の際に遙と勝負して負けてしまい、「水泳を辞める」と言葉を漏らすほどに挫折の色を濃くしている。しかし遙が仲間と一緒に泳ぐ姿を見て、凛は「本当は自分もそこにいたい」という泳ぐ理由を見つけ、笑顔を取り戻した。
2期「-Eternal Summer-」で描かれた2つのメドレーリレーも、観る者の心を掴んで離さない。まずは、凛と彼の親友・山崎宗介、彼らが在籍する鮫柄学園の後輩である似鳥愛一郎、御子柴百太郎のメドレーリレー。遙たちとのリレーで仲間と泳ぐ喜びを取り戻した凛を見た宗介は、今後の選手生命を断ちかねない肩の故障を抱えながらも、凛と最高の仲間になりたいという夢を叶えるために、ケガを隠してまで出場にこだわった。愛一郎や百太郎とも、この4人でしか得られない、見られない景色が見たいという気持ちを共有し、ともに泳ぐ喜びをわかちあっている。
また遙が在籍する岩鳶高校の、現体制でのラストリレーが描かれた2期最終話。3年生の遙と真琴の引退試合を目前に、涙を流す2年生の渚と竜ヶ崎怜。遙は彼らに、別の道を進むとしても水泳やリレーを通して得たつながりはなくならないと声をかける。そして全国大会という舞台で、彼らはさらに強固な絆を結んだ。またこのシーンには、順位の描写がない。彼らがいかに「勝つ」ことよりも「つながり続けたい」と強く望んだのかが伝わってくるだろう。
そして最終章『劇場版 Free!-the Final Stroke-』で描かれた世界大会でのメドレーリレーは、まさにシリーズ全体を象徴するつながりだった。専門性を磨き続けたキャラクターたちの力が結集し、レースをともにする。最終章ではあるものの、仲間と泳ぐ喜びにあふれたラストからは、彼らの物語がこれで終わりでないことがひしひしと伝わってくるだろう。
ポニーキャニオン
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