テレビ東京が2021年10月に立ち上げたファンコミュニティ「テレ東ファン支局」。無料登録すると人気番組のプロデューサーやスタッフによる裏話が読めたり、ユーザーが番組の感想を投稿できたりといった交流サイトだ。2022年5月には登録者数1.5万人を突破したファン支局だが、テレビ局がこのようなクローズドなコミュニティを運営する例は珍しい。狙いは何なのか、ファン支局の事務局長かつ総合マーケティング局総合マーケティング部の曺絹袖さんに話を聞くと、局にとってのファンの重要性、そして「ファンの顔が見えるマスメディア」というテレ東の新たなあり方が見えてきた。
テレビは一方通行のメディア、ファンの実態がわからないことに危機感
そもそものきっかけは2019年末から始動した「テレ東ファンプロジェクト」だった。一方通行のメディアであるテレビは視聴率を通じてしか視聴者が見えず、実際どんな視聴者がテレビ東京をよく見てくれているのかわからない、という問題意識を持っていた社内の有志10名ほどが集まって立ち上げた企画だ。
「当初は、そもそも何千万人が視聴するマスメディアにとって、ファンを大事にすることに意味があるのか、ファンの分析よりコンテンツの内容ではないか、という意見もありました。でも調査してみたら、たとえばプライムタイム(19時~23時)だと、視聴者数の約3割にあたるテレ東ファンの方々が、全体視聴量の約7割を占めているということがわかったんです。そこでまずファンの方が何を求めているのか知ることから始めました」(曺さん、以下同)
最初に実施した取り組みはファンミーティング。「2020年2月、ギリギリコロナ禍に入る前にテレ東の社食で、ひたすら『テレ東の何が好きなんですか?』を知るための会をやりました。本当にテレ東の熱心なファンという方に集まっていただきたかったので、アンケートを長文の自由回答にして熱量を計り、開催も平日の昼間にしたのですが、大阪から来て下さった方もいて驚きましたね。その後はコロナ禍に入ってしまったので、オンラインでも開催しました。併せて5月にはテレ東ファンの方とコミュニケーションするためのTwitterアカウント『あつまれテレ東ファン』を開設したり、夏には『テレ東ファンWEEK』として、番組を見ながらプロデューサーが裏話を語るオンライン飲み会生配信をやりました。プロジェクトが発足して1年くらいは『ファン像』を分析する期間でした」
実際にファンとやり取りし分析を進めていく中で、元々抱いていたイメージとは異なる部分もあったという。
「分析する前は、社内でもテレ東のファンはマニアックな方々というイメージが強かったんです。ネットで『俺たちのテレ東』と言われているような。でも実際にお会いしてみたら、物静かで 、テレ東の素朴さを愛してくれている方が多かった。テレ東のスタッフが一生懸命頑張っている姿に共感するという声もあり、それが『テレ東ファン支局』を、番組の裏側や作る過程を見せて一緒に楽しむコンテンツにしようと考えるきっかけになりました」
スクウェア・エニックス
発売日: 2022/04/21