7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は8月5日に放送された「お笑いTake2」(日本テレビ)をチョイス。
「お笑いTake2」やり直すことで見えるもの
滝沢カレンが見たいというただそれだけの理由で再生したものの、「まったく同じ内容を2回収録する」という番組の趣旨に端的に興味を惹かれ、最後まで食いついて見てしまった。今日も「見たテレビが面白かった」というだけの話。テレビお久しぶりです。
冒頭、滝沢カレンとバカリズムによって、ちょっと滝沢カレンが魅力的すぎてそれどころじゃないのだが、企画の説明がなされる。通常は一発撮りのバラエティ番組を、2回収録したらどうなるのか検証するというものだ。面白い。出演者はそれを知らないというのも面白い。ちなみに出演者は三四郎、インディアンス、エルフ荒川。エルフ荒川という人は、名前は知っていたものの姿を見るのは初めてだったが、インディアンスや三四郎は近年すっかり見慣れた顔であって、まさにバラエティ番組を見ている、という気にさせてくれる。三四郎の小宮は相変わらず私と同じ顔をしている。
アバンタイトルを終え、演者のそろったスタジオで、バカリズムが『発見!超局地的バズリマン』という、ダミー企画とはいえあまりに安直な番組がスタートし、虫パフェを食べるくだりと、合気道の達人に手一本で倒されるくだりを経て、素早くエンディング。「え、もう終わりですか?」という空気の中、「今から2回目を撮ります」と宣告された演者たちは、一体どんなTake2を繰り広げるのか…。
時は大FirstTake時代。あらかじめ宣言される「これはTake2ですよ」という事実に胸が躍ってしまうのはなぜか…。そういえば、東京03のコントで、こんな話があった。ある女性と結婚の決まった角田が、それを知る飯塚に、「今から彼女がサプライズで結婚報告に来るから、驚くフリをしてくれ」と頼む。「お前の目の前で演技をするのが嫌だ」と断る飯塚だったが、結局は演技をすることになる…という。個人的に彼らのコントの中でも大好きなネタなのだが、私は人が嫌々演技をさせられている姿が単純に好きなのかもしれない。
自分の嫌な性質に気が付きながらも、Take2をまっとうする演者たちの姿に興奮を抑えられないでいると、うなる瞬間が訪れる。Take1の際、2000年代のギャルファッションに身を包み、「若者の間で流行のリバイバルが起きている」と腕に巻いたルーズソックスに触れながら語るエルフ荒川に対し、バカリズムが「ちょっと古いなって思ってた」と吐露する場面があったのだが、Take2で同じくだりをやるとき、エルフ荒川は「今は1500年代のファッションが流行っている」と台詞を変え、腕のルーズソックスについても「藁でできてる」と嘯く。するとバカリズムがまた、「ちょっと古いなって思ってた」と返すのだ。ここはうなった。まったく同じ返しでありながら、その強度が全然違う。Take1とまったく同じことをしても仕方がない、かといってかけ離れてしまうのもよくない…そんな葛藤の中で出たのであろう「1500年代のファッション」というボケ、なんと倫理的で美しい…。このエルフ荒川という人は、動いてしゃべっている姿を見て一気に好きになってしまった。
大いに笑ったのちに再生を終え、パソコンを閉じ、Take2などかなわぬ人生に戻り、横になって時間を無為に消費し続けている。人生にTake2があれば……あるいは、もしこの人生がTake2なのだとしたら、Take1の自分には「ゴメン」と言うしかできない。やり直せるものなら、やり直して… いや、締めにしてはちょっと暗すぎるか…。すみません、Take2いきます。
【Take2】
はい!というわけで、非常に面白い番組でしたね。最近は猛暑が続いており、さらには台風まで来ちゃうなんて話ですから、お盆休みは家でゆっくりテレビを見るなんていかがでしょうか。きっと、あなたのお気に入りの番組が見つかるはず!ここまで読んでいただき、ありがとうございました。暑さに負けず、良いテレビライフを!!
……誰かTake3お願いしていいすか?