声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
動物、というのはどうしてこうも私たちに癒やしをくれるのだろうか。家に疲れて帰っても思わず笑顔になってしまうのは、我が家にいる2匹の犬のおかげだろう。
今回紹介するのは村山由佳さんの『猫がいなけりゃ息もできない』という作品だ。本作はエッセイであるため、ノンフィクションなわけだが、構成や語り口調も相まって、まるで小説を読んでいるかのような没入感があった。メインは猫ではあるが、村山さんご本人のお人柄や考え方にとても共感できる一冊である。読了後に言える今の気持ちは、一度でも動物を家庭に迎えたことがある人は、とにかく家で読んでほしい。私は、最初から最後まで共感しつつも、我が家の高齢犬のことがどうしても頭をよぎってしまい、手に汗を握りながら、時には涙を滲ませながら読んでいた。
愛猫家の著者である村山さんが17年連れ添った三毛猫のもみじとの出会いから始まり、もみじの闘病生活、そして、別れ。猫と村山さんの過ごした日々が、一冊にぎっちりと刻み込まれていた。村山さんの描く文章には、猫がどれほど人生を彩ってくれるのか、猫の存在が人生においてどれだけ大切か、という熱量が込められていて、犬と共に生活をしている私にとって、一緒に住んでいる動物は違えど、とても刺さる作品であった。
忘れもしない、小学五年生のあの日。私は人生で初めて連ドラのオーディションに合格し、両親は私に何か特別なご褒美を用意しないと、と言ってくれたことを覚えている。両親に「ご褒美は犬がいい。」と伝えて出会ったのが、今は13歳になるりぼんちゃんだ。彼女は私が子どもから大人になるまでの時間を共に過ごし、一緒に成長をしたと言っても過言ではない。
犬の時の流れ、というのは人間よりも早いため、犬の精神面的な成長も早いのか、我が家のりぼんちゃんが特殊だったのかは定かではないが、彼女は1歳の頃から既に達観していた。そして、最近では肝っ玉母ちゃんみたいになってきている。こんなことを書いても「嘘だ〜」という方もいると思うかもしれないが、彼女は私の寝具を自分の納得がいくまでフカフカにしてくれるし、どれだけ疲れて帰ってきても、私がお風呂に入るまでは「お風呂に入りなさい」と言ってるかの如くひたすらアオーンと鳴く。話しかけたいことがあれば犬語のようなものをひたすら話すし、私が泣いていれば必ず慰めに来てくれて、ニコニコと歯を見せて笑ってくれる。そしてものすごく綺麗好きな彼女は、なんと自分の肉球で自分の歯を磨くのだ。これは病院の先生に言っても信じてもらえないが本当なのだ。だから、一度も歯石がたまったこともないし、健康診断のたびに歯が綺麗と褒められる。
そんな人間味あふれる愛嬌たっぷりの彼女も、私が小学五年生から一緒に過ごしているということは、人間でいう80歳くらいのおばあちゃん犬になってしまった。時間はとても残酷だ。本作を読みながら、「まだ先だろう」「うちの子はまだ長生きするだろう」なんて、りぼんちゃんが特別な気がしていたが、いつかは必ずお別れをしなければならない日が来る。それはいつ来るか分からないが、私にそんな覚悟が出来るのだろうか、と本作を読みながら思わず手を握り締めてしまった。今ある時間を大切に、りぼんちゃんが元気なうちに彼女が好きなことをできるように。人生の主軸に動物がいる時点で描かれている本作、是非ご自身で感じてみてほしい。
https://ddnavi.com/serial/sato_hinata/
佐藤日向(さとう・ひなた)
12月23日、新潟県生まれ。2010年12月~2014年3月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして活動。卒業後、声優としての活動をスタート。主な代表作に『ラブライブ!サンシャイン!!』(鹿角理亞役)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』(暁山瑞希役)。ニコニコチャンネル「佐藤さん家の日向ちゃん」毎月1回生配信中。