「最後の夏、第40代応援部部長として精一杯応援する」
──桜ヶ丘中学校の応援部の部員は全部で4人。3年生の久保地くん以外は、2年生が2人、1年生が1人の、とても小さな応援団だ。しかし、その熱のこもった応援は他校にも知れ渡り、試合以上に注目を集めることもあるという。久保地くんは後輩からも“ぼっちんさん”と呼ばれ、慕われている。
これから夏本番、運動部の生徒たちだけでなく、応援部も熱い夏を迎えようとしていた。特に3年生であるぼっちん君にとっては最後の夏となる。ぼっちん君は精一杯の応援をし、後輩たちの目に最高の応援を焼き付けてもらおうと必死にがんばっていた。そんな時、信じられない知らせが応援部にもたらされた。人数規定により、応援部が今年度いっぱいで廃部になるというのだ。その知らせは突然だった。
「廃部になったところで俺らの熱い気持ちがあったら絶対に、それは誰かに伝えろって!この応援部がなくなったって少なからずお前たちと過ごしてきた時間がなくなるってことはないんだから!たとえ応援部がなくなってもそれがもはや事実だったとしても、それ以上の時を過ごしたっていう現実は変わらないから。俺が部長としてやったことはわずかだと思う。単に力不足。こんな3年で正直不甲斐ない。もっともっと応援したかったし。次の後輩の代までつないでなんぼだから。そのバトンをつなげなかったっていうのは、やっぱり部長として不甲斐ないってのがやっぱりある。それでも、何かを応援してきたって気持ちはみんなの心の中に残ると思うから、だから、俺たちは逃げない。最後の夏、第40代応援部部長として精一杯応援する。お前たちも…お前たちも…」
──ぼっちん君は嗚咽とともに崩れ落ち、泣き叫んだ。その瞬間、天気は雨へと変わった。ぼっちん君の熱い思いは後輩たちに届くのだろうか──。