「どうにか伝わってほしい」と願いながら磨き上げてきた呼び掛け文言
ーー公開した文言は、NHKのアナウンサーや記者が自ら被災者や災害の専門家、避難情報の専門家に取材をしながら改良を続けているものとのことですね。
林田アナ:我々アナウンサーは、新人からベテランまで1人1人が呼び掛けの文言に思い入れを持っています。私自身も過去の災害の研究をしながら、他のアナウンサーとともに新しい呼び掛けの作成に当たっています。
例えば、「道路に落下物があるかもしれません」ではなく、「道路に落ちているものがあるかもしれません」といった表現の方がより伝わりやすいのではないか、といったように、小さな違いかもしれませんが、どうにか伝わってほしいと願いながら、1つ1つの言葉を選定しています。
ーー災害報道にあたり、アナウンサーとして心がけていることを教えてください。
林田アナ:ニュースを日々お伝えする中で、災害の時の呼び掛けでは、「この状況で、どう呼び掛ければ一人でも多くの方が命を守る行動をとって下さるか」ということを、言葉を発する瞬間まで考え抜くようにしています。
その際に一番大切だと感じているのは、「“あなたに”逃げてほしい」と心の底から思って伝えることです。そうすることで、より一人ひとりに届き、「自分のこと」ととらえて命を守る行動につなげていただけるのではないか、と考えています。
ーーアナウンス時の具体的なノウハウをいくつか教えていただけますでしょうか?
林田アナ:まずは、正確であること。その上で、その時々の状況にあったトーンで呼び掛けることが大切です。例えば、雨が強まる前は、本格的な危機までまだ時間がありますので、「トーンを上げすぎずに、冷静に伝えること」がポイントです。こうすることで正しい備えや行動の指針をていねいに示すことができます。
一方で非常事態では、声のトーンにも切迫感を持たせて伝えることを心がけています。また、災害が起きた時、必ずと言っていいほど聞かれるのが「自分は大丈夫だと思った」という声です。「あなた」「ご家族」といった呼び掛ける相手や、「〇〇地区の皆さん」というように具体的な地名を示すことで、より自分のこととして捉えてもらえるようにすることも大切です。