慎太郎は10年でも20年でも待つというが…
振り返って慎太郎に向き直り、ちゃんと考えたんだという湊。ちゃかしたりごまかしたりせずに、しっかりと向き合う気持ちが表れていて、見ているほうは嫌な予感とともにドキドキとする。そして、湊は「俺は…」と言った後しばし考えてから意を決したように「俺はお前とは付き合えない」とはっきりと告げる。
「どうしてですか?」と尋ねる慎太郎は、成績のことなら死ぬ気で勉強してどんなに難しい大学にだって受かってみせると訴える。笑顔で慎太郎ならできると肯定する湊だが、慎太郎を説き伏せようと心の中のモノローグとせりふが交錯する。“慎太郎は強くて真っすぐでまぶしくて”「無理なんだよ」“ダメなのはお前じゃなくて、俺だ”「お前が受験生だからとか高校生だからとかじゃなくて、ただ俺が…」“弱くて臆病でちっぽけで逃げてばっかなやつが”「中途半端な気持ちのまま、お前の隣にいちゃいけないんだよ」――決して慎太郎のことが嫌いなわけではなく、むしろ慎太郎を思えばこそ葛藤する湊の心中に胸が締め付けられる。
佐久間先生のことまだ好きなら、10年でも20年でも自分のことを好きになってくれるまで待つ、とさらにすがる慎太郎。それでも湊はこれは俺の問題だ、お前の隣にいちゃダメなんだ、気付くのが遅いなと自嘲する。湊の泣き笑いは、見ているだけでつらく堪えていた涙がこぼれ落ちた。波の音と水面に反射する夕日が美しくも切なさを煽る。
湊はありがとうと感謝を述べた後もう一度、慎太郎とは付き合えないときっぱりと宣言。慎太郎は涙を飲むように喉をゴクリとさせながら、湊の答えを受け入れる。そしていつものように笑いながら、最後にキスしてくれませんかと湊をからかう。普段どおりに明るくふるまおうとしている姿が逆にたまらなく、涙なくして見られない。
草川と西垣の胸を熱くする好演に涙腺崩壊
ふざけているうちに転んだ湊を起き上がらせるために取った手を離さないまま慎太郎は、湊を好きになったことを後悔していないと、これまでの思い出を切々と語る。目を真っ赤にして、湊と過ごした全部が一生の宝物だという慎太郎に涙腺崩壊。
最後に一つだけ忘れないでください、生涯俺が好きなのは湊晃ただ一人だけです、と湊の頬に手をやって真っすぐに瞳を見つめて笑顔で伝えたのちに、慎太郎は湊に背を向けて去ってゆく。湊もしっかりと慎太郎の目を見つめながら言葉に耳を傾けていた。やるせないつらさに、涙は枯れることを知らずに滝涙に次ぐ滝涙となってしまう。
たたずみながら夕日を背中に浴び、去ってゆく慎太郎を見送るしかない湊の目には溢れんばかりの涙が。慎太郎は振り向きもせず、男泣きしながら歩みを進めていく。追うことも去ることもせずに立ちすくむ湊の頬にも堪えきれずに涙が伝うのだった。
ハンカチどころかバスタオルが必要なほど切なさが突き抜けた第8話。慎太郎の真っすぐでひたむきな思いをこめた西垣と、慎太郎と自分の思いに向き合った湊のけじめを体現した草川、二人の胸を熱くする演技が精彩を放っていた。彼らの好演がなければここまでの感動はもたらさなかっただろう。