香取慎吾が、「凪待ち」(2019年)以来約3年ぶりに映画出演を果たす。9月23日(金)公開の「犬も食わねどチャーリーは笑う」で香取が演じるのは、本人も「本当にダメ!」と言うほどの平凡で情けない男だ。
「ちょっと腹を立てながら演じました」演じるのは平凡なダメ夫
――今回「犬も食わねどチャーリーは笑う」で演じた裕次郎は、どのような人物ですか?
香取:裕次郎は今まで演じてきた役の中で一番自然体で、どこにでもいるような人物。ただ、めちゃくちゃダメなヤツなんです。そこそこ仕事はできるし、仕事場での人間関係もちゃんとしているふうに見せているけど、その感じも浅い(笑)。後輩から慕われているふうにしていても、そこまで慕われてないし…。実は素の香取慎吾って結構いい男なんですよ(笑)。その僕からすると本当にダメ。ちょっと腹を立てながら演じました。いろんなことを取り繕っているから、ちょっと掘って、はがしてみてやっと愛すべき男になっていく感じですね。きっと裕次郎は生きるのが下手なんだと思います。だから、最初は見ていてイライラするところが多いかも。いい芝居したなって思います(笑)。
“薄っぺらい夫婦”が新鮮「笑顔のシーンこそ恐怖を感じました」
――作中では、岸井ゆきのさん演じる妻・日和がSNS“旦那デスノート”に裕次郎への本音をつぶやいていたことから、夫婦の譲れないバトルが勃発してしまいます。
香取:台本を読んでまず感じたのは、この夫婦の薄っぺらさというか…。普通、お互いのことを気に掛けていくのに、そういうことは全くない夫婦なんですよ。で、こんなことが発覚したのに2人で笑顔のシーンがたくさんある。それがリアルなのかもしれないけど、寂しいし、笑顔のシーンこそ恐怖を感じました。そういう意味では、日和はSNSに気持ちをぶつけているだけ素直なのかもしれませんね。僕は人とのつながりが深い方なので、この2人の感覚が余計分からなかったです。ある意味、新鮮でした。
――市井昌秀監督は、草なぎ剛さん主演の「台風家族」も手掛けられています。撮影はいかがでしたか?
香取:監督はこだわるところはすごく強く持っている感じ。夫婦ゲンカのシーンも、普通だと感情的になって盛り上がったり、その後、落ち込んだり抱き合ったりしますが、今回はそういうのもない。演じている側からしてみれば、もっと感情的にしてもいいんじゃない?と思いましたけど、それが監督らしさなのかも。派手な演出をするのではなく、サクサク進んでいく感じがリアルで。だからこそ、ちょっと怖いしツラいかな。もちろん面白くはあるんですけどね。
――最後に、映画の公開に向けてメッセージをお願いします!
香取:僕自身、今回の映画のような、そこにある日常を描いた作品が実は好きで。街を見ていても、道行く人みんなに映画みたいなストーリーがあるんじゃないかって思うんですよ。そういう意味では、すごく直球ド真ん中で好きな作品でした。普通の人たちなのに、そこには深くて濃くて、ちょっと怖い物語がありますから。ちなみにこの作品、撮影が終わるまでタイトルが決まってなかったんですよ。あんまりない経験だったので、それも面白かったです。
■映画「犬も食わねどチャーリーは笑う」
9月23日(金)公開
配給=キノフィルムズ/監督・脚本=市井昌秀/出演=香取慎吾、岸井ゆきのほか
結婚4年目を迎えた裕次郎(香取)と日和(岸井)は、表向きは仲良し夫婦。だが日和がこっそり投稿していたSNS「旦那デスノート」をきっかけに、2人の小さな擦れ違いが少しずつつまびらかになっていく。
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