ロバート・秋山竜次扮(ふん)する最先端のクリエイターに迫る「クリエイターズ・ファイル」。今回は、“サスペンスドラマの女帝”こと女優の鳴竹あつこ(54歳)が登場。主役の刑事・植草みどりを演じる「権藤文子サスペンス~潜入捜査刑事植草みどりシリーズ~」20周年記念DVDボックスの発売を控え、長寿ドラマシリーズとそれを支える国民的女優の人気の秘密に迫る。
これぞ小説家・権藤文子の世界かなって感じています
――人気ドラマシリーズのDVDボックス発売が発表されましたね。おめでとうございます。
ありがとうございます。このシリーズを撮り始めて何年になるのかな…。って、そんなこと言ったら年がバレちゃいますね(笑)。気づいたら、もう28回になっちゃってるみたいで。あくまで権藤文子サスペンスだけで28回であって、それ以前の「淡田加菜恵サスペンス」、それから「吉住真亜子ミステリー~潜伏栄養士・服部成美シリーズ~」などを合わせると、30年になります。
――鳴竹さんが一番好きな回を教えてください。
難しい質問してくださいますね。離島で撮影した「夏のリゾート海城島 消えた連絡船“津輪野号”」は最高の作品になりましたね。とある犯人が海城島に逃げてしまい、潜入捜査部隊が総出で島に向かって捜索する流れなのですが、植草みどりは職員に扮して海城島の村役場に潜入するストーリーでした。
大物ゲストをお招きしたり、普段の撮影ではできないトリックや豪快な爆破シーンを取り入れたり。見どころ満載です。
――撮影も大変だったのではないでしょうか。
本当に大変でした。4カ月半だったかな。泊まり込みでの撮影でした。そんな撮影ができたのも、海城島の自治体の方々、海城島映画コミッションの方々など、さまざまな方々に支えていただいたからです。島内にある居酒屋「平助」のおかみさんとはいまだに関係が続いて、コロナ前ですが二人で旅行で香港にも行ったんです。
――他に印象的だった回はありますか。
このシリーズでは、植草みどりがさまざまな職業に扮して潜入捜査をしてきましたが、6年前に放送された「夏の五重塔連続不可解事件簿」では、全く関係のない人の告別式に潜入したことはすごく印象に残っています。普通でしたら「縁もゆかりもない人の告別式にどういう気持ちで参列すればいいの?」って困惑するところですが、一見不可解なこうしたシーンこそが権藤文子サスペンスの真骨頂。そんな気もしています。
どんでん返しが度々あるという展開もまた、権藤文子サスペンスらしさと言えますね。ここで終わるかなと思ったら、まだ終わらない。ここで最後かなと思ったら、まだ続く。そして結局、振り出しに戻る。でも変に解決はしている。予測できない仕掛けと思いきや、予測していた自分もいる。これぞ小説家・権藤文子の世界かなって感じています。
――当初、こんなにも長く愛される人気シリーズになると思っていましたか。
権藤先生の作品に携われるっていうのはうれしいことですが、一回で終わっちゃうんでしょって思ってたかも(笑)。けれど今では、鳴竹あつこじゃなくて、植草みどりって声を掛けられる方が多いですよ。
――これだけ長く続いた秘訣はどこにあるのでしょうか。
鳴竹あつこの部分と植草みどりの部分がうまく重なっているように感じるんです。気づけば、鳴竹あつこのときもあるし、また気づくと植草みどりのときもある。気づくと権藤文子のときだってありますね。そうやって、3人の人格を使いこなしている感じというのでしょうか。そういう意味では、楽に演じさせてもらっているのかもね。最近では、私が鳴竹あつことしてしゃべったつもりなのに、まわりには権藤文子みたいだって言われることも少なくないんですよ。それに対して文句を言ってる自分が案外、植草みどりだったりもして。最近は、線引きが難しくなっている部分もあります。
ただ、これ正直に言いますね。時々、女優・鳴竹あつことしてよりも、本名の踏木リリヤとして演じているほうが楽だったりもするわけです。岐阜県、踏木民芸品店の娘である踏木リリヤという自分の“素”が出てきて、植草みどりと二重写しになるというのでしょうか。植草みどり、鳴竹あつこ、踏木リリヤ、そして、権藤文子、その全ての人格が合った瞬間が、一番いい演技をできる瞬間なのかもしれません。
――おなじみの部下、川村刑事の人気も高いと聞きます。
伊藤くんですね。私のまわりでも伊藤くんが素敵だっていうお友達が多いんです。まだ伝えてないけど、調子に乗っちゃうから(笑)。彼は少し抜けているところがありつつ、とても素直なキャラクターですごく愛されています。
――最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。
視聴者、読者の皆さん、いつも心ある応援ありがとうございます。私が長いこと続けております、植草みどりシリーズの記念DVDボックスが発売となりました。
最新回の『奥平純忠、その消えたカミツキガメの実態と真実。消えたジョンソン・レーマンとその真実の記録。その実態は一体どのような過程を経てここまでたどり着けたのか。消えたファクトパスハーミー。この伝説、この伝記、重科学記念所の秘密は一体誰が知っているのか。ゼットレストーパー事件簿。この暗号は……』も特典収録されています。ぜひご覧になってください。