指原莉乃がプロデュースするアイドルグループ・=LOVE(イコールラブ)のメンバーであり、アニメ好きの野口衣織が「神セリフ」からアニメの魅力をひもといていく連載企画。第12回では、2020年6月にNetflixで全世界独占配信され、先日の地上波初放送でSNSでもトレンドに上がった映画「泣きたい私は猫をかぶる」について語る。※この記事には、作品のネタバレが含まれています。
「泣きたい私は猫をかぶる」ってどんな作品?
空気を読まない言動から“ムゲ(無限大謎人間)”というあだ名で呼ばれている笹木美代(CV.志田未来)は、クラスメイトの日之出賢人(CV.花江夏樹)に想いを寄せている。かぶると猫になれる不思議なお面をもらったことで、猫の太郎として日之出の家に通っていたムゲだったが、いつしか“人間”と“猫”の境界があいまいになっていき…。人間に戻るために奮闘する中で自分を支えてくれていた本当に大切な存在に気付く、青春ファンタジー作品。
人間の私だからこそ得られる幸せがある
最初にこの作品が気になったのは、タイトルがキッカケでした。「猫をかぶる」という言葉は、普通はいい意味で使わないですよね。だから「泣きたい私は猫をかぶる」ってどういう意味が込められているんだろう?と気になって、見ようと思いました。
主人公のムゲちゃんはいつも笑顔で、一見すごく明るくて活発なんですが、実は家庭環境が複雑で、心の中では闇を抱えている部分もある女の子。ある日、こんな世界なんか嫌いだ、滅びちゃえ、と思っていた時に“猫になれる仮面”をもらいます。
いつもは素っ気ない態度を取ってくる大好きな日之出くんも、猫の姿で会うと優しくしてくれるし、見たことのない一面を見ることができる。そこに家族との問題や、日之出くんに最悪な形でフラれるといった事件も重なり、「人間の私を必要としてくれる人なんていない」と絶望したことで猫になることを選んでしまうんです。現実でもよく「猫って気ままでいいな」「猫になりたいな」なんて言ったりしますが、ムゲちゃんもきっとそんな気持ちだったんじゃないかと思います。
人間になることを望んでいた飼い猫のきなこと交換する形で猫になり、その方がお互いにもっと幸せになれるし、大切な人を幸せにできるとも思っていました。でも実際は、それぞれ人間の姿・猫の姿でしか得られない幸せやエネルギー、関係値みたいなものがあって、違う姿になったことでそれを失ってしまうんですね。そこで初めて、本当に欲しいものはこれじゃなかったんだって気づくんですけど、そこに至るまでの葛藤というか“ないものねだり感”にすごく共感できて。人間の私だからこそ得られる幸せみたいなものを、改めて感じさせてくれた作品でした。
東宝