娘の提案
娘は引き下がらなかった。
「ママ、あやまればいいじゃん」
「うん、謝ったよ。うん。ごめんなさいね、同じおうちは」
「わかった」
「ママ」
「なあに?」
「じゃあ、あたしもいっしょにあやまってあげる」
これは新しい展開。
娘もあの手この手で攻めてくる。
成長しているわけだ。と、感心している場合ではない。
「あたしが、あやまってあげる」
「…」
「だいじょうぶだよ、パパやさしいから」
「……」
「ママ、なかなおりしなよ」
「仲直りは、しているから、大丈夫。ありがとうね、ありがとうね」
「なかなおりしてるの?」
「しているのですよ、ご心配いただいて」
「なかなおりしてるなら、いっしょのうちにして」
「いや、これが、これは、ごめんね、それは出来ないのですよ」
「いやだいやだいやだいやだ!」
娘は得意のスイッチを入れた。
突然の怒りのスイッチ。さすがわたしの娘。と感心している場合ではない。
「……」
「いやだいやだいやだいやだ!」
おんぶされている娘は、のけぞるようにカラダを曲げて怒った。
「大好きだよ」それしか言えなかった。
「そんなこと聞いてない!」
ランドを出て最後の売店の前を通りかかり、わたしは聞いた。
「マイクのメロンパン、買う?」
「買う!」
娘は怒りながら答えた。
娘の好きなメロンパンを2つ買っていると急に背中が重くなった。眠くなったのだろう。
「疲れたでしょう?」
「疲れてない!」
最後のチカラを振り絞って娘は怒っていた。わたしは、今夜も、こう言った。
「もう、寝なさい」
ランドの音楽が、どんどん遠くなって、娘は全身をわたしに預けて、それは、ずっしりと、重かった。
すっかり眠ってしまった娘にわたしは言った。今日も明日も明後日も。ママもパパも。
「大好きだよ」
1973年愛知県生まれ。大学卒業後、フリーアナウンサーを経てタレントの道へ。「どこ見てんのよ!」のネタでバラエティ番組でブレイク。2007年に結婚、2010年に出産。2012年に離婚。現在はバラエティ番組やドラマ、舞台などで幅広く活躍中。
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