声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
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パーソナルジムに通い始めてから、脂質制限をしている。
脂質制限といっても過酷なダイエットではなく、朝昼にしっかり健康的なご飯を食べて、夜はプロテインに置き換えることでしっかりと栄養素が摂れる。
このスタイルに変わってから、体調がすごく良くなり、体に必要な栄養は食事からしか得られないと日々実感している。
今回紹介するのは、古内一絵さんの『マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ』という作品だ。本作はドラァグクイーンのシャールが営む、「マカン・マラン」という不定期に商店街の路地裏でひっそりと開店している夜食カフェに、それぞれ違う悩みを持つ客が訪れ、シャールの作る料理を食べることで、心も体も健康になる、という連作短編集だ。
学生もそうだが、社会人は特に体が疲れていたり、時間がない時に削りがちなのが食事の時間だったりする。おにぎりや栄養補填ゼリーで時短をしたり、夜遅くに外食をして済ませてしまったりする場合もあると思う。でも食事は、心がホッとするために必要な時間だ。私は職業柄、現場でお弁当を食べたり、稽古が始まれば外食が続く日が増える。そうなると、不思議とご飯を食べることが特別な時間ではなく、とりあえず空いた時間に詰め込む、いわゆるスキマ時間での食事になっていく。
先日、個人的に受け入れることが難しい状況が連続して気が滅入ってしまい、もう何をしたらいいのか分からずに帰宅をしたことがあった。
そんな私に、特に言葉をかけることなく、ただ美味しくて栄養満点の温かいご飯を、母が用意してくれていた。私の性格上、励まされると泣いてしまうのもあり、母の優しさには大人になった今でも助けてもらってばかりだ。
そして、食べ終わる頃には「もう少し頑張ればなんとかなるかも」と気持ちを切り替えられる状態に変わっていることに気づいた時、「体に必要な栄養素を摂り入れるのは勿論、食事で得られる栄養は心の元気にも直結するんだな」と身をもって実感した。
本作にも、ジャンクフードとコンビニのおにぎりのみを食べる中学生が登場する。
そしてシャールが作る、優しい味のする料理を口にすることで心も絆され、食事の大切さを学んでいた。
なかなか手料理を食べられる環境ではない人や、ゆっくり食事をすることが難しい人も、中にはいると思う。
だが本作は、温かな食事とともに胸にスッと届く言葉が詰まっていて読むだけでなんだか満腹になれる要素が散りばめられている。
たとえば作中の「苦しかったり、つらかったりするのは、あなたがちゃんと自分の心と頭で考えて、前へ進もうとしている証拠よ」という言葉。苦しい、つらい、という感情を否定せずに、その気持ちごと受け止めて前を向かせてくれる言葉が、読んでいて心地よかった。
食事を大切にしたい、そう思える『マカン・マラン』に、このタイミングで出会えて本当によかった。是非寝る前など自分が落ち着けるタイミングで、本作を読んでみてほしい。
https://ddnavi.com/serial/sato_hinata/
佐藤日向(さとう・ひなた)
12月23日、新潟県生まれ。2010年12月~2014年3月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして活動。卒業後、声優としての活動をスタート。主な代表作に『ラブライブ!サンシャイン!!』(鹿角理亞役)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』(暁山瑞希役)。ニコニコチャンネル「佐藤さん家の日向ちゃん」毎月1回生配信中。