コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回取り上げるのは、自閉スペクトラム症の娘2人を育てている水谷アスさんのコラム漫画『子どもがマンガで相手の気持ちを考える事が出来た話』だ。同作に登場する“友達とケンカした娘”を水谷さん作の漫画で仲直りに導くという内容になっており、感銘を受けた読者が相次いでいる。この漫画を投稿したポストには、約3万件を超えるいいねが寄せられた。
“コアラとカンガルーの漫画”は仲直りに導く素敵な教材!?
ある朝、「仲良しのMちゃんに嫌いって言われた…」「もう学校行きたくない…」と言って登校拒否をする娘。母である水谷さんは「気付かないうちに嫌な気持ちにさせることを言ったかもよ…」と声をかけるも、娘は「そんな事ないっ!!」と怒りをあらわに。埒が明かないと悟った水谷さんは「漫画で伝えよう」と決意し、即席で“コアラとカンガルーの漫画”を制作。程なくして描き上げた水谷さんは、娘に「ちょっとコレ読んでみてくれる?」と漫画を渡した。
メインとなる登場キャラは友達同士のカンガルーとコアラ。カンガルーがコアラに対して良かれと思っておこなったことが、実はコアラを不快にさせていたためケンカに発展してしまう…。しかしそれぞれが自分の非を認め、ラストは無事に仲直りして幕を閉じた。
漫画を読み終えた娘はコアラとカンガルーの心境を理解し、Mちゃんと仲直りすることを決意するのだった――。同作に登場する“仲直りに導く漫画”は大好評で、読者から「相手の気持ちを知るための立派な教材」「うちの子どもにもぜひ読ませてあげたい!!」といった絶賛の声が後を絶たない。
人間ではなく“動物”にしたのが大きなポイント!?
――『子どもがマンガで相手の気持ちを考える事が出来た話』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
創作のきっかけは、マンガの中にあるように現実世界で起きた子ども同士のトラブルです。「喧嘩になったときに“相手だけ悪い”と決めつけてしまっていてはいけないよ、自分ももしかしたら何かしてしまったかもしれないよ」とお話はしたのですが、本人になかなか伝わらず…。物語にすればもう少し柔らかく本人の中に入ってくれるのでは、と思いました。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
あえてキャラクターを動物にしたことと、双方の思いを描いたことです。人間でなく動物にしたのは、客観性を持って自分と別の話だと思ってもらうためです。どちらかのキャラクターに自分を投影出来てしまうような人間で描くと、もしかすると自分がやったことを責めてしまうかもしれないと思いました。
動物にすることで「この喧嘩はコアラくんとカンガルーくん、どっちかだけが悪いかな?」と聞きやすくなりましたし、本人も受け止めやすかったように思います。また、片方だけの主張を伝えるのではなく、双方の心の中を伝えることでどちらの立場であっても相手のことを考えられるようにしました。学校に持っていって相手のお友達にも読んでもらったそうで、お互い「ごめんね」が出来たらしいので良かったなと思います。
――個人的にコアラとカンガルーの描写ややり取りが心に刺さったのですが、難しいテーマ(言葉だけでは伝わりにくいこと)を漫画にする際にどのようなことを心がけていますか?
言葉で伝わらない「感情」をいかに可視化するかということはいつも意識しています。今回は双方の不快感が怒りから哀しみに変わって、寂しさから相手の大切さに気付くところが伝わるといいなと思いました。人間関係のトラブルというのは大抵怒りから出てくると思うのですが、その感情の根っこを見えるようにすることで、少しでも気持ちが伝わるのではないかと思っています。
――同作を投稿してからどのような反響が寄せられましたか? また特に気になった声などがあれば教えてください。
子どもに向けて描いた作品をなんとなくSNSにも載せてみた… という感覚だったのですが、思った以上に大人に響いたことにビックリしています。夫婦間のあり方を考え直すきっかけになったというお話もあり、良かったなぁと。現場で子どもに使いたいと言って頂けた声があったことは嬉しかったですね。このマンガでひとつでも対人トラブルが減ってくれたらいいなと思っています。
――今後の展望や目標をお教えください。
読むことで自分の生き方を考えたくなるような作品づくりをしていきたいです。今現在、ツイッター上で連載を開始しているのですが「人を好きになること」「自分らしくあること」について考えるきっかけになると嬉しいなと思っています。今後は商業連載にこだわることなく、作品そのものから私個人を応援してもらえるような作家活動をしていきたいです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
作品への反応を頂けることがとても励みになります。応援コメントは作品づくりの糧になりますので、どんな拙い言葉でも嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
誰かに言葉を伝えるのは大変なもの。心がささくれてしまったときは、同作を見直してみてはいかがだろうか。