2022年2月1日に、歌手活動5周年を迎えた声優・東山奈央。9月28日にはおよそ3年半ぶりとなる待望の3rdフルアルバム『Welcome to MY WONDERLAND』を発表し、現在はアルバムを引っ提げてツアー中。
11月3日のパシフィコ横浜 国立大ホール公演でファイナルを迎える。なお、「アルバムのリリースは3年半ぶり」と書いたが、その間の活動は極めて濃密なものだった。
声優デビュー10周年を記念したキャラソンアルバムのリリースやアニバーサリーライブの開催、歌手活動5周年イヤーをきっかけとするさまざまな取り組みを立て続けに届けてきた東山奈央の音楽はどんどん進化しており、彼女自身の表現への欲求とクオリティへのこだわりは、さらに高まっている。
楽曲も、ライブも、全力で身を委ねることで、最高に楽しいエンターテインメントを届けてくれるのだ。3rdアルバムとライブツアーについて、ガッチリ話を聞かせてもらった。
音楽やライブがあったほうが、人生がカラフルになって楽しい
――まずは、ツアー初日の愛知公演のステージを振り返っていきたいです。
東山:3年ぶりのツアーということで、気合いが入れば入るほどに緊張も増していったんですが、始まってみたら「そうそう、うちのライブってこんな感じだったよね」って、一瞬で甦ってくるような温かさがありました。
声出しはできないですけど、代わりにクラップや手の振り付けでみんなと盛り上がっていけたらいいなって思いながら、リハーサルを重ねていって、みなさんも一緒に盛り上がってくださったおかげで、声出しがあるライブと変わらないくらいの一体感が感じられるライブでした。
今回は遊園地・テーマパークというコンセプトでやらせていただいているので、みなさんの感想を見ていると、遊園地のアトラクションを乗り回して遊んだようなライブという感じで、すごく満喫してくれた感じがあったみたいで本当にうれしかったです。
――なるほど。
東山:ツアーのセットリストを組んでいるときから、「これはすごく楽しそうだけど大変そうだな」とは思っていて。すごく大きなことにチャレンジさせていただいていると思います。
ちょっと話は変わりますが、フィギュアスケーターさんが、ひとつのプログラムを終えると息を切らしているじゃないですか。わたし、それを見て「同じ曲・同じ振り付けで毎日毎日練習しているはずなのに、それでも息が切れちゃうんだなあ」って思ってたんです。
でもそれはたぶん、「自分ができる限界」にチャレンジされているからこそ、何回やっても息切れを起こすんだと思ったんです。
今回のツアーはそれに感覚が近くて、けっこう大変です。応援してくださっている方は「奈央ちゃんはいつも大変なことにあえてチャレンジしているよね」って思っているかもしれませんが、ほんとは別にそこまで考えていないんです。
ただ、楽しそうだなって思って飛び込んでいるだけで、結果的に大変になっちゃったっていうだけなんです(笑)。今回は、特に限界に挑戦している感覚がありますね。やらせていただくからには、より成長した新しい自分に、わたし自身も出会ってみたいという気持ちもあります。
――いろんなチャレンジができるのも、最新の3rdアルバム『Welcome to MY WONDERLAND』の内容が充実しているから、だと思います。
東山:ありがとうございます。テーマパークをコンセプトに作らせていただいて、1曲1曲がアトラクションに紐付いているということで、ジェットコースターだったら疾走感を感じる応援ソングになったり、ミラーハウスだったら浮遊感のある幻想的な5拍子の楽曲になったり。
1枚のアルバムですけど、情報量としてはそれ以上のものになっていると思います。普段遊園地に行っても、乗れるアトラクションって限られていると思うんですけど、隅から隅まで遊園地を味わうと、いろんな出来事が起こるでしょうし、自分の中がどんどん充実していくと思うんです。そういうアルバムになった気がしています。
――遊園地・テーマパークというコンセプトを設定した背景を聞きたいです。たとえば1stアルバムの『Rainbow』には感謝の気持ちを伝える、2ndアルバムの『群青インフィニティ』では応援歌、といったコンセプトが表題曲にあった気がしていて。今回、東山さん自身が「遊園地・テーマパーク」というコンセプトが今の自分にフィットする、と感じた理由を教えてください。
東山:おっしゃるとおりで、コンセプトとしては『Rainbow』のときは「虹」、『群青インフィニティ』のときは「空」で、そこに込められた意味として「感謝」とか「応援」があったと思います。
今回は最初、「パレード」というのがキーワードとしてあって、「次にツアーをやるときは、パレードを巡るように、それぞれの公演で賑やかに楽しいことをやっていって、全部がつながっていったらいいな」みたいなイメージがありました。
そのパレードすらも内包した、「遊園地」という大きなテーマだと、もっと楽しいものが詰め込めそうだし、ライブの演出も楽しくなりそう、ということで、遊園地・テーマパークがコンセプトになりました。
それをなぜやりたいと思ったかというと、シンプルに楽しそうだからです(笑)。結果的に、それぞれの曲が持つメッセージも生まれていったとは思うんですけど、出発点はシンプルな気持ちでした。
――『Rainbow』も『群青インフィニティ』も、聴く人との1対1のコミュニケーションが濃いアルバムだったなと感じます。今回は、自分の音楽で楽しませられる人がいっぱいいる前提がある、楽しんでくれる人がたくさんいる、という確信が持てたから、テーマパークというコンセプトにたどり着いたのかな?とも想像していまして。
東山:なるほど。個人的には、そこまでは考えていなくて、テーマパークという誰もが聞いてワクワクするコンセプトで、もっと「みんな、おいでよ」っていうことがしたかった気がします。
もちろん、1対1のコミュニケーションも、これまでの楽曲の中ではみんなとやり取りできたし、今回のアルバムにも、みなさん自身に重ね合わせてグッと来ちゃう、みたいな楽曲もあると思うんですけど、アルバムを作っていく上では、「目指せ友達100人!」みたいな感じでした(笑)。
今まで東山の楽曲に触れてこなかった人も、このテーマパークを入り口にして「遊びにおいでよ」みたいな気持ちは強かったですし、最近の状況があって、その思いは強くなりました。
ライブって、以前に比べて、生活の中で二の次になりがちなのかな、と思うんです。もしかしたら、自分は音楽とかライブとかアニメがなくても生きていけるものなのかも?みたいな。それってちょっと寂しいなって思っちゃって。
もちろん、衣食住が守られてるのは幸せなことですけど、「あと1ヶ月でライブがあるから仕事頑張ろう」「このアルバムが出るからお金を貯めるために頑張ろう」って日々が前向きになることもあるかもしれないって思うんです。
人生のハイライトに、音楽やライブがいてくれたらいいなって。そういう楽しみを再発見してもらうためにも、テーマパークというコンセプトがたくさんの方にグッときてもらえてたらいいなって思います。