「笑顔になってもらいたい」が、どこかいつも自分の中にある
――2017年に音楽活動をスタートした当初から、東山さんは「みんなを笑顔にできる歌」という言葉をたびたび口にしていると思いますが、まさにテーマパークはそれを最もわかりやすく形にできるコンセプトでもあるんでしょうね。
東山:そうですね。「笑顔になってもらいたい」が、どこかいつも自分の中にあって、そこから枝葉を広げながらいろいろやらせていただいたわけですけど、テーマパークはその最たるもののような気がします。
だからこそ、これをコンセプトにしてしまったら次からどうするんだろう?と思われるかもしれませんね(笑)。今後に向けても、いろいろやってみたいことは思い浮かんではいるんですが、今回のテーマパークをいい意味で通過点にしていけるように、今は最大限取り組んでいきたいです。
――「テーマパーク」のコンセプトを表現した最後のインスト曲を聴き終えたときに、いちリスナーとして感じたのは、「終わっちゃって寂しい」という気持ちでした。楽しかったこの場所から、1回出ていくんだなっていう感覚で、それだけアルバムの世界に没頭できたわけですが、完成したアルバムを全編聴いたとき、どんな感情が湧いてきましたか。
東山:わたしの好みとしては、「笑顔で終わりたい」という気持ちがあるので、アルバムもライブも盛り上がったまま終わるのがいいなあ、と思うんですが、今回の閉園のBGMのようなインストには、ちょっとだけ寂しさもありますよね。
それは決してみなさんを寂しくさせたいわけではなくて、わ〜って盛り上がって遊んだあとに、「一生ネバーランドにいる」みたいなことではなく、優しく日常生活に送り返してあげるようなイメージがありました。楽しいまま終わるのも最高だけど、夢見心地のまま終わっちゃうよりは、そっと日常生活に送り返して、包み込むように終わらせられるのがいいのかなって思いました。
それは冒頭のインストにも言えることで、今回のテーマパークである「レインボーワンダーランド」は、雨が降って虹が架かって、その虹が架かっている間だけ現れる幻のテーマパーク、という設定なんですね。
そのストーリーを音楽で表現してほしいですってお願いをしていたんですけど、雨を降らせる音ひとつとっても、暗くて憂鬱な感じではなく、優しくきれいで、雨粒がキラキラしてるような雨を降らしていただきたいです、というお話をしました。そういう意味では、オープニングもエンディングも、みなさんが常に明るい気持ちになってもらえるような、気持ちが上向きになるような音作りをしています。
――なるほど。東山さん自身がいちリスナーとして最後のインストを聴き終えたときは、どんな気持ちになりましたか。
東山:ぶっちゃけた話をすると、「ああ〜、アルバムができて良かったなあ」って思いました(笑)。かなり急ピッチで作っていて、今回は5周年っていうこともあって、しかも自分は30歳の節目でもあったりして、この1年はずっと走り続けてきました。
アルバム制作も、非常に短い時間の中で濃い制作をやらせていただいていたので、すごいテーマパークができ上がったなあ、と思いました。あとはやっぱり、楽しい、多幸感に尽きるかなって思います。
作り手として、寝ても醒めてもアルバムのことを考えて、いろいろなやり取りのラリーを重ねつつ、ギリギリの中で「いや、もうここまでにしようよ」みたいな妥協は一切なく、かなり作り込まれて、すべてに想いが込もっているアルバムになったと感じています。
――今回、参加しているクリエイターさんも多様で音楽的にも、とても面白い作品になっていますが、その中でも2曲目の“ウェルカム・トゥ・レインボーワンダーランド!”は象徴的な楽曲だと思います。
東山:わたしも初めてこの曲を聴いたときに、(作詞・作編曲の)Kijibatoさんが、今回のアルバムにとことん寄り添ってくれて、アルバムの顔になる曲を作ろうとしてくださっていることが伝わってきたので、その愛情にやられた感じはありました。
曲調はすごくコミカルでコロコロしてかわいらしいですけど、しっかりしたメッセージ性もKijibatoさんが込めてくださっていて。《つるって転んで横たわっちゃってもそのまま~滑り出せばいいのさ!》っていう歌詞があるんです。ペンギンが腹ばいになって滑ることをトボガンっていうんですけど、そのことを歌にしてくださっていて。
かわいいペンギンのモチーフになぞらえて、元気になれるようなメッセージを込めてくださっているところに、かなりキュンとしました。
――先ほど設定の話をしてくれましたけど、虹がかかっている間だけ現れるテーマパーク、と考えると、この曲の歌詞はとても深いですね。
東山:そうですね。1stライブの武道館の頃から言い続けてることですけど、やっぱり雨が降らないと虹は架からないので。大変なことがあって、頑張って、だからこそ虹が見られるんだと思うので。ライブも、みんながここまで頑張ってきてよかったな、この会場にみんなでたどり着けてよかったなって思えるような時間になるといいなって思います。