2021年、自身のソロデビュー10周年を、数多くの新曲や日本武道館でのライブとともに駆け抜けたLiSA。およそ2年ぶりに届けられる通算6枚目のアルバム『LANDER』は、劇場版とテレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編の主題歌=“炎”“明け星”“白銀”や、「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」主題歌“往け”など、LiSAが長く関わってきた作品の楽曲群を、本人の言葉を借りるなら「柱」に据えつつ、かつてなく自身の気持ちとじっくり対峙しながら完成させた新曲たちが同居する、14曲入りの力作となっている。特にこの2,3年の活躍が記憶に新しいリスナーは多いと思うが、シンガー・LiSAは10年間、文字通り一度も立ち止まることなく、今いる場所まで懸命に走ってきた。その意味で、ひとつひとつの感情と向き合う時間を経ながら制作された6枚目のアルバム『LANDER』は、LiSAの音楽をより強く、より熱く、より豊かなものにしている。2本立てでお届けする約1万字におよぶロング・インタビュー、第1弾ではアルバム制作の背景を語ってもらった。
自分の悲しみや、嬉しさや喜びとか、確実に自分の中にあった気持ちと向き合った
――6枚目のフルアルバム『LANDER』、どんな1枚になったと感じていますか。
LiSA:今まで以上に、自分自身と向き合いながら作ったアルバムになりました。自分自身の想いや気持ちから派生した、作っていった音や言葉が多く乗っていることもあって、ひとつひとつに時間をかけながら大事に作ったアルバムになったと思います。
――制作に着手したのはどのあたりのタイミングだったんですか。
LiSA:アルバムとして作り始めたのは、2021年に入ってからですね。「LiVE is Smile Always~Eve&Birth~」のライブで歌うにあたって、最初にこのアルバムの楽曲として作り始めたのが“NEW ME”でした。
――では、アニメ作品のタイアップ楽曲以外についても、作りためていたものではなくて、ライブ感のある制作をしていった感じなんですかね。この2022年のドキュメントのような感じ、というか。
LiSA:そうですね。2021年は怒濤だったので(笑)。コロナ禍の中ではありましたが、年が明けてからアコースティックライブをして、『LADYBUG』のツアーをして。で、今年に入ってからもすぐに「Eve & Birth」のツアーもあって。制作面でも、ミニアルバムの『LADYBUG』と、シングルも4枚出しているので、けっこうたくさん楽曲を作った印象があります。そうやって、ライブやツアーを走りながら制作していたんですけど、2022年に入ってからは、アルバムに収録する残りの楽曲を大事に作ってきました。
――“炎”や“明け星”“白銀”、それと“往け”も含めて、タイアップ楽曲として広く届いた曲がある中で、どんなアルバムにしていくか、の選択肢はいろいろ考えられたと思いますが、そこで「自分の想い」にフォーカスするという方針は、明確な意志としてあったんですか。
LiSA:はい、ありました。“炎”以降のシングルは、1曲1曲すごく思い入れが強い楽曲でしたし、その1曲1曲が見せてくれる景色、振り幅がたくさんあったから、「柱」は整っている感覚でした。だから、あとは自分の想いをどうやって注いでいこうかな、と思ったし、それを作品にしてみたいと思いました。
――自分の気持ちを作品に乗せること自体は、今までの楽曲やアルバムでもそういうプロセスが何度もあったと思うけど、これまでとの違いを言語化してもらうとすると、どういうことになりますか。
LiSA:わたし自身も最近気がついたことなんですけど、すごく感情的な気持ちを持っているはずなのに、そういう気持ちを感じた場所・タイミングで表現することが苦手なんですね。もともと人見知りなこともあって、自分が傷ついているのか、悲しいのか、怒っているのか、あまりその瞬間にわからなくて。だから、衝撃としてビックリすることはあっても、実際に悲しかったのか、傷ついていたのか、嬉しかったのか、あとにならないとわからないことがあるなあって――大人になって、それがやっとわかったんです(笑)。
そういう、ひとつひとつの感情と自分の中できちんと向き合う時間が、今年1年はたくさんありました。今回のアルバムと向き合う時間もあったし、その先に作っていった楽曲たちも、自分の悲しみや、嬉しさや喜びとか、確実に自分の中にあった気持ちと向き合うことを、時間をかけてやらせてもらいながら、作っていったアルバムになっています。
――以前にも話していたことがあるように、「自分も気持ちを振り返らずにきたけど、気づいたら傷だらけになっていた」みたいな部分もあったりするじゃないですか。その点で、自分の中にある気持ちと向き合うことって、必ずしも楽しいことばかりではないと思うんですけども。
LiSA:なんだろう、今までは、どちらかというと何かを経験した後でだいぶ走った先で、「傷、癒えたかも?」「もうかさぶた取れたかも?」みたいなところで、気持ちを振り返っていた気がするんですよね。で、ここ最近の時間は、まだ傷が治り切ってない状態で、今の自分がその傷に対して何を感じているのか、という、ある意味で新鮮な気持ちと向き合った感じです。過去を振り返っているというよりは、今の自分の気持ちと向き合いながら作っていますね。
●LiSA(りさ)
2021年4月に、ソロデビュー10周年を迎えた。2018年5月にリリースした自身初のベストアルバム『LiSA BEST -Day-』『LiSA BEST -Way-』は、オリコンウィークリー1位・2位を独占するという快挙を達成。2020年には、5枚目のアルバム『LEO-NiNE』とシングル『炎』を同時リリースし、「W1位」を獲得。圧倒的な熱量を持つパフォーマンスと歌唱力、ポジティブなメッセージを軸としたライブで、アニソンシーンにとどまらず活躍するアーティストとしてその存在感を示している。
ソニー・ミュージックレーベルズ
発売日: 2022/11/16