初の敵対役に「ぶっ倒してやる!」とワクワク
──鈴木さん演じる幻士郎と、北村さん演じる空真は敵対する役どころです。共演の多いおふたりですが、今回幻士郎と空真として対峙してみていかがでしたか?
北村 空真としては、幻士郎が自分の目的を遂げるために邪魔な存在であったのでもちろんですが、北村としても、拡樹くんを“潰しに行く”ことってなかなかなかったので、単純に熱いなと思いましたね。拡樹くんは僕にとって昔から頼れる存在で、一緒にいると安心する先輩。だからこそ今回は「ぶっ倒してやる!」という気持ちで挑みましたし、ワクワクしました。
鈴木 見知った仲で初の対決なので、すごく楽しめました。空真と幻士郎で言うと、僕は死神遣いで、空真は死人を操る妖術師。同じ“遣う”でも、どう遣うかで全然違うんですよね。その違いが戦いにも表れていると思います。
北村 空真は、死体を兵隊としてしか見ていない。そんな空真と、死神と愛情を通わせている幻士郎という差は面白いですよね。
どんな役でも、演じ手がキャラクターを肯定してあげないと始まらない
──遣う相手を兵隊としてしか見ていないという空真の役作りは、どのように行なっていったのでしょうか?
北村 空真がどうして死人を遣うのかの理由を知ると、確かにやり方は間違えているかもしれないけど、感情移入できるところもあって。悪人といえども、そこには理由がある。そこを頼りに、空真の心情を考えていきました。
鈴木 演じ手って、そのキャラクターをどうやって肯定してあげるかだと思うんです。どんな悪人だろうと理由はある。一般論としては理解できないことだとしても、その理由を頼りに演じ手が肯定してあげない限りは始まらない。
北村 自分の中ではそのキャラクターは正義でなければならないんですよね。
鈴木 そうそう。
──鈴木さんは幻士郎を演じるうえで、大切にしていることや意識していることはありますか?
鈴木 あんまり難しく考えすぎないほうがいいんでしょうけど、それなりにいろいろ考えてはいます。細かいところをあげるとキリがないのですが、漠然と描いているイメージとしては、「男はつらいよ」シリーズの寅さんとか、「探偵はBARにいる」の大泉洋さん(〈俺〉)のような、出てくるだけでホッとするアイコンのような存在が、「死神遣いの事件帖」シリーズでは幻士郎と十蘭なのかなと思っていて。その空気感は、舞台と映画を、これまで2作やらせてもらえたからこそ作り上げられるようになってきたのかなと思います。
──では、映画の公開を楽しみにしている読者の方に、メッセージをお願いします。
鈴木 時世に絡んだような話題もありますし、テーマだけ並べるととてもメッセージ性の強い作品ではあるのですが、この「しにつか」シリーズの作風がすべてを柔らかくしているので、ぜひ柔らかい状態でお受け取りください。いろいろなメッセージが込められていますが、僕としてはとにかく見て「楽しい時間だった」と笑顔になってもらえるのが一番です。
北村 拡樹くんが言った通り、肩肘張らず、純粋に映画というものを楽しんでもらえたらうれしいです。「楽しかったな〜」とか「明日からも明るい気持ちで頑張ろう」と思ってもらえたらうれしい。生きている中で疲れることやしんどいことはたくさんありますが、この作品が皆さんの背中を押すものの一つになれたらいいなと思っています。
東宝
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