生田絵梨花が12月16日(金)公開の映画「Dr.コトー診療所」に出演する。同作品は、累計発行部数1200万部を超える山田貴敏の同名漫画をドラマ化したもので、離島という過酷な医療環境の中で、吉岡秀隆演じる島唯一の医師・五島健助(コトー)が医療を通して島民と心を通わせていく医療ヒューマンドラマシリーズの劇場版。16年ぶりに再集結したドラマシリーズのキャストに、生田やKing & Prince・高橋海人(※高ははしご高)といった新キャストを加え、2006年に放送された連続ドラマの16年後を描く。
長い年月をかけて島民たちと信頼関係を築いてきたコトーは、今や島にとってかけがえのない存在になり、数年前に結婚した看護師・彩佳(柴咲コウ)との間に子供が生まれようとしていた。そんなある日、財政難にあえぐ近隣諸島との医療統合の話が持ち上がり、コトーに「島を出て拠点病院で働かないか」という提案が寄せられる。島の未来になるとは理解しながらも、なかなか返事ができないコトー。そんな中、巨大な台風が島に近づき、想像を超える被害が発生。次々と運び込まれる急患に、診療所は野戦病院と化してしまう。生田は彩佳に憧れて数年前から診療所で働いている島出身の看護師・那美を演じる。
今回、生田にインタビューを行い、人気ドラマシリーズの劇場版に新キャストとして参加することになった時の感想や作品に懸ける思い、役作りについてや撮影秘話、共演者とのエピソードなどを語ってもらった。
――出演が決まった時の感想は?
「『私でいいんですか...?』ってすごく思いました。ドラマシリーズは小学生くらいでしたが観ていましたし、看護師役ということでシリーズで看護師をやられているのは柴咲さんと蒼井優さんなので、『そこに私が続けますか!?』って(笑)。とても愛されている作品ですし、それが16年ぶりに制作されるということで、新人としてそこに入ること自体にすごいプレッシャーと緊張がありました」
――島出身の看護師という役柄については?
「(ドラマシリーズから続くキャストの)皆さんの中に入れるか不安だったのですが、皆さんが気さくに話し掛けてくださって、すぐに馴染むことができました。特に泉谷(しげる)さんが役としても泉谷さんとしてもムードメーカーになってくださって、独りでいたら『こっち来いよぉ!』って積極的に、そして豪快に輪に入れてくださいました」
――演じる上で意識したことは?
「那美はコトー先生と彩佳さんにすごく頼られている存在なのですが、それってすごいことで。あの2人に頼られているなんて!だから、すごく仕事ができるだろうし、機転も利くだろうし...。そういったところが喋り方とか動きの機敏さに表れていたら良いなということを、監督とも話し合いながら演じていました」
――島でのロケはいかがでしたか?
「地元の方も出演されていて、島民の方々の空気感に引っ張っていってもらっているように感じる瞬間もあって、島民の皆さんと作品の強い繋がりを感じました。ただ、すごく暑い中での撮影という過酷な環境に加えて、船の上だったり土砂降りのシーンだったりとシチュエーションも過酷で、大変な撮影でした。自然が相手なので"ひたすら待つ"という忍耐力の勝負でしたね。待ち時間はみんな寝ていて、私は『先輩方の前だから、しゃんとしてなきゃ』と思っていたんですけど、先輩方が『寝れる時に寝ときな』ってアドバイスしてくださって、初めて先輩方の前でベンチに倒れ掛かって寝てました(笑)」
――吉岡さんの印象は?
「吉岡さんは、お芝居に入られると目の色が変わるんです。見ていて『あっ。今、コトー先生だ』って分かるので、それには鳥肌が立つ感覚でした。初めて手術のシーンを一緒にやらせていただいた時に、(コトーの)『手術を始めます』という一言がなかなか言えない瞬間があったんです。あとで吉岡さんが『ふと自分の姿を鏡で見た時に、(手術が)できるのだろうかって思ってしまって、不安と重圧が一気にのしかかってきてしまった』って仰っていて...。私は新人だし何をすることもできないけど、吉岡さんのそういう姿を見て、『どれだけこの作品の渦巻くエネルギーが大きいのか』『皆さんがどれだけのものを背負いながらやってらっしゃるのか』ということを感じさせられて、『那美として少しでもサポートできることがあれば動きたい!』と強く思いました」
――同じ新キャストとして参加された高橋さんの印象は?
「同じ新キャストとして緊張を共有できる相手がいてとても心強かったです。ご本人としては緊張して悩まれていたみたいなんですけど、いつも先輩方から可愛がられていて高橋さんがいらっしゃるといつも現場が和みました。(高橋が演じる)判斗先生はちょっと人の心に土足で入るようなキャラクターですけど、実際の高橋さんはすごく丁寧な方で。ギャップに悩みながら演じる姿に役者魂を感じていました」
――物語では、コトー先生をはじめとする島民たちがピンチに陥りますが、ご自身の"ピンチエピソード"を教えてください。
「小学校の低学年くらいまでお留守番がすっごく苦手で、一人ぼっちがとにかく嫌だったんです。ある時、お母さんが私の寝ている間に買い物に出掛けて、私が1人の時に起きちゃったんです。もう怖くて怖くて家から出て、同じマンション内のお宅を全然知らないのに片っ端からノックしていって、何軒目かで男の子が2人くらいいるお宅のお母さんが開けてくださって『どうしたの?』って聞いてくれて。『お母さんがいなくなったの』って言ったら家に入れてくれて、ケーキまでいただいちゃって...(笑)。それで、のんきにハッピーに過ごしていたら、後から事情を聞きつけたお母さんが迎えに来て、『何やってんの!逆に危ないでしょ!!』って言われました。本当に(入れてくれたお宅が)良い人で良かったです」
――公開が12月ということで年の瀬ですが、2022年はご自身にとってどんな年でしたか?
「いい意味で『1年じゃなかった』と感じるくらい濃い日々を過ごさせていただきました。一応10年っていうアイドルの経験値はありますけど、1人になると全部が初挑戦のような感覚になるんですよ。1人の役者として現場で何ができるかとか、スタッフさんやキャストの皆さんとどうコミュニケーションが取れるかとか、全部が新鮮で全部が学びで、たくさんの気付きがあった1年でした」
――少しは時間的な余裕も持てたのでしょうか?
「グループにいた時はずっと忙しかったんですけど、今は忙しい時とゆったりできる時の波があるという感じですね。今の時期はすごくマイペースに過ごしていて、この時期に友達とかに会うと『なんか丸くなったね。穏やかそうだね』って言われます(笑)。みんなけっこう私の活動を見てくれていて『普通の人間のふりしてるね』って!私のことを"モンスター"扱いしてくるんですよ(笑)」
――2023年はどんな年にしたいですか?
「しばらく映像のお仕事を続けてやらせてもらった中で、来年は舞台を2本やらせてもらうので、しっかりと生の緊張感を浴びながら努めたいなと思います。映像で学んだことが舞台にどう作用していくのかというのが、まだ未知な部分なのですごく楽しみですね。あと、せっかくこうやって新しい環境で学ばせてもらっているから『途切れずに重ねていきたいな』という思いがあるので、チャンスがあればお芝居だけでなく歌手活動もかたちにできたらなって思っています」
――最後にファンの皆さん、劇場にいらっしゃる方々にメッセージをお願いします。
「島やコトー先生に"限界"というものが訪れた時にどうしていくのかというのが一つのテーマになっていて、本当にいろんな事件が起こっていくのですが、それでも生きることを諦めずに人の命を守り続けるコトー先生と先生を取り巻く人たちのそれぞれの思いや生き様が、観てくださる皆さんの心に少しでも響くと良いなと思っています」
文=原田健 撮影=中川容邦
ヘアメイク=富永智子 スタイリスト=有本祐輔