武四郎の成長や思いを繊細に表現する吉沢亮
光が目を覚ました一方で、武四郎は医師として、つらい仕事が待っていた。さまざまな検査をしても圭吾の感染症の原因が不明で、その先の治療に進むことができず、圭吾の両親に終末期の過ごし方も含めて話した。
両親と努めて冷静に面談した武四郎だったが、圭吾とも向き合うときがきた。生まれ育った街、家で最期を過ごさせてあげたいという両親の願いで転院することが決まると、圭吾は「俺、死ぬんでしょ? だから函館に帰るんでしょ? 本当のこと、教えて」と武四郎に問い掛けた。
武四郎は真っ直ぐに圭吾の目を見つめ、その後の治療は函館の病院でも大丈夫だと説明した。圭吾はその言葉を信じ、涙を浮かべた。だが、武四郎の説明は“優しいうそ”で、植野は「頼もしくなったね」と称えた。
確実に医師として成長する武四郎を、吉沢が繊細に表現する。初めのころは動揺で目が泳ぐ場面があったが、本話ではしっかりと患者を見つめた。とはいえ、陰では肩をがっくりと落とした後ろ姿でつらさを表し、優しいうそをつかざるをえなかったが、それができたことへの安堵と切なさの入り混じった涙をたたえた目とほほ笑みは、見るものの胸に迫るものがあった。この第8話までで武四郎が得た強さや覚悟、その奥底では変わらない悲しみも自然にあふれ出ている。
そうしたなかで、武四郎は家族の命とも向き合う。圭吾についての話のなかであった「ちゃんと諦めがつけば、みとる覚悟ができるんだと思う」という植野の言葉。武四郎は、がんを患う母・南に「俺が諦められる…諦められるだけの時間をください。俺が母ちゃんと離れる覚悟ができるだけの時間を。たくさんじゃなくていいから、ちょっとだけ」と頭を下げた。
次回、12月5日(月)放送の第9話では、武四郎が母を連れ、検査のために東京に向かう。
◆文=ザテレビジョンドラマ部