「誰もが持っている欲望を激しく追いかけ」
ムシクについてチェ・ミンシクは「とても平凡な人だ。だが、誰もが持っている欲望を激しく追いかけ、知らないうちにカジノという世界に足を踏み入れる。そこで多くの人に会って右往左往する。ムシクを演じながら、“誰に会って、どこに行って、何に接するかによって自分自身も知らないうちに人生がドラマチックに流れていくんだな”と感じました」と説明した。
チェ・ミンシクが「カジノ」に出演するきっかけは、今作のカン・ユンソン監督と別の映画を撮る予定がなくなり、その間に監督から見せられた脚本に興味を持ったから。彼にとってドラマ出演は1997年の「愛と別れ」以来、約25年ぶりとなる。「ドラマ出演が25年ぶりだということに、今回撮影しながら気づきました。でも、映画でもドラマでも、私が演技する、ということは変わらないです」と、今回の出演が特別な事ではないと語った。また、「映画は密度は高いが2時間という大きな制約があるので、残念な気持ちがいつもありました。余裕を持って、話したい話や表現を全部できるシリーズ物が恋しかった」と話した。
彼は、今回の撮影で三重苦を経験したそう。「1つ目はコロナ感染。3月に感染して、治まるや否やロケ先のフィリピンに出発したんですが、後遺症で苦しかったです。そして、寒い韓国からフィリピンへ行き、夏の天気と暑さで苦労しました。そこに加えて、膨大なストーリー、切迫感、そのようなものが調和して、熱い経験をしました」と打ち明けた。
「演技からお金の匂いがしてはいけない」
チェ・ミンシクは韓国映画界を代表する最高レベルの俳優だ。数々の映画賞を受賞し、主演を務めた日本水軍と韓国水軍の戦いを描いた2014年の「バトル・オーシャン 海上決戦」は、約1761万人を動員して韓国映画歴代動員数1位を記録し、いまだに破られていない。すごい記録を打ち立てたにもかかわらず、本人は「本当に申し訳ない話だが、実は全て忘れた」と、興行成績を気にしないと語っている。
「一生懸命作ればいいんです。しきりにそろばんを弾かずに、演技に対して振り返り、何が足りなかったのかを考えてアップグレードしなければならないし、観客数に執着してはいけません。ハン・ソッキュが言ってたんですが“演技からお金の匂いがしてはいけない”。私もそう思います」と、作品に集中する姿勢を見せた。
「毎回、撮影をしながら学んでいます。演技は死んでこそ終わる勉強なので、全部したようでも分からないことがもっと見えて、まだ知らなかったことを知っていく。途方もない作業なので、面白くない時も大変な時も多い。それでも人生や人間について知っていく勉強だと思います。時には何だろう?と思う事も多いけど、そういう時はもっと理解しようと努力します」とも語っている。
「観客と信頼が形成されるには、たった1つ、上手な演技で作品にうまく溶け込むこと」と語るチェ・ミンシク。圧倒的な存在感と演技で魅了しながら、チャ・ムシクの人生に私たちを釘付けにしている。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
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