美大在学中から音楽活動をスタートしたシンガーソングライター・小林私が、彼自身の日常やアート・本のことから短編小説など、さまざまな「私事」をつづります。
打ち合わせを除いて、この原稿が書き終われば2022年の仕事納めとなる。といっても、この記事があがるのは2023年の1月7日なので仕事始めでもあるし、その前日に締め切りがあるので、実質的な仕事始めも原稿だ。
2021年6月30日から始まったこの連載もついに二度目の年を跨ぐ。様々な仕事を頂いてきたが、この「私事ですが、」が文句なしで最長の仕事だ。ここまで来たら死ぬまで書けると良い。
2020年から活動を始めて、色々な（とはいえ人並みの）艱難辛苦があったわけだが、昨年（2022年）は特に大変だった。公にしようとすると沢山の人に止められかねないので、ほとぼりが冷めた頃にきちんと説明の機会を設けたいが、何も言わずとも今年の活動の仕方は異常に見えた人が多いと思う。実際に異常だった。
それは、元々何の関わりのないヒプノシスマイク特集や、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』の樋口円香について語る回、展示のゲストやコント番組出演などといった、一般にミュージシャンがやらない仕事を受けていたからではない。むしろその辺の仕事は、小林私である為の正常な振る舞いともいえる。今後もそういった仕事は受け続けていきたい。
”異常”というのを説明してしまうと、これもやはり夜道で刺されかねない。分かりにくく例えるなら、爆弾ゲームで爆弾が自分の番に三回連続爆発したと言おうか。知らぬ間に爆弾ゲームが始まっていて、渡される頃には渡す相手がいなくなっていたといった感じだ。う～ん、実に分かりにくい。
これらに関して、今は爆弾処理班に助けてもらった形になるのだろうか。まあ結果的にはなんとかなったし、幸か不幸か私も「なんだかなあ」と思いつつも怒っちゃいないので、良しとしたい。愚痴がてら話した友人達は激しく怒るか笑うかだったので、いずれちょうど良いエピソードトークになると思う。
ともかく説明不足なのは申し訳ないと思っている。なんだかよく分からない人間を応援し続けられるほど人は我慢強くない。まあ、しかし、いずれ、いずれ......
暗い話ばかりしても仕方ない。単に去年の振り返りをすると、人生で初めて引っ越しをした。23年目にして初の一人暮らしである。これが叶ったのはまとまったお金が入ったからに他ならない。家族仲がよろしくないので一刻も早く家を出たかったのにここまで時間がかかった理由も、それでしかない。どこからその金が入ったのかを話すと、おっと、これは”異常”の説明の一端を見せてしまう。これもいずれ......
初の一人暮らしが上手くいっているのかは自分では分からないが、時折訪ねてくる友人に「三年くらい住んでる？」と言われているので、きっとそれなりに上手くいっているのだろう。ある日チャイムに応じたら「今からガスを止めます」と宣言され、慌ててその場で払ったら三か月も未納だったこともあったし、それ以降も公共料金を勘で支払っているから、本当にそれなりだ。
最悪落ち込んだ場合は、施川ユウキ氏のマンガ『鬱ご飯』を読めばいい。これを読んでおけば大体の気持ちは何とかなる。気持ちだけだ。
ライブでいえば、去年も学園祭にたくさん出た。日本で一番学園祭に出たんじゃないか？ 逆にフェスはもう懲りた。誰かにツイートもされていたが青空と大人数と大舞台が自分はどうにも似合わない。去年のライブ納め、先輩バンドのCRYAMY主催ライブは良かった。友達に誘われたライブと学園祭に、今年はたくさん出ようと思う。音源もいい加減YouTube以外に出せると良い。何故あまり出せなかったり音源が消えたりしていたかというと、これも当然”異常”の話になるので、いずれいずれ。
下半期に新しく始まったのが「小林私の裏話」というラジオのレギュラーと「ゆるふわART塾」というYouTubeチャンネルだ。ラジオは以前より少しだけ親交のあったもののけ（榊原つかさ）さんという今は放送作家をしている男からの誘いで始まった。まだ放送自体は4回だけだが、これからどうなっていくのか楽しみだ。
「ゆるふわART塾」は、私が好きな「ゆる言語学ラジオ」の美術バージョンを作りたくて、なんとなく大学時代の友人を誘ってみたら始まった。塾と銘打っているのは単に語呂が良かったからで、基本的にはゆるくふわっと美術の話をしていくつもりだ。画家、ミュージシャン、学芸員資格持ちのフリーターという謎の座組で、執筆時点ではまだ第一回しかあがっていないがこれも連載やラジオ同様、長く続けていきたい。
と、なんとなく地に足が付き始めてきた。それ以前の暮らしや仕事が浮きっぱなしだったのも事実だが。2023年はもう少し落ち着いて、しかし楽しんで見てもらえるよう努めたい。
振り返る時の為に今ここに異常のランドマークを立てる。
明日は雪が降るらしい。
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
https://ddnavi.com/serial/kobayashi_watashi/
小林私(こばやし・わたし)
1999年1月18日、東京都あきる野市生まれ。
多摩美術大学在学時より、本格的に音楽活動をスタート。
シンガーソングライターとして、自身のYouTubeチャンネルを中心に、オリジナル曲やカバー曲を配信。チャンネル登録者数は14万人を超える。
2021年には1stアルバム「健康を患う」がタワレコメン年間アワードを受賞。
2022年3月に、自らが立ち上げたレーベルであるYUTAKANI RECORDSより、2ndアルバム「光を投げていた」をリリース。
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