コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、幼稚園児ながら最強の霊能力をもつ“カヤちゃん”が主人公の、幼稚園を舞台にしたホラー漫画『カヤちゃんはコワくない』(新潮社/くらげバンチにて連載中)をピックアップ。
作者の百合太郎さんが2巻に収録の第12話「お人形はコワくない」を12月8日にTwitterに投稿したところ、1万以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、百合太郎さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
身の回りに現れる怪異から守る…カヤちゃんの“痛快”な悪霊退治を描く本作
5歳の女の子・カヤちゃんは、幼稚園児ながら最強の霊能力の持ち主。身の回りで起こる“怪異”のいたずらに園児たちが巻き込まれると、いつもひっそりとその場に現れては悪霊をグーで殴って倒し、人知れずみんなを助けていた。
ある日、園長先生が知り合いの園から引き取ってきた古びた赤ちゃんの人形を、園児の一人であるナッチが「助けてあげる」と言いこっそり持ち出してしまう。使ってない部屋に人形を隠すも、その日からナッチはハサミで自らの髪の毛を極端に短く切ったり、前歯を無理やり抜くなどの異様な行動をするようになっていった。心配した他の園児が人形を取り上げようとすると「イジワルしないで」と恐ろしい形相で迫ってくるナッチ。そこに、カヤちゃんが現れ人形を奪って…。
類い稀な霊能力者である幼稚園児・カヤちゃんが、園の内外に現れる悪霊を退治する姿が描かれる本作。2巻に収録の第9話「プールはコワくない」では、幽霊によってプールの底に引っ張られ溺水してしまうケンケンをカヤちゃんが助け、友情が芽生える姿が描かれている。カヤちゃんや園児たちのかわいらしいビジュアルとは相反して、不意にドキッとさせられる恐ろしい幽霊の描写も話題を集め、Twitter上では「つよい!」「めっちゃ面白かった」「なかなかにビビった」「ゴーストの描写がヒエッってなる」「カヤちゃん安心感すごい」「カヤちゃん人生5周はしてそう」など多くのコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。
「前職である“幼稚園の先生”時代の体験を元に」作者・百合太郎さんが語る創作の裏側
――『カヤちゃんはコワくない』はどのように生まれた作品ですか?
連載を始める前は幼稚園の先生として働いていたのですが、子どもって、大人からしたら本当に不思議なことを言ったりやったりするんです。クスッと笑えることだけだったらいいのですが、笑えないような危ないことも…。「何でそんなことするの〜!?」と思いながら、ふと「私(先生)には見えない『何か』によって子どもが悪いことに導かれていたら怖いな、そんな世界観を漫画にしたら面白いんじゃないかな」と思ったのがきっかけです。
――幼稚園児である主人公・カヤちゃんが“最強の霊能力者”という斬新な設定も本作の魅力のひとつですが、カヤちゃんというキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
カヤちゃんはおかしな言動や強引な行動で周囲からは手に余る問題児だと思われていますが、実はとてつもない能力を秘めているのに周りがそれに気づいていないだけ、という「孤高の天才」的なキャラクターです。一方で、現実にも霊能力ではないにしろ物凄い伸び代を隠し持ちながらも周囲に中々理解してもらえないようなカヤちゃんみたいな子はたくさんいるんです。カヤちゃんはそういう子どもたちから着想を得ていて…と真面目な理由もある一方で、読者に「うわようじょつよい(うわ幼女つよい)」って言われたい!というノリと勢いでできた部分も結構あったりします(笑)
――本作では、カヤちゃんや幼稚園児たちのかわいいビジュアルとは裏腹に、突如として現れる恐ろしい幽霊の描写が印象的です。百合太郎さんが作画の際にこだわっていることや、特に意識していることがあればお教えください。
メタ的な話ですが怪異が怖ければ怖いほどそれを一撃でやっつけるカヤちゃんが輝くと思うので(笑)、とにかく怖くなるよう、初見でギョッとしてもらえるよう描いています。ただ何時間も作画していると目が慣れてきて怖いのか怖くないのか分からなくなってくるので、昼に作画しておいて真夜中になってから改めて画面を見て「うわ怖っ!」って言えたら「合格」としています。
――百合太郎さんにとって各話のストーリーを生み出す際の元ネタやきっかけとなるものはどんなところにありますか?
先生時代の体験が元ネタになることが多いです。もちろん本当に心霊体験をしているわけではありませんが「セロテープまみれの本」とか「トイレに閉じ込められた子どもを救出した」とか実際に見たもの、体験したことの端っこを拾い上げて怪談的なものに膨らませています。
あとは元々オカルトや心霊モノが大好きなので今までに見聞きしてきた怪談から着想を得て、幼稚園という舞台と絡めて話を考えることもあります。
――本作の中で、百合太郎さんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば理由と共にお教えください。
先ほどもお話ししたように、カヤちゃんは周りから理解を得られない孤高の天才キャラとしてスタートしていますが、先生や友達、モブおじさん(笑)など理解のある人と関わる中で少しずつ周りの環境に馴染んでいく姿も描いています。特に『プールはコワくない』ではクラスの友達とのやりとりや友情の芽生えのような部分を描くことができたので気に入っています。
ホラーなところでは、カヤちゃんが唯一コワがっている「ママ」の全貌を描いた『家庭訪問はコワくない?』の最後のシーンですね。「ママ」の話は物語の縦軸として端々でずっとカヤちゃんに付き纏っていくものなので、読者の皆さんにも色々予想や考察をしながら追いかけてもらえればと思っています。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
応援してくださる皆様のおかげでカヤちゃんは少しずつ成長しながら先に進むことができています。これからも引き続き楽しんでくれたらとても嬉しいです!まだまだ寒い日が続きますが、カヤちゃんを読む時はどうぞ暖かくして背筋だけを凍らせるようにしてくださいね!