水野は吉宗に見初められ、夜伽相手に選ばれるが…
大奥に入った水野はお三の間の杉下の下で働くが、大奥総取締の藤波(片岡愛之助)の目に止まり、御中﨟となる。八代将軍となったばかりの徳川吉宗の初の大奥へのお渡りの日、御中﨟たちがここぞとばかりにきらびやかな裃に身を包むなか、水野は流水紋の入った黒色の裃で現れる。吉宗は水野を見初め、吉宗として初めての夜伽の相手に選ぶ。
その夜、ご寝所に上がった水野は剣術の話しで吉宗と打ち解け、吉宗の女名が「信」であることを知って驚く。吉宗に、昔同じ名前の知り合いがいたと水野が話すが、吉宗は「今日からそなたは私の男じゃ」と告げて2人は一夜をともにした。
翌朝、吉宗が機嫌を良くしていると、未婚の将軍の初めての夜伽相手は「ご内証の方」と呼ばれて打首になるご定法があると知らされる。水野もそのことを藤波から知らされ、杉下がなんとか回避しようと言うが、水野は家には金が入りお信もさすがに諦めるだろうと笑って処分を受け入れる。
水野の処分がくだされる日。刀が振り落とされるが、水野は命を落とすことはなかった。吉宗が現れ、「大奥にいた水野という中﨟はここで死んだ。田嶋屋では信という娘が生涯婿は取らぬと駄々をこねて親は往生しているらしい。婿となって助けてやってはどうだ、町人、進吉よ」と語りかける。
水野は町人・進吉となってお信と再会する。黙って微笑む進吉にお信は嬉しさのあまり涙目になって抱きつき、進吉はしっかりとお信を抱きしめるのだった。今生の別れとなるかと思った2人が抱き合う姿に、安堵させられる。吉宗の粋な計らいも感動的で、胸が熱くなるシーンとなった。
◆構成・文=牧島史佳