コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、電車内で痴漢被害にあっている女の子から助けを求められた際の一部始終を漫画にした『痴漢被害に遭遇した話』をピックアップ。
作者であり、実際に痴漢被害を目の当たりにしたという尾添椿さんが1月8日に本作をTwitterに投稿したところ、7.4万以上の「いいね」が寄せられ大反響を呼んだ。この記事では、尾添椿さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
少女のスマホ画面に「たすけて」の文字…“証拠を撮影すること”の大切さを描き話題
漫画家として活動する尾添椿さんが2022年末、普段と違う路線の電車を使用した際、目の前に立っている女の子がスマホの画面をこちらに向けていることに、ふと気づく。その画面には、「痴漢されてます たすけて、さい、知らないひと。」という文章が書かれていた。声なき助けを求められた尾添さんは、咄嗟に音の出ないカメラアプリでその画面を撮影。その後、動画を撮影しながら痴漢の加害者に「次の駅で降りてください」「この女性の体触ってましたよね」と声をかける尾添さん。すぐに犯行を認めず逆上する加害者だったが、尾添さんが女の子のスマホ画面を撮影したデータと、加害者に声をかけてからの行動が撮影された動画が証拠として揃ったことで、鉄道警察にすぐに身柄が引き渡されることになった。
尾添椿さんが実際に体験した、痴漢の被害者を助け出すまでの一部始終が描かれた本作。尾添さんは当時について「写真や動画で証拠を残したこと、特に女の子がスマホで助けを求めた際に画面を乗客に見えるようにしていたことが一番大事だと鉄道警察の方が仰っていました。女の子の勇気ある行動がとてもよかった」と振り返る。痴漢行為自体がこの世からなくなることが一番だが、もしも被害に遭ってしまったら“他の乗客にスマホの画面を見せて助けを求める”、助けを求められた側はその画面を撮影し、加害者の行動を動画で残す等の“状況証拠を撮影する”ことの大切さを切実に訴えた漫画となっている。
Twitter上では「これは勉強になる!」「女の子マジでよく耐えました」「有益な情報ありがとうございます」「素晴らしい対応、参考にしたいです」などのコメントが寄せられた。また、尾添椿さん自身が痴漢加害者に立ち向かう描写には「素晴らしい!」「惚れる」「勇気ある行動敬服いたします」「こんなふうに強くなりたい」などの声が寄せられ、反響を呼んでいる。
実体験を漫画にすることで痴漢対策に 作者・尾添椿さんが語る創作の背景
――ご自身の実体験を元に描かれた『痴漢被害に遭遇した話』ですが、この漫画を描こうと思った経緯についてお聞かせください。
被害に遭った女の子に、スマホで助けを求める方法をどこで知ったの?と聞いたとき「SNSで知りました」と教えてくれました。今年に入ってから「試験の時期は痴漢が増える」と聞いて、私が遭遇した痴漢の一部始終を漫画にしてTwitterに流せば、痴漢対策のひとつになるのでは?と思ったからです。
――痴漢被害に遭遇し、被害者の女の子からスマホで助けを求められたときはどんな心境でしたか。
普段使わない路線に乗っていたので「降りる駅を間違えないようにしないと」と思い、少し緊張していたので、目の前に「助けてください」とメモに書いたスマホを出された時も「対応を間違えてはいけない」という心境でした。
――本作をTwitterで公開後7.4万以上もの「いいね」が寄せられ、また読者からのコメントも多く集まり反響を呼んでいます。中でも特に印象的だったコメントはありますか?
私が居合わせたとき、近くにいた老夫婦が「そんなことで大袈裟」と言っていて、もしかすると世間の大多数の意見は「痴漢被害は大袈裟」なのかも…と感じたのですが、「撮影して状況証拠を残そう!」という意見が多くて安心しました。
あとは「この方法で冤罪も防げる」という意見。悪いのは加害者のみという当たり前の価値観は揺るぎないので、反響の数だけ痴漢が心身を一から改め直せばいいな、と思いました。
――尾添椿さんは本作以外にも、『生きるために毒親から逃げました。』(イースト・プレス)や『そんな親、捨てていいよ。』など実体験を元にしたエッセイ漫画を多く描かれていますが、エッセイ漫画を描く上でのこだわりや意識していることがありましたらお教えください。
なるべくコミカルに描くことを意識しています。現実は常に面白いわけじゃないし、伝えたいことが重く苦しいものでも読んでもらえるように描かないと、エッセイ漫画は読んでもらえない。あとは、事実に基づいて描くからこそ、特定の人物・場所への批判にならないように注意しています。
――最後に、尾添椿さんから読者の方へメッセージをお願いします。
鉄道警察の方は、痴漢ほか不審者による事件・事故に居合わせた際は、写真や動画など現場の証拠があればあるほど被害の実態把握が各段に進むと仰っていました。あれ?おかしいな?と思ったらスマホを構えるだけで、解決策が増えます。スマホ時代、便利に安全に使っていきましょう。