コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“人喰い病”の少年と“生気を吸い取る病気”の少女、2人の出会いから別れまでを描いた漫画『人喰い少年と触れられない少女』をピックアップ。
作者である、めめっぽさんが1月29日に本作をTwitterに投稿したところ、切なくも感動的なストーリー展開も話題を集め、3.3万以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、めめっぽさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
似た境遇だからこそ受け入れ合える 2人の“究極の愛”を描いた物語に「泣ける」の声
5歳のときに“人喰い病”と診断された少年・ノワール。この病にかかったら施設に預け、安楽死させなければならないという決まりがある。だが、母親はノワールを守るために戸籍を捨て、2人で遠くの街に引っ越すことに。新しい家の、背丈より大きな柵に囲まれた庭で身を隠すように過ごしていたある日、ノワールは隣の家の庭でおままごとをする美しい少女・フィオを見かける。
フィオは触れたものをすべて枯らしてしまう“生気を吸い取る病気”に冒されており、人や動物、植物にさえも触れられない体質だった。互いに似た境遇であることを知り、柵越しに会話しながら仲を深めていく2人。そんな中、ノワールは日を追うごとに激しい空腹感に襲われるようになっていた。
近いうちに人を食べてしまうことを恐れたノワールは、母親と顔を合わすことを避け、フィオにも「もう庭には来ない」と告げる。別れに納得のいかないフィオは、夜の庭に佇むノワールを見かけて自分も庭に出ると、柵越しに問い詰める。しかし、その姿を見て空腹感に耐えられなくなったノワールは唐突に柵を外し、フィオの腕を押さえて襲いかかってしまう。徐々にノワールから生気が吸い取られる中、フィオは予想外の言葉をノワールに向けて…。
似た境遇であるからこそ、互いを理解し合えたノワールとフィオ。本作ではそんな2人の運命的な出会いから、相手に向ける愛情や思いやり、そして切なく儚い別れまでが繊細に描かれている。Twitter上では「感動した」「泣きながら読みました」「世界が優しい」「美しい愛に涙した」「今年一番好きな作品」「全部が美しすぎる」「結末が運命的」「登場人物それぞれの強い想いが感じられる素敵な作品」「もっともっと子どもたちを、大事な人たちを抱きしめようと思えました」など多くのコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。
「“他人と違っても愛してくれる人が絶対に居る”を根幹のテーマに」作者・めめっぽさんが語る創作の背景とこだわり
――『人喰い少年と触れられない少女』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。
今まで世の中の物語から受け取っていた素敵なものたちを、年齢が上がるにつれ自分の中からも出していきたいという気持ちが強まっているところに、感銘を受ける作品に出会ったり、いろいろな機会が重なったのが筆を取るきっかけになりました。
初めて読み切りサイズの創作漫画を描くのなら、自分が生きてきたうえで悲しかったりしたことを、少しでも癒せるようなテーマで描きたいと思いました。その結果、自分が他人と違うと感じて悲しくなった経験や、それをその形のまま受け止めてもらい、うれしかった経験を込めようと思いました。
――本作をTwitterで公開後、読者から感動の声とともに3.3万もの「いいね」が寄せられました。今回の反響について、めめっぽさんの率直なご感想をお聞かせください。
投稿直後は、怖かったので手が震えていました。簡単には取り扱えない題材だと思って描きましたし、何よりキャラクターの人生の全てを自分が決めている責任というのが心にのしかかって重かったです。
ただ、ネットという媒体を選ぶにあたり、いろいろと考えました。「誰か一人の心に刺さるかもしれないし、刺さらないないかもしれない。でもたった一人だとしても、この子たちの人生が届けばそれで嬉しい」と思ったうえでネットを選んだので、刺さってくださる方がこんなに居るんだ、とうれしかったです。
――“人喰い病”のノワールと“生気を吸い取る病気”のフィオ、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか。
初めにノワールから作りました。「他人と違っても愛してくれる人が絶対に居る」というのが物語の根幹のテーマなので、それに合わせて体質を決めたり、応援したくなるような心の持ち主にしたりと肉付けしました。
その後、ノワールにぶつけるならどういう子が相性がいいのかを、頭の中で何通りか考えました。「世間の子と同じ体質」だったり「生気を吸う以外の体質」だったりいろいろ考えた結果、「生気を吸う体質」の子であればノワールの欲しいものを与えてあげられるかもしれない、と思ってフィオが生まれました。
――本作では、同じ境遇にあるからこそ相手を理解し受け入れることができたノワールとフィオ、2人が迎える悲しくも優しいラストシーンが印象的でした。めめっぽさんが本作に込めた思いや、創作する際にこだわった点があれば教えてください。
自分を自分で否定してしまうときには、自分を自分のままで受け止めてくれる人が必要だと思うので、ノワールとフィオがいかに自分を曲げずに過ごしていけるか、どうしたらそれに相応しいキャラクターを置けるのか、と考えた結果、こういう話になったと思います。
柵の外に出ればノワールとフィオにはもっと刺々しい言葉が投げかけられると思うのですが、今回は「自分を自分のままで好きでいてくれる人」の方に着目したかったので、キャラクターたちもあえて主役2名を受け入れてくれる人を多めに出しました。
――本作の中で、めめっぽさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
フィオがノワールの手を振り払って「先が長くたって長くなくたって、あなたの身体が大切じゃなくなるなんて、そんなわけないでしょ」と言うところです。
実はネーム(漫画の骨組み)を描き始めるまでフィオは手を振り払っていなくて、触っていました。先述の通りノワールの後にフィオが生まれたので、当初はフィオが「ノワールにとって都合が良い舞台装置」の域を逸脱しきれなかったのですが、ネームの最中に脳内のフィオが勝手にノワールの手を振り払ったので、そのまま変更して描きました。その時「フィオはこういう子なんだ」と思いました。彼女に命が宿った瞬間なのでお気に入りです。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
漫画が大好きなので、これからもなんらかの形で描き続けていきたいと思います。自分の好きと他人の好きは分けて考え、どちらも並行して生み出したいですが、本作は自分の好きを込めたものなのでそれで刺さってくださった方々はとりわけ得難い存在だと感じます。
貴重なお気持ちをありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。