怒りと悲しみで泣き崩れる綱吉が辛い
その後、右衛門佐は新しい中臈を呼び寄せ、桂昌院は対抗してお庭お目見えを開く。綱吉は右衛門佐が御簾で隔てただけのすぐ隣で控えるなか、男と褥をともにする。仲演じる綱吉の妖艶な姿が美しくもあり、一方で痛ましい。男と子を成すために化粧を厚塗りして着飾る綱吉は派手さが増すとともに凄みも加わり、さらに通り越して憐れみさえ感じられる。
ある時、催事を見物していた綱吉は男2人がひと目を忍びながら指を絡ませあっているのを目ざとく見つける。綱吉はその2人と寝所をともにし、激しくまぐわった。もはや自暴自棄に感じられ、色気よりも悲哀が漂い、見ていて胸が苦しくなる。
事後に綱吉は男2人にやおら「では、そなたたち2人でむつみ合うてみよ」と命じる。彼らが戸惑って拒絶してもさらに強制しようとする綱吉に、隣に控えていた右衛門佐が見かねて止めに入る。「つまらん」という綱吉に右衛門佐は、天下人である上様の力は天下を治めるために使われるもの、若い男たちを辱めるために使われるものではないと諫める。
「辱め?」と疑問を呈する綱吉に「人前でむつみ合えというのは辱めにございましょう!」と右衛門佐は声を荒げるが、綱吉は悲しそうに嘲笑する。綱吉は「何が辱めじゃ! 私は毎夜毎夜、こうしてそなたらに夜の営みを聞かれておるではないか! そうか、これは辱めであったか!」と怒りと悲しみをないまぜにした表情で涙を流しながら叫ぶ。そして、「どうであった!? 私の夜の営みは!」と続け、「将軍とはな…岡場所で身体を売る男たちよりも卑しい、この国で一番卑しい女のことじゃ!」と右衛門佐の胸ぐらを掴んで訴えながら泣き崩れるのだった。
悲恋を情感豊かに描いた「3代 徳川家光 × 万里小路有功編」から一転、奔放な綱吉と策士の右衛門佐の攻防が軽やかに描かれるかと思われた「5代 徳川綱吉×右衛門佐編」だったが、辛い運命に翻弄される男女が描かれた今話。やはり本ドラマは男女の業から目を逸らさせてくれず、切なさとやるせなさとともに頼もしさも感じた。
◆構成・文=牧島史佳
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