『ウマ娘 プリティーダービー』『アイカツスターズ!』『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』などの人気作品へ次々に出演し、芝居にステージに、幅広く活躍を繰り広げる声優・前田佳織里が、待望の自身名義での音楽活動をスタートする。3月15日にリリースされた1st EPのタイトルは、『未完成STAR』。初のアニメタイアップ担当楽曲を含む全4曲は、いずれも「表現者・前田佳織里」のパーソナリティを映し出した佳曲たちだ。音楽活動、そして『未完成STAR』にたどり着くまで、前田佳織里はどのように歩みを進めてきたのか――声優や音楽を志すことになったルーツから青春時代、そして現在に至るまでを語り尽くした超ロング・インタビュー、第1回は『未完成STAR』への手応えとともに、幼少期の記憶をたぐりながら話を聞かせてもらった。
アーティストデビューするにあたって、「自分の歌ってなんなのか」「自分とはなんだ」「前田佳織里とはどう思われてるのか」を、すごく考えた
――1st EPの『未完成STAR』、ものすごくいいですね。
前田:やった〜っ! 自信になります(笑)。
――名盤だと思います。この取材の少し前にボーカルのレコーディングが終わったということで、この時点で前田さん自身はEPに対してどんな手応えを感じてますか。
前田:1st EPで、表題曲も含めて全部で4曲収録なのですが、「そんなにたくさん歌わせていただけるんだ」って最初、驚きました。その後は長い時間をかけて、いろいろとディスカッションしながら、ひとつひとつを作っていって。録り終えた今はとても楽しかったなって思っています。“光ったコインが示す方”はわりと早い段階で録ったんですけど、残りの3曲は短いスパンで録っていて、その期間は濃密でした。正直初めてのことなので、手探り状態もありながら、素敵な楽曲が揃ってるし、自分の歌声が重ね合わさったことで、自然と聴きたくなるような曲に仕上がっていると思っています。
――とにかく、曲がいいですよね。
前田:とてもいいです! 「わたしを見せたい! 表現したい!」っていう気持ちが詰まった1st EPになったとも思っています。“光ったコインが示す方”だけを聴いていた方は、EP全体を聴いたときに、ビックリしてくれるんじゃないかなって思いますし、みんなの反応が楽しみです。アニメの主題歌を歌うのは自分の中で夢のひとつで、本当に光栄なことで、その他の3曲もとても素晴らしくって、4曲すべてが愛しい我が子のようです(笑)。関わってくださった方に心から感謝しています。
――長いディスカッションを経て、「こういうものにしたい」っていう意思が詰まっている1枚になっているということは、前田さん自身のパーソナリティや人物像が反映されたEPでもあるのかなと思いますが、そういう実感はありますか。
前田:まさにおっしゃるとおりで、わたしの中でもアーティストデビューするにあたって、「自分の歌ってなんなのか」「自分とはなんだ」「前田佳織里とはどう思われてるのか」を、すごく考えました。マネージャーさんたちとの話し合いの場で、今後の方針を話したときに、お互いの中で出てきた単語を共有していったんです。たとえば、自分はステージが好きだから「ステージ」とか、「次の一歩」とか。それと、わたしの中で音楽は原点的な部分があるので、始まりという意味で「原点回帰」を出したりして。それをすり合わせていく中で、今でも印象に残ってるのが、マネージャーさんから出していただいた「前田さんは応援したくなる」でした。わたし自身は、ただガムシャラにまっすぐやっているんですけど、見ている人たちに「その姿に勇気づけられるよね」って言っていただいたこともあって。それが嬉しかったですし、聴いてくれる方を勇気づける力、エネルギーを送りたいって思いました。
そうやって、いろいろと言葉を出していって、だんだんと曲が上がってきて――「この言葉だけで、こんなにも素敵な曲ができるんですか!?」って(笑)。わたしからは見えてないところでも、きっといろんな方々のブラッシュアップを重ねていただいて、この曲たちができ上がったんですけど、4曲の中には等身大の自分の曲もあれば、逆にあまり人には見せない裏の自分の姿もあったり、今後の自分が目標にするような歌もあったり、どれも曲の中に自分が入っています。EPを聴いていただいた方に私のメッセージ・想いが届いたら嬉しいです。
――「自分を入れてる」というのは、制作開始からレコーディングまでの間に意図的に自分を入れていったのか、結果的に自身が映し出されることになったのかでいうと、このEPの場合は前者になるんですかね。
前田:そうですね、どちらかというと前者です。曲を歌うにあたって、何回も曲を聴いて出てきたインスピレーションやわたしがその曲で何を伝えたいのかをすごく考えたし、自分がどう歌いたいのかを大切にしようと思いました。その上で、スタッフさんたちに「こういうイメージなんですけど、こう歌ってみたくて」って伝えて、みんなで意見を合わせていきました。そうすることで、全然予定調和じゃない面白いことが、たくさん起こったと思います。歌ってみて、「(わたしに)こんな引き出しあったんだ?」って自分でビックリしたり、どんどんよくなっていったりしたので、自分の殻を破らせてもらった気がします。
昔から、歌うことはすごく好きだったかも
――このインタビューでは、前田さん自身のパーソナリティが映し出された『未完成STAR』ができるまで、をテーマとして、ルーツにさかのぼりながらお話を聞いていきたいと思います。まず、音楽にまつわる、一番古い記憶について聞かせてください。
前田:母の車でよく聴いていた音楽です。自分が小さい頃から父も母も音楽が好きで、特に母はクラシックもよく聴いてたし、森山直太朗さんや、エンヤさんのような洋楽も聴いてました。自然と、音楽を聴く習慣はあったと思います。
――日々、音楽がすぐそばにある環境で育った。
前田:そうですね。でも、音楽を専門的にやってたり、昔から音フェチだったり、みたいなことではなくて、日常で音楽を聴いていました。
――日常的にご両親が聴いていた音楽から影響を受けたことで、今のご自身がこういう音楽が好むのではないか、と感じる傾向はありますか。
前田:今の自分の好みの音楽とはまた全然ジャンルが違うんですが、大人になってみて、やっぱり血は争えないなというか、幼少期の記憶ってすごいなって思います。母が流していた曲たちを無性に聴きたくなることがあります。今、森山直太朗さんをよく聴くし、エンヤさんも聴くし。小さい頃から、音楽を聴いたときに、MVのような絵が思い浮かぶんですね。それは幼少期の頃からで、今でもあります。
――たとえばエンヤの曲を聴くと、川が流れてる谷の絵が浮かぶ、的な。
前田:見えます、見えます。見えるし、エンヤさんの歌では、自然をすごく大切にされていると感じます。小さい頃にパッと思い浮かんだイメージ映像が今でも頭に残っていて、その曲を聴くたびに思い出します。
――子どもの頃は音楽が身近にあって、聴く機会もたくさんあって、自然と音に触れて育ってきたんですね。
前田:そうですね。昔から、歌うことはすごく好きだったかも。恥ずかしいとか全然なく、歌ってました――下手だったけど(笑)。家族旅行の車の中で、爆音で歌う、みたいな。今ではできないですけど(笑)。
2017年、声優デビュー。代表作に、TVアニメ『アイカツスターズ!』『ウマ娘 プリティーダービー』『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』など。4曲入りの1st EP『未完成STAR』より、自身名義の音楽活動をスタート。
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発売日: 2023/03/15