コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、子どもが成長するにつれ母親の呼び方が変わる様子や、その時の心情を描いた育児エッセイ漫画『私と「オカーチャン」の話』をピックアップ。
作者のむぴーさんが3月2日に本作をTwitterに投稿したところ、1.5万件を超える「いいね」が寄せられ、同じ子育て世代の方から多くの共感を集めた。この記事では、むぴーさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについて語ってもらった。
うれしくも寂しい…子どもの成長あるあるが話題に
3人の子どもをもつ作者のむぴーさん。1人目が産まれた時、「この子になんて呼ばれるのか」と楽しみに思っていたが、なかなか自分の名前を呼んでくれる日は訪れなかった。2人目も産まれ、自分のことを呼んでくれる日がやってくる…初めて呼ばれた名前は「オカーチャン」だった。
その日から「オカーチャン」になったむぴーさんは、3人目が産まれて以降、自分のことを「オカーチャン」と呼ぶようになっていた。これからもずっとオカーチャンだと思っていた矢先、小学生になった長男が「おかーさん」と呼んでいることに気づく。
その後、いつの間にか長女も「おかーさん」と呼ぶようになっていった。あんなに舌っ足らずだった2人がすっかり成長していることを知り、最後に「オカーチャン」と呼ばれたのはいつだろうと寂しさにふけっていると…。
子どもの成長をうれしくも寂しく思うリアルな心情を描いた本作は、同じ子育て世代からも大きな反響を呼び、Twitter上では「うわぁぁ めっちゃわかる!」「当時のこと思い出して涙でた」「刺さる」「今からこの小さな別れが来ると思うと切ない…」「なんか懐かしい」など多くのコメントが寄せられた。
「あ、今この瞬間をずっと覚えておきたいな」と思った瞬間を 作者・むぴーさんが語る漫画制作の裏側
――『私と「オカーチャン」の話』を漫画にしようと思ったきっかけや理由があればお教えください。
息子と娘から「オカーチャン」と呼ばれなくなったことに気づいた日、すごく寂しくてそのことをブログに文章で書いたんですが、それから数ヶ月経って久しぶりに末っ子から「オカーチャン」と呼ばれたのがすごくうれしくて、この話を描こうと思いました。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
今感じているこの気持ちを覚えておきたいなぁと思い、3人の子を育てる日々を振り返りながら思うままに描きました。書き残すことが大事だったのでここを特に見て欲しい…というポイントは特にないです。
――本作の投稿には子育て世代の方から多くのコメントが寄せられていましたが、特に印象的だったものがあればお聞かせください。
「指の間をスルスルと、落ちて消えてしまった記憶」というコメントがあったんですが、本当にその通りだなと思います。子育てしていると、少し前まで当たり前だったことが、子どもの成長とともにいつの間にか終わっていて、終わったことにも気づかないまま過ぎていっちゃうんですよね。
この漫画を描いた後に俵万智さんの「最後とは知らぬ最後が過ぎてゆくその連続と思う子育て」という俳句を知り、私が感じた気持ちはまさにこれだなぁと思いました。
――むぴーさんが子育てをする中で、本作同様に子どもの成長をさみしく感じる瞬間は他にもあるのでしょうか。
ありますよ〜。子どもが何かできるようになるたびに、それができなかった子どもとはもう会えなくなるわけで。子どもが成長するのはすごく嬉しいことですが、ちょっと寂しい気持ちになることもたまにあります。
でもその後に「数年後の自分にとっては、今現在のこの時間も途方もなく特別な日々なんだろうな」とも思うんです。そう思うとなんだか全部全部特別な気がします。まぁ大変な時はそんな余裕ありませんけど…(笑)。
――むぴーさんは本作に限らず、Twitterや書籍で多くのエッセイ漫画を描かれているようにお見受けします。エッセイ漫画を描くうえで意識していることや気を付けていることがあればお聞かせください。
実はSNS以外ではあまりエッセイマンガは描いていないんです。連載漫画などは全てフィクションマンガですし。さっきの質問とも繋がるんですが「あ、今この瞬間をずっと覚えておきたいな」と思った瞬間を毎回育児マンガとして自分のために書き残しています。書き留めておかなければ、簡単にこぼれ落ちてしまうような日常のやりとりや、どんな家庭でもあるような、当たり前で、本当にささいで、すぐ忘れてしまうような、そんな日常の一コマが大好きです。
でも逆に「この経験もこの感情も2度と思い出したくない」みたいな時もあるじゃないですか。私の場合、そういう感情をフィクションマンガの登場人物に追体験してもらうんです。そうすると私の中からその記憶がきれいに消えてしまいます。なんというか経験の記憶としては残っているんですが、その時の自分の感情の記憶が消えちゃうんです。不思議だなぁと。
このことに気づいたのは数年前なんですが、この話をしたのはこれが初めてです(笑)。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
いつも漫画やイラストを見てくださり本当にありがとうございます。これからも是非、エッセイ漫画もフィクション漫画も読んでいただけるとうれしいです!