ガールズグループ“EXID”の“ハニ”としてデビュー
アン・ヒヨンは、中学生の時、「韓国3大事務所」の1つ“JYPエンターテインメント”(TWICEやStray Kidsなどが所属)のオーディションに合格して練習生となったが、デビューの話が流れてしまい、一度は夢を諦めようとした。だが諦めきれず、事務所を移って頑張り、2012年に6人組のガールズグループ“EXID”のメンバーとしてデビューした。
EXIDでの芸名は“ハニ”。デビュー直後に半分のメンバーが脱退、そして新たに2人が加入するなどアクシデントを乗り越えて活動していたが、正直、鳴かず飛ばずの日々が続いた。
しかし、2014年8月に発売した「Up & Down」が、発売当初はほとんど売れなかったのに、ファンが撮ってYoutubeにアップしたハニの動画が話題となって火がつき、チャートを逆走。11月には遂に音楽番組で1位となり、番組出演活動を再開する事態となった。
現在では、発売から時間が経った歌がファンの動画をきっかけにチャート逆走するのはそれほど珍しくなくなってきたが、当時は異例中の異例。「逆走アイドル」の先駆けとなった。
2018年には日本デビューもしたが、2019年にハニを皮切りにメンバーと事務所との契約が次々に終了。現在は各自別の事務所で、それぞれの道を歩んでいる。
片道切符で自分探しのひとり旅へ
ハニことアン・ヒヨンは、契約が終了する時点では次の所属事務所も活動予定も何も決めていなかった。自分は何がしたいのか、何が好きなのか、何度も自問自答したが、答えが出なかったのだという。そして、片道切符で自分探しの旅に出た。
そんなある日、旅先で自身のInstagramのDMをチェックすると、映画監督のイ・ファン氏から「大人たちは知らない(原題)」という映画の出演オファーが届いていた。所属事務所が無い彼女にオファーする手段が無く、しかも彼女は旅行中。それでDMで直談判したとのこと。そして、ヒヨンがあまりにも退屈していたせいで、いつもならチェックしないDMをたまたま開いたというのも、何か運命的なものを感じる。
ほぼ演技初心者の彼女にオファーされた役は、4年間、街を徘徊している不良少女で、暴力、悪口、喫煙など、“ハニ”の明るく正しいイメージとは真逆のキャラクターだった。「もしも私が“俳優になろう”と決めていた時だったら、いろんなことを考えてこの役は請けなかったかも。私が勇気を出せるタイミングに魔法のようにDMを送ってくださって請けることができたし、イ監督じゃなかったら、演技が私にこんなに近づいてくることはなかったと思います」と回想する。
「自分への固定観念を崩したら、自由になれた」
この撮影を通じて、ヒヨンは知らなかった自分を知り、殻を破ることもできた。人に石を打ち下ろすシーンで、演技とはいえ、彼女はどうしてもできなかったんだそう。何10テイクも撮り直してやっとOKが出た後、考えが変わったと言う。
「自分自身について多くのことを考えるようになりました。私は自分に厳しい人間で、“私は、こう”という固定観念が崩れたら死ぬと思ってたんです。でも死ななかった。むしろ自由になれました。私も崩れることがあるんだ、崩れても私は私。そんな風に考えられるようになりました」。女優としても人間としても、ヒヨンはこの映画で大きく成長した。
ヒヨン自身が様々な事を乗り越えてきたからか、タレント仲間の相談にのることも。「休んだらダメになるんじゃないかと思ってしまう」と悩む後輩には「私も走り続けなきゃ、って強迫観念にかられてたの。でも、このままだと死んじゃう気がして、自分で“私、ちょっと危ないかも…”って気づいたの」と、自身のつらかった思い出も隠さずに告白して相談にのっていた。
そんなこともきっかけになったのか、現在は心理学の資格を取るために勉強中。他人について、世の中について、そして自分自身についても学んでいくのが刺激的で楽しいんだそう。余談だが、彼女はIQ145、TOEIC900点の才女である。
「目標を立てずにときめくことをしていきたい」
このように興味の向くまま、流れに身を任せて過ごしているヒヨン。「以前は、将来のことを考えて目標を立てるタイプでしたが、ひとり旅に行ってからは長期的な目標を立てたり、こうなりたい、という考えはなくなりました。歌手活動もやりたくなったらやるつもり。明日のことは明日にならないとわからないので、ただ、ときめきを感じてやりたいことをしていくと思います」と語り、今は、演技がとても面白くて、演技に集中したい時期なんだとか。
「愛だと言って」のミニョンは、アン・ヒヨンとは全く違う、過去に執着し、じっとりねっとりした印象の女性。今作の監督も「ミニョンは誰からも愛されにくい人物かもしれませんが、今後の展開を見れば、彼女に感情移入して気の毒になると思います」と話しており、ドンジンも私たち視聴者も知らない秘密がありそうだ。図々しい印象が強いが、今後、せつなく哀しい一面をヒヨンがどんな繊細な演技で見せてくれるのかにも注目だ。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョン編集部
Sony Korea
発売日: 2022/10/06