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大切なのは、キャラクターの歌声を守ること。前田佳織里流キャラソンの極意――前田佳織里「未完成STARへの道」

2023/03/26 18:00

前田佳織里
前田佳織里撮影:北島明

『ウマ娘 プリティーダービー』『アイカツスターズ!』『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』などの人気作品へ次々に出演し、芝居にステージに、幅広く活躍を繰り広げる声優・前田佳織里が、待望の自身名義での音楽活動をスタートする。3月15日にリリースされた1st EPのタイトルは、『未完成STAR』。初のアニメタイアップ担当楽曲を含む全4曲は、いずれも「表現者・前田佳織里」のパーソナリティを映し出した佳曲たちだ。音楽活動、そして『未完成STAR』にたどり着くまで、前田佳織里はどのように歩みを進めてきたのか――声優や音楽を志すことになったルーツから青春時代、そして現在に至るまでを語り尽くした超ロング・インタビュー、第7回は、数々の作品・キャラクターに寄り添いながら磨いてきたキャラソンの極意を聞いた。

キャラソンを歌うときに、癖があってはダメだ、それだと自分でしかない、と思って、1回全部捨てた


――デビューの直後から、キャラクターソングのお仕事も始まっていきますね。前回名前を出してもらった3作品をはじめ、どれも歌と切り離せない作品たちじゃないですか。前田さんがキャラソンと向き合うときに心掛けている、外してはいけない軸にしていることってなんですか。

前田:キャラクターが持っている気持ちをしっかりと乗せること、ですかね。そのキャラクターになり切ることによって、自然と出てくる感情を歌っていてすごく感じるので、そこを大切にしてます。あとは、技術的な部分でいうと、キャラソンとして「この子の歌声を守る」ということは心掛けてます。「この子はこういう歌声じゃないんじゃないか」「こういう声の出し方はしないんじゃないかな」と思ったら、別の方法を取る。キャラクターの世界観を守ることは、大切にしています。

――それをチューニングするときは、自分の中で調整をするんですか。スタッフの方とディスカッションをするんでしょうか。

前田:自分の中のジャッジです。もちろん、現場でスタッフさんに「今の、ちゃんと○○ちゃんに聞こえてましたか?」って聞くときもあるけど、自分の中に声レシピみたいなものがあって。この子は息の成分がこれくらいで……というのを、特に昔は声があまり安定していなかったこともあって、しっかりやってました。今は、「逆に外したほうがいいものができる」とも考えるようになってきたので、あえてそこまで気にしてなかったりもします。

――キャラソンならではの楽しさと難しさって、それぞれなんだと思いますか。

前田:昔、バンドで自分の歌を歌っていたからなのか、この業界に入って思ったのは、「わたしの歌には癖がついてる」ということでした。キャラソンを歌うときに、その癖があってはダメだ、それだと自分でしかない、と思って、1回全部捨てたんです。自分の中でこうやって歌うのが上手くなる、というノウハウを頑張って作ってきたけど、全部1回捨てました。一旦、全部プレーン状態にしたんです。そこからキャラクターとしての歌い方を、いちから勉強させてもらいました。

――全部を一旦プレーンの状態にするというのは、どういうプロセスなんですか。

前田:キャラの声だけで、自分の抑揚を全部取って歌ってみるんです。自分の中では「こうやったら気持ちいい」ってわかっていても、そこにブレーキをかける。そのときに、確実に「わたしが今までやってきた歌とは違う」って、見えてきたんです。それからは、ありがたいことに歌のオーディションがあるコンテンツにたくさん関わらせていただいて、合格することもできました。

――自分が気持ちいい、心地よい、歌いやすい、という方法ではダメなんだ、と。

前田:そうです。やっぱり、キャラクターとしての世界観を守らなきゃいけないし、自分が気持ちいい歌い方を出しちゃうのは、それしか表現がなくなってしまう、とも言えるし。同じことは、お芝居にも言えると思います。でもそれは本当に役の声なのか、役が言ってることなのかって考えるようになりました。自分じゃなく、ちゃんと役になれているのかなって。そこで、まず削ぎ落としていきました。

今は、キャラソンに関して表現に悩むことは少なくなってきました。キャラソンを歌唱していく中でも楽しいのはライブのステージに立ったときです。レコーディング中もそうですけど、その子になり切って、その子になったときに見えた感覚、ステージからの景色を見て生まれた気持ちが、「○○ちゃんはこういう気持ちだったんだ」ってわかる瞬間です。「その子にしか見えない」って言われたときは「やった〜」ってなりますし、「前田さんがその子になると完成度が高い」って言ってもらえると嬉しいです。

常に最高を更新して、本番が一番いいって思ってもらえるようにしたい


――作品関連のライブで、特に印象に残っているステージはありますか。

前田:いっぱいあります。全部印象に残っているけど、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』での1stライブは、ほんとにすごい景色でした。自分の中でライブのターニングポイントになったのは、そのときに披露した“オードリー”です。そのときはいろんな作品の稽古の期間が全部重なっている時期で、すごく大変だったんです。今まで自分が経験した中でも一番と言えるくらい。なんていうのかな、「負けるか」精神を発揮してまして。「とりあえず突破するわ、ここ」みたいな(笑)。

そのステージのあと、「前田さん、あのステージすごくよかった」って好評をいただいて。殻を破った瞬間でした(笑)。こんな気持ちが自分の中にあったんだ、みたいな。当時の忙しさと今でいうと、今のほうがありがたいことに忙しいと思いますけど、その時よりも心に余裕ができたように感じます。

今はこんなに身体を動かして、歌って、ができているのは、成長したなって思う瞬間があります。ライブを乗り越えるたびに、「逃げずに頑張ってきてよかった」「自分がやってきたことは間違いじゃないな」って思うし、ひとつひとつのライブに全部本気だから、全部がターニングポイントかもしれません。

――それだけ、万全の準備をして、常に集中力を高めながら臨んでいるわけですね。

前田:はい。「とりあえず突破する」と言いましたけど、楽しいし夢中だから、その領域に行けるんだと思います。だって、本気じゃないとそういう感情は出てこないし、「大変だ。どうしよう、どうしよう」ばかりになっちゃうから。アスリート……とは同じ感覚ではないかもしれないけど、何かの試合前みたいな感覚なんだと思います。自分の中でスーッて集中して、呼吸を整えて、自分の中のスイッチを入れて。やっぱり、常に最高を更新して、本番が一番いいって思ってもらえるようにしたいので!

下に続きます
前田佳織里(まえだ・かおり)
2017年、声優デビュー。代表作に、TVアニメ『アイカツスターズ!』『ウマ娘 プリティーダービー』『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』など。4曲入りの1st EP『未完成STAR』より、自身名義の音楽活動をスタート。
https://twitter.com/kaor1n_n
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