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芳根京子、常に“フルスイングの演技”で人々の心をつかんで離さない芝居の申し子

2023/04/12 06:10

芳根京子
芳根京子※2021年ザテレビジョン撮影

月9初主演を経て「日本アカデミー賞」新人賞


朝ドラ後すぐに日曜劇場「小さな巨人」(2017年、TBS系)に出演、映画「心が叫びたがってるんだ。」でのヒロイン役を経て、2018年1月期には「海月姫」で月9初主演。違うキャストで実写映画版が先に公開されていただけに、新たに実写化される作品に臨むことは相当なプレッシャーだったに違いない。それでも主人公の“オタク女子”を見事に体現し、ますます芳根京子ここにあり、を印象づけた。

そして同年9月に相次いで公開された映画「累 -かさね-」および「散り椿」での演技が評価され、2019年の「第42回日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞。受賞スピーチでは「どちらも逃げたくなるような高い壁だと感じていましたが、真っすぐ真正面からぶつからせていただいたからここに立てている」と語っていたように、全力で正面から芝居に向き合い、ぶつかって乗り越えるのが彼女らしさ。

それを裏付けるエピソードとして、翌2020年公開の映画「記憶屋 あなたを忘れない」で共演したHey! Say! JUMP・山田が、こんなことを語っていた。当時、初めて芳根と共演した山田は「芳根さんはすごいんです! 真希(芳根)が号泣するシーンで、何テークか撮ることになったのですが、芳根さんは毎回同じところで泣くんです! 僕が今まで出会ってきた女優の方の中でも、一番感情の揺さぶりが激しい人かもしれませんね」と。それを踏まえて、芳根のことを「化け物の類というか…悪い意味じゃないですよ!(笑)」と評するほど。

ただ、常に全力だからこそ苦しむこともある。特に印象深いのは、主演ではないものの準主役級の役どころで存在感を発揮した、2021年公開の映画「ファーストラヴ」(ディズニープラスほかで配信中)だ。同作は、アナウンサー志望の女子大学生が父親を刺殺するという衝撃的な導入で始まる、直木賞作家・島本理生の同名小説を原作としたサスペンスミステリー。

芳根京子
芳根京子※2021年ザテレビジョン撮影

フルスイングだからこその苦心


「探偵の探偵」(2015年、フジテレビ系)以来の共演となる北川景子が主演を務め、ヒットメーカー・堤監督がメガホンを取り、脚本を浅野妙子が手掛けた。芳根は真意のつかめない言動で相手を翻弄(ほんろう)する父親殺しの容疑者・聖山環菜役。それまでもさまざまな顔を見せてきた芳根だが、本心を読みにくく感情の起伏が激しい容疑者を熱量たっぷりに演じた。この作品で取材した際に、芳根は「ここまで感情を持っていかれる役に出会えることが奇跡だと思うし、あらためてお芝居が楽しいなと思った役。ここから自分の人生が変わるだろうなと感じています」と明かし、作品が終わった後も少し感情を引きずるほど、大きな影響を受けたという。

涙を流すシーンも印象的で、堤監督は芳根について「役に憑依するとは彼女の事だ。撮影のシステムも熟知していて狙った場所で狙った以上の演技をする。まさに天才。涙の魔術師」と絶賛。共演した北川も「何回やっても…ピッて(スイッチを)押したらいっぱい涙が出るのかなっていうくらい、たくさん涙が出るし。もうちょっと力加減をしていいよ、って思うくらいアクリル板をたたくシーンも全力でたたくし、本番が終わるごとにいろいろなところを冷やしたり、あざを作ったりしながらも全力投球していて、すごい女優さんだなって思いました」と評している。

他にも「大江戸グレートジャーニー 〜ザ・お伊勢参り〜」(WOWOWプライム)で全力の“泥酔演技”を披露したり、「真犯人フラグ」(日本テレビ系)では終盤まで怪しい“犯人フラグ”を立てまくったり、映画「Arc アーク」では不老不死の女性を体現したり、「コタキ兄弟と四苦八苦」(テレビ東京系)、「コントが始まる」(日本テレビ系)や「半径5メートル」(NHK総合)でも印象的な演技を披露。

実写作品のみならずアニメーション映画「ボス・ベイビー」の第1弾、第2弾や劇場アニメ「ぼくらの7日間戦争」での声の演技、ドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」(フジテレビ系)のナレーションでも違った顔を見せている。

当メディアでの“オモコー”連載以来、8年にわたって毎年個別取材をさせてもらっているが、周囲の取り巻く環境が変わっても、いい意味で変わらず、主役級のキャスティングが増えても決しておごらず、決して手を抜かず、主演作の会見でも最初のあいさつは「芳根京子と申します」を貫く謙虚さ、律儀さ。それでいてSNSを開けば無邪気な投稿であふれているギャップ。新ドラマで共演する常盤貴子も「願わくばこれからは、京子ちゃんがずっと笑っていられる世の中であってほしい(笑)」とコメントしていたが、周囲の人間のハートを自然とつかんでしまうピュアさも併せ持つ。

これからも彼女の元気の源である仲良し家族とのまったりタイム、そして大好物の「みっちゃんのトマト」やラーメンをしっかり摂ってもらいつつ、芳根が常にけれんみのないフルスイングの演技を見せてくれる世の中であってほしい。

◆文=ブルータス・シーダ(STABLENT LLC)

※「ラスト・シンデレラ」の「・」はハートマークが正式表記

芳根京子
芳根京子※2019年ザテレビジョン撮影
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