コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、突然母を亡くした反抗期男子の無念さや後悔を描いた漫画『閉じられた弁当箱』をピックアップ。
作者の吉良いとさんが3月17日にTwitterに投稿したところ、1.8万以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、吉良いとさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
当たり前なんてない…反抗期の少年に突然訪れた母の死に「立ち直れない」
反抗期真っ只中の少年・ヒロトは今日も母が作ったお弁当を食べないまま帰宅していた。女手一つで育ててくれている母が作る冷凍食品ばかりのお弁当に飽き飽きしていたのだ。しかし、そんな日常が一変した。母が通勤途中に事故で亡くなったのだ。
母が作ってくれた最期のお弁当も食べないままのんきに過ごしていた自分を責め、母の死を引きずる資格すらないと一人泣き崩れていた。すると、葬儀屋さんが「唐揚げ、覚えてます?」と一言。母の作る冷凍食品ばかりのお弁当だったが唐揚げだけは手作りだったのだ。
唐揚げを手作りしていた理由が「幼い頃の貴方が世界一大好きだと言ったから」ということを聞いたヒロトは…。
幽霊が視える葬儀屋さんが語る"母のお弁当に込められた真実"を通してをつながる親子の絆を描いた本作。Twitter上では「泣いた」「涙で前が見えない」「グッときました…」「なるべく早く帰省して実家飯食ってこよう」「当たり前なものなんてないのね」「めっちゃ良き…」など多くのコメントが寄せられている。
「キャラクターの感情が大きく動いた時の表情を大事に描く」 作者・吉良いとさんが創作の裏側を語る
――『閉じられた弁当箱』のお話を描こうと思ったきっかけや理由があればお聞かせください。
「幽霊が視える葬儀屋さん」シリーズの新しいお話を描くにあたり、自分の「後悔」を振り返りました。そしてふと、中学生時代の所謂反抗期の時を思い出したんです。
意味もなく母にあたったり、傷つけたりしてしまっていたな、と。それでも、お弁当を用意して持たせてくれて…。それなのに私は「ありがとう」をちゃんと言えていませんでした。今回「親子とお弁当」をテーマにしたのは、そんな当時の私を反省させたかったから…かもしれません。
――本作では、亡くなった母が作るお弁当の”真実”を知ったヒロトの表情をはじめ、素直で繊細な表情描写が読者を惹きつけているようにお見受けします。作画の際にこだわった点や意識した点はあるのでしょうか。
キャラクターの感情が大きく動いた時の表情はとても大事に描いています。特に目の描写はいつも一番気を使っています。泣き顔を描くことが多いのですが、キャラごとに泣き方って違って。
「ヒロトはちょっと我慢した感じで泣きそうだな」と思い、眉間に皺寄せたり口をキュッとさせたりしていました。
――本作の中で、吉良いとさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば理由とともにお聞かせください。
漫画終盤でヒロトの母親が、「大好き」と語るシーンが自分の中で特に好きです。
今までひどい態度をとったヒロトに対して、怒るでもなく泣くでもなく、ただ笑顔で「ああ、やっぱりヒロトのことが大好き」と安心した顔で最期を迎えた母親。その姿は描いている作者でも胸に来るものがありました。
――幽霊が視える葬儀屋さんシリーズでは、死者の声を伝達することによって残された者と通じ合えるというハートフルなストーリーが印象的です。物語を創作するにあたってどのようなところから着想を得ているのでしょうか。
人は誰しも「後悔を残すことなく死にたい」と願っています。でも死はあまりにも突然で、ほとんどの人はその願いは叶いません。
だけどもし、亡くなった後も後悔を晴らせることができたとしたら…。すれ違った親子、本音を隠した親友同士、信頼していた仲間…「幽霊が視える葬儀屋さん」なら、願いを叶えることができるんじゃないか…?と思い至ったのが「葬儀屋さん」シリーズの始まりです。
――吉良いとさんの今後の展望や目標をお聞かせください。
商業誌でのお仕事もやりつつ、同人誌やTwitterでの漫画も描き続けたいと思っています。いつか自分の描いた作品がメディア化されて、新しい命が吹き込まれる瞬間を見るのが目標です!
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
いつも作品をお読み頂き有難うございます!ご感想や反応を頂ける度に嬉しくて、「次も頑張ろう!」と活力になっています。これからもいろんな漫画を描き続けていきたいです。よろしくお願いいたします!