コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回ピックアップしたのは、漫画家やイラストレーターとして活動するツルリンゴスターさんが描いた『母の七回忌(明るいです)』だ。同作は作者が母の七回忌をおこなうために、奔走している様子が描かれた一作。題材として珍しいためか、多くの人から注目を集めて、3.6万件の「いいね!」を獲得している。
ドタバタながらも実施にこぎつけた七回忌!
同作の作者であるツルリンゴスターさんはコロナ禍ということもあって、母の七回忌をおこなうか迷っていた。母は生前に「死んだ後はなんもせんでええ」と言っていたが、ふと気が向いて七回忌の実施を決意する。
まず取りかかったことは自宅の整理で、仏間の不用品を処分。そして法事の手土産をリストアップもしていたが、不意に自宅の小さな庭がボロボロだったことを思い出す。庭の手入れに励んでいるうちに、あっという間に法事の前日に。バタバタしながらも準備を進め、当日には何とかご住職と客人を迎え入れる。
法要も無事に終わると、ツルリンゴスターさんは住職に予め用意していた赤いろうそくを「いつ使うのか?」と質問。すると住職は「朱色というのが一応おめでたいという意味があって」と答え、めでたい理由について説明していく――。
大変なことが多い七回忌の準備を無事に終えたツルリンゴスターさんには、労いの言葉が続出。例えば「お疲れ様でした!温かい気持ちになりました!」「本当に良い法要ですね。素晴らしい!」といった声が相次いでいる。
多くの反響が寄せられた『母の七回忌(明るいです)』ですが、早速ツルリンゴスターさんに同作を描いたキッカケなどを伺った。
作者の心を軽くした母の「何もしなくていい」という言葉
――「母の七回忌(明るいです)」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
普段法事というものに関わることがないので準備自体が新鮮で、記録として漫画にしようと思いました。
また法事に来れなかった親戚や母の関係者にも、SNSで目にとまったら報告になるかもという気持ちで発信しました。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
法事といえば面倒くさいもの、義務的なものというイメージもあると思いますが、前向きにやってみたエピソードの一例として読んでもらえたら嬉しいです。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
ご住職の朱ろうそくに表れる死の捉え方のお話が心に残っていたので、そこが気にいっています。
あとは準備段階で大型の不用品を処分したり新しい草花を植えたりというところが、「法事」と結びつかないようでも大事というか、家を整えることで自分の気持ちも整うので、そこが描けて良かったなと思います。
――私はこれまでに住職さんを自宅に招いた経験はないのですが、ツルリンゴスターさんが実際に法要のために招待して、初めてわかったこと、作中では描き切れなかったエピソードなどあれば、ぜひ教えてください。
実はお寺さんやお墓のシステムは私もよく知らなくて、祖母が檀家なので私もそのおこぼれに預かることができてるんだと理解しています。
日程を組むタイミングや、仏具の何が必要でお茶を出すのはいつか、手土産のルールや熨斗の種類など、やってみないと知らない作法というのはたくさんあって、そしてその時にならないと誰も教えてくれないんだなあと実感しました。
でもそういう作法ができていなくても、故人を思う場を作りたいという気持ちがあれば間違えていても誰も怒らないし、そもそも母が「何もしなくていい、お経よりドリカム(DREAMS COME TRUE)をかけてほしい」と言ってくれていたのが何より心を軽くしてくれていたと思います。
――「七回忌」の計画・実行・終えた後のすべてを振り返ってみて、率直な感想を教えてください。
準備は大変でしたけど私と親戚の母に対する気持ちの一区切りになったのでやって良かったです。
ただ毎年となるときついので、三回忌、七回忌、十三回忌…と間隔が適度にあいてくれるのは、こちらの気持ちに寄り添ってくれていて流石よく考えてあるなと実感します。
また今回投稿したことでたくさんの人が感想と共にご自身のエピソードをのせてくれたのですが、それを読んでいると、みなさん日々の生活をしながらそれぞれ死別を経験されていて、なかなかそういうのを表に出す機会ってないと思うのですが、私の投稿への感想と一緒にご自身の死との向き合い方を少しずつ吐露して下さっていて、それを読ませていただくと共感というか、「死」というものは悲しく辛いものではあるけれど、同時に隣にある、生活の傍にあるものなんじゃないかなという気になるというか。そういう気持ちにさせていただきました。
――話題が大きく変わってしまい恐縮なのですが、ペンネームの「ツルリンゴスター」は元ビートルズのメンバーであるリンゴ・スターが関係しているのでしょうか?
そうです。学生の頃にアルバイトをしていたカフェの店長夫婦が音楽をやっている人で、店でたくさんレコードをかけていました。そこにビートルズもよくかかっていて、カフェのお客さんに書いてもらう感想ノートに勝手に4コマ漫画を連載していたんですが、そこで適当につけたペンネームが“ツルリンゴスター”で、そのままここまで来ました。
――今後の展望や目標をお教えください。
今回のような日々のエッセイはずっと続けていきたいです。毎日矢のように過ぎて行ってしまうので、「これは描き留めておきたい気持ちだな」という出来事に出会ったときは描いて発信して、共感してもらったり、コメントを読んで新しい考え方や見方に出会えるのはとても貴重な経験です。
他に創作漫画で連載をしているので、そこではエッセイでは描けないメッセージをのせたり、自分が何を大切にしているかを表現していけたらと思います。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
いつも私だけでなく、私の家族やそのまわりの人まであたたかく見守ってくださり、どの方も言葉を選びながらコメントをくださっていて、読み手の方の思慮深さに支えられて作品が進んでいると感じています。ありがとうございます。今後も心に触れられるような作品作りができるように頑張りますので、よろしくお願いいたします。