あのヒットメーカーの頭の中はどうなっているのか? あれこれと才能が湧き上がるのはなぜか? 世界の頂点に立つシンガーソングライターの1人、エド・シーランの人生と、ヒットを生み出す裏側を描いたドキュメンタリー「エド・シーラン:THE SUM OF IT ALL」が5月3日に配信された。先行公開されている予告編を見ると、ライブで大観衆を熱狂させる姿に加え、1人の家庭人としての姿、友人と交流する風景などもたっぷり収められているようだ。その予告編では、彼がコンプレックスを告白する場面があることにも驚かされた。4度のグラミー賞に輝き、2017年には大英帝国勲章5位を受章している超大物なのだから、100%以上の自信にあふれていても不思議ではない。だが、「このドキュメンタリーは、彼の繊細な一面に思いっきり迫ったものになるに違いない」、約3分の予告編を体験するうちにそれを確信し、いっそう本編が楽しみになった。
幼少期から音楽に親しみ
生まれたのは、イングランド北部のハリファクスという街。4歳から教会の聖歌隊で歌い、両親が芸術に造詣が深かったこともあって、クラシックやロックなどさまざまな音楽に親しんだ。11歳で作曲を始め、その後ロンドンに拠点を移して16歳の頃から自作自演の活動を始めている。一時期は路上生活をしながら、最初はもちろん数人、十数人の前でのライブだったと思われるが、楽想はすでに輝きを放ち始めていたのだろう、2011年にアルバム『+』およびシングル「Aチーム~飛べない天使たち~」(原題:The A Team)をリリースすると大きな注目を集め、耳にした「麻薬に溺れる少女の話」に題材を得たという後者は全英チャートの3位まで上昇した。
日本でも、この曲や、2013年公開の映画「ホビット 竜に奪われた王国」に「アイ・シー・ファイア」が使用されたことで大きくブレイク。ファレル・ウィリアムス(2014年に「ハッピー」が大ヒット)らをプロデューサーに迎えた2014年のアルバム『×(マルティプライ)』は全世界的なヒットとなった。また、2016年にはエリック・クラプトンの日本武道館公演に飛び入りし、ベテランのロックファンにも強く存在を印象付けた。
アルバム『÷ (ディバイド)』が大ヒット
“足し算”(+)、“掛け算”(×)に続くアルバムは“割り算”だった。2017年のアルバム『÷ (ディバイド)』は、英国内における男性ソロ・アーティストの初週セールスでは歴代最高の記録を示したと聞く。また、「シェイプ・オブ・ユー」はキャリアで初めて全米シングル・チャートの1位に。2017年から2019年まで続いた『÷ Tour』の日本公演は東京ドームで行われた。2019年には『No.6 Collaborations Project』、2021年にはアルバム『=』をリリース、そして来たる5月5日(金)には新作『-(サブトラクト)』も発売。テイラー・スウィフトの仲立ちで知り合ったアーロン・デスナー(ザ・ナショナル)を創作のパートナーに迎え、“自らの作詞作曲の限界に迫った”と伝えられる作品だ。6作連続全英No.1アルバムの新記録は、たやすく成し遂げられることだろう。
いくら才能に溢れていようと、親しみやすさを持っていなければ、多くの人々を引きつけることはできない。その点、エド・シーランは親しみやすさに富んでいる。「ときにファルセットを用いた優しく、力強い歌声」「日常の風景から社会問題まで、幅広いテーマを持つ歌詞」「バラードでも、リズムの利いたヒップホップ風の曲調でも、崩れることのない“メロディーの強さ”」こうした「音楽表現の普遍」を身に付けているアーティストは、強い。
『-(サブトラクト)』を聴いてからディズニープラスで配信中の「エド・シーラン:THE SUM OF IT ALL」を見るか、「エド・シーラン:THE SUM OF IT ALL」を見てから『-(サブトラクト)』を聴くか。エド・シーランのファンにとって、心からうれしくなる5月がやってきた。
◆文=原田和典
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/ed-sheeran-the-sum-of-it-all/
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