上川隆也「遺留捜査」に再び“やさしい風”が吹く!
幅広い役柄を演じ分け、老若男女に愛され続ける名優・上川隆也の“ライフワーク”ともいうべき人気ドラマシリーズ「遺留捜査」(テレビ朝日系)。
同ドラマは、事件現場に残された“遺留品”が持つ意味を徹底的に探り、声なき遺体が訴えたかったメッセージを代弁する刑事・糸村聡(上川)の活躍を描く。糸村がただ事件を解決するだけでなく、遺族の心情に寄り添う優しさと、マイペースで空気を読まない一風変わったキャラクターで、視聴者をとりこにしてきた。
これまで連続ドラマ3シーズン、スペシャルドラマ4本を6年にわたって放送されてきたが、前作からたった2年しかたっていないのに久しぶりの感さえある。それくらいハイスピードに物語を重ね、テレビ朝日の“十八番”である刑事ドラマシリーズの仲間入りを果たした。
今回は、初めての放送枠となる木曜ミステリー枠への引っ越し、主人公・糸村も長らく籍を置いた月島中央署から京都府警へと異動するが、どこかしっくりくるのは、糸村の持つどこにでも溶け込みつつ、どこにも染まらないというキャラクターが故だろうか。
本作が産声を上げたときのコメントから、上川は「警察組織の一捜査員という枠にはまらない糸村という人物は、どこか『風』のような男」と見事に人物像を分析していたが、確かに風のようにわれわれの前に現れ、ドラマが終わるとス~っと風のように去り、また新たなシーズンが始まると風とともにやってくるのが糸村という男だ。
良くも悪くも個性的なキャラクターにもかかわらず、ひとたび現場を離れると糸村のキャラクターに引きずられることはないという上川。そのため“糸村に戻る瞬間”についても、毎回取材のたびに「いつも、ごく自然に糸村が目を覚ます」と表現している。
今回もすっと目を覚ました糸村の「遺留捜査」。この作品を語る上で忘れてはいけないのが、連続ドラマ第3シーズンの「やさしい風が吹いたら」以降、スペシャル版4作もずっとテーマ曲としてドラマを後押ししてきた小田和正の歌声だろう。
そんな小田が、このたび連続ドラマとして復活したこの作品の主題歌に起用された。小田にとって連続ドラマの主題歌を担当するのは今回で14作品目で、木曜時代劇「吉原裏同心」(2014年、NHK総合)以来3年ぶりだそう。
新たに主題歌「小さな風景」を書き下ろすことになり、小田は「いなくなってしまった人との思い出を懐かしくたどるだけでなく、自分の知らないその人もきっとどこかにいたのだろうと思う気持ちに触れたかったのです。
それが『君の心の中の 小さな風景』になりました。小さな風景はいくつもあるんだと思います。この曲はできるだけ言葉数を少なくと初めから考えていました。短く印象的な歌にしたかったのです」とコメントを寄せている。
以前、「やさしい風が吹いたら」が主題歌に起用された際に「小田さんに曲を書いていただけると伺った時にも驚きを隠せなかったのですが、完成した曲を聴いたら、『遺留捜査』の全てが包括されているようなストーリー性のある曲で、かなり胸に迫りました」と喜んでいた上川。
再び小田が「遺留捜査」に“やさしい風”を吹かせてくれることになり、あらためて「小田さんの優しい歌声が物語とシンクロして、登場人物の心情に重なる瞬間が、またやって来ます。変わっていない事をちりばめて、しかし大きく変わった今回の『遺留捜査』、ぜひ御覧ください」と、思いをはせた。
また、上川と共に6年にわたって本シリーズを支えてきたテレビ朝日の三輪祐見子ゼネラルプロデューサーは「エンディングに、今や欠かせないもの。それは“小田和正さんの主題歌”です。今回、京都を拠点に新たに生まれ変わる2017年の新『遺留捜査』に、新たな優しい空気を吹き込んでいただきたく、無謀にも新曲をお願いしてしまった次第です。なんと快諾してくださり、本当に感謝しております」と、小田の起用について明かした。
満を持してやってくる「遺留捜査」の新シリーズ。上川扮(ふん)する糸村のマイペースで変わらないキャラクターに、裏の裏のそのまた裏をかくような研ぎ澄まされたミステリー性、そして小田による優しい歌声のハーモニーが、この夏、日本に熱く心地よい風を運んでくる。