コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、周囲の目を気にしがちな思春期ならではの甘くてほろ苦い恋愛模様を描いた漫画『人の目を気にする男の子がエスカレーターで想いを叫ぶ話』をピックアップ。
作者であるじゅーぱちさんが4月18日にTwitterに本作を投稿したところ、1.2万を超える「いいね」が寄せられ反響を呼んでいる。本記事では、じゅーぱちさんに作品のこだわりなどについてインタビューをおこなった。
周囲の目と自分の気持ち。思春期ならではの葛藤を描いた本作
友達に女の子を紹介すると言われカフェに来た翔太は、高校生には見えない幼い雰囲気の女の子・くるみと出会う。はじめは会話に困る翔太だったが、アニメキャラのキーホルダーを落としたことをきっかけに、同じアニメが好きという共通点を見つけ徐々に意気投合していく。
その後、一緒に出かけたり家で一緒にアニメを見たりするうちに翔太はくるみの優しさやかわいらしさに惹かれていくのだった。しかし、学校で「あのイモ女と付き合ってんの?」などとからかわれたことでくるみと距離を置くようになってしまう。実は翔太は昔から人の目を気にしすぎる性格だったのだ。
そんなある日、駅のエスカレーターで翔太とくるみはすれ違うことになる。くるみに謝りたいのに伝えられない自分の臆病さや周囲からの目を言い訳にする自分の卑怯さに嫌気が差した翔太は勇気を出してくるみの方を振り返り…。
周囲の目線と自分の気持ちに葛藤する思春期ならではの恋愛模様を描いた本作。Twitter上では、「グッとくる」「知らない間に涙が…」「どストレートに心に響く」「心がほっこりする」などのコメントと共に「昔の自分に読ませたい」「昔の自分を思い出した」など過去の自分と重ね合わせたコメントなども寄せられ、話題を集めている。
「親しみやすさや分かりやすさを意識した作画を」作者・じゅーぱちさんへのインタビュー
――『人の目を気にする男の子がエスカレーターで想いを叫ぶ話』のお話を描こうと思ったきっかけや理由についてお聞かせください。
高校生の時、アップルパイを焼いて家に彼女が遊びにきてくれたのは実体験です。ただ、現実の自分は同じグループの友人に「かわいくない」だの「あの子はない」だのと彼女のことを色々悪く言われて、その後別れてしまいました。当時は自分の弱さ、自信のなさから、周りの意見や視線によく振り回されていました。色々な恋愛の失敗があったからこそ、今は妻と出会えたのだと思いますが、それでも当時は本当にバカなことをしてしまったと、あのまま彼女との関係を大切にしていたらもっとすてきな高校生活だったんじゃないかとふと思います。
当時は気付かなかったけれど「誰かに笑われた恋」も本当はすてきな物で、多感な思春期は誰かの意見や視線に振り回されがちですが、自分にとって本当に大切なことは周りの目なんて気にしないでと自分の子供や当時の自分に読んで欲しいような気持ちで描いた漫画です。
エスカレーターをシーンに使ったのは、妻と出掛けていてエスカレーターに乗っていた時に妻が旧友と出会ったのですが「あー…」とお互い手を振ることしかできず、無情にもどんどん離れていく感じが恋愛漫画に使えたら面白い感じに演出できるんじゃないかと感じたのがきっかけです。
――周りの意見を気にしすぎる翔太と年齢の割に幼く素朴なくるみ、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
主人公の翔太は高校生の頃の自分自身(を、もっと誠実にした感じ)で、くるみの方は手作りのアップルパイを作ってくれるシーンは最初から決まっていたので、そんな素朴で純粋な雰囲気が似合う女の子にしました。
――本作の中で、じゅーぱちさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば理由とともにお聞かせください。
ラストシーンの「君と一緒いられるなら、そんな事どうだっていいんだ」です。
伝えたいことの全てはここにあると言ってもいいくらいで、「アップルパイおいしかった」と人目もはばからずに叫んだ主人公の翔太は意地悪なことを言ってくる女の子に目もくれず走り出します。ひどいことを言われたら腹も立ちますし、言い返したくもなります。でも、大切なのはくるみへの気持ちに正直になること、気持ちを伝えること、ちゃんと謝ることで、どんな悪口も雑音も視線も誰にどう思われようが「そんな事どうだっていいんだ」と翔太は気付きます。
普段から生きていたら色々な視線や雑音が自分を縛り付けてきます。もちろん時には周囲の視線や言葉をちゃんと気にすることも大切です。でも、それで大切なことを失うのなら「そんなどうだっていいんだ」。バカにしてくる人なんて、きっとたいして深く考えていません。そんな事どうだっていいと気付いた翔太は、次の日学校でバカにされても「お前が見る目ないだけ」と笑って返しているかもしれません。
――じゅーぱちさんは漫画創作以外にもイラストレーターとして心温まる絵を多く描いていらっしゃいますが、作画の際に意識していることやこだわっていることなどがあればお聞かせください。
元々は作家というよりも教育関連やビジネス向けのイラストや漫画を多く手がけていたので、親しみやすさや分かりやすさを意識して描いています。あとは、特に一枚のカラーイラストはできるだけ直線ツールなどは使わずにフリーハンドで描いていて、そうすることで柔らかい雰囲気になり、温かみを感じてもらえるように意識しています。
あとは、インコと暮らしていて鳥が好きなので、作中に必ず鳩や鳥が登場します。一枚イラストをSNSで投稿すると「鳩見つけましたよ」とリプをくれる人もいてちょっと嬉しかったりします(笑)
――じゅーぱちさんの今後の展望をお聞かせください。
最近は漫画に力を入れていますが、漫画制作をメインに切り換えるわけではなく、今後もイラスト制作と漫画制作の両輪でやっていきます。
創作漫画を描き出したのは、もっと色んな感情を描きたいと言う気持ちと、仕事としてのスキルを伸ばしたいと言う気持ちがありました。今回の漫画も「読みやすい」「優しい絵柄」とおっしゃって頂けたことも多く、そういった面を活かして教育関連をはじめ様々なジャンルでのイラスト制作や漫画制作のお仕事をどんどんやっていきたいと思っています。
創作漫画やオリジナルのカラーイラストは心のバランスを取るためにもとても大切なので、これからも時間を作って積極的に描いていきます。機会あれば同人活動などもしてみたいですし、楽しみながら制作していきたいと思います。
――最後に作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
ひとりで創作しているとある日は自分の作品が良く見えても、翌日には「こんな漫画誰か読むんだろうか…」と突然負の感情に飲まれてジェットコースターのように感情がアップダウンを繰り返します。今回の漫画も時間をかけた分、公開する時は怖い気持ちも大きかったですが、たくさんの人に読んで頂けて「涙が出ました」とか「心温まりました」とか「昔の自分に読ませたい」とか、たくさんの人にすてきな感想を頂いて、とても報われた気持ちでした。自分の作品が誰かの心を少しでも動かせたのなら、こんなにも贅沢で幸せな事はないと思います。
SNSが世の中に浸透して、誰かの目に見える大成功や誰もが羨むような幸せが見えてしまい、つい自分と比べてしまいがちな世の中ですが、誰かに笑われた恋もきっとすてきな物だとそんな等身大の自分の思うハッピーエンドの物語をこれからも描いていきたいと思います。
作品をご覧頂いた方々、本当にありがとうございます。これからもたくさん作品を描き続けていきますので、またご覧頂ければとても嬉しいです!