「勇者ヨシヒコ」シリーズ(2011年、2012年、2016年テレビ東京系)や、「スーパーサラリーマン左江内氏」(2017年日本テレビ系)など、ユニークな設定のエンターテインメント作品を作らせたら右に出る者なしの福田雄一が、「週刊少年ジャンプ」の人気コミック「銀魂」の実写版映画で脚本と監督を担当。笑いあり、涙あり、痛快アクションありと、面白さてんこ盛りの内容で、日本映画界に新たな伝説を作り上げることになりそうだ。今でも「KinKi Kidsのブンブブーン」(フジ系)など、バラエティー番組の放送作家としても活躍する福田氏が、脚本家、そして映画監督の道を歩むことになったきっかけや、個性的な俳優の競演が楽しい“福田ワールド”の秘密について語ってくれた。
自分の中で決心がついた最終的な材料は、妻の浪費癖でした(笑)
――福田監督は、もともとバラエティー番組の放送作家として活躍されていたわけですが、ドラマや映画の脚本を書くようになったきっかけは?
「島本和彦さんの原作を映画化した『逆境ナイン』(2005年)の脚本を書いたことが、僕にとっては大きな転機になったと思います。僕は大学生のころから島本さんの大ファンだったんですけど、なかなか同じ趣味を持つ人が周りにいなくて(笑)。で、本当に偶然なんですけど、『うわー、島本和彦好きなんですか?』って意気投合したのが、羽住英一郎監督だったんです。『ギンザの恋』(2002年日本テレビ系)というドラマの脚本を書かせてもらってるときだったんですが、そのときに羽住さんが『今度は「逆境ナイン」を映画にしましょうよ』って言ってくれて。まだ企画も通っていない段階で、僕は脚本を10稿ぐらいまで書いて、キャスティングまで決めちゃってるという、かなり無謀なやり方だったんですけど、結局映画化が実現したんです」
――まさに力技ですね(笑)。
「そうですね。とりあえず、外堀から埋めていった感じですかね(笑)。実はそのころは、僕が放送作家として一番忙しかった時期で。レギュラーを12、3本ぐらい持ってたのかな? 羽住さんとの打ち合わせも、なかなか時間が決められないくらいだったんです。それで、脚本を脱稿した後ぐらいですかね、羽住さんから『福田さんは最終的に何がしたいの?』って聞かれたんですよ。で、僕が『ドラマや映画の脚本を書きたいです』と答えたら、『だったら、今のままでは無理でしょ』と。これからも脚本を書きたいのであれば、仕事を今の半分に減らして待機している状態を作らないと厳しいよ、とアドバイスをいただいて。でも、そのころは放送作家として、正直、自分でも引くぐらい収入が多かったし、結婚して子供もいたから、すごく悩みました」
――悩んだ末の結論は?
「自分の中で決心がついた最終的な材料は、妻の浪費癖。いくら稼いでもどうせ全部使われるんだったら一緒かなって(笑)」
――すごい理由ですね!!
「うちの妻は恐ろしく金遣いが荒いんですよ。あのころ、相当儲かってたはずなんだけど、気づいたら貯金が1円もなかったですからね(笑)。そのときに、どうせなくなるなら、どうでもいいや、好きなことをやろうって思えたんです。結果的に、座付き作家として関わっていた極楽とんぼやココリコ、(堂本)剛くんの仕事以外は全部断りました。
すると驚いたことに、仕事を整理した途端に連ドラの話が舞い込んできて。それが『独身3!!』(2003年テレビ朝日系)です。あの作品には、当時共同テレビジョンに所属していた森谷(雄)さん(※ドラマ・映画プロデューサー)が関わっていて。そこから僕の初監督作品『THE3名様』シリーズ(2005~2009年、DVD作品)につながっていくんです。僕を最初に監督として使ってくださったのは森谷さんですから。そう考えると、同じ島本和彦好きの羽住さんに出会って、『逆境ナイン』に参加できたことは、本当に大きなターニングポイントだったと思います」