かっこよさと面白さ。この二つは絶対に外したくないですね
――福田監督がドラマや映画を作るとき、常に心掛けていることは何でしょうか?
「いつでも『けしからん!』と言われることを目標にしてます(笑)。とにかく、かっこよくて面白いものに惹かれるんですよね」
――「かっこいい」だけではダメなんですね。
「はい、かっこよさと面白さ。この二つは絶対に外したくないですね」
――その志向は、子供のときに見ていたテレビ番組が影響していたりするんでしょうか?
「テレビの影響もあると思いますよ。かっこよくて面白いキャラクターと言ったら、やっぱり『ルパン三世』(1971~1972年ほか日本テレビ系)ですよね。(峰)不二子に振り回されっぱなしで情けないのに、いざとなったらすごくかっこいい。『あぶない刑事』(1986~1987年日本テレビ系)もそう。“あぶデカ”は僕の中で刑事ドラマの金字塔ですよ。普段はふざけている2人が、決めるときはしっかりと決める。僕が作るものも、どこかでその落差を求めているんだと思います。その意味では、今回の映画『銀魂』の主人公・銀時(小栗旬)も理想的ですよね。普段はダラダラしてて、金目のモノに目がない、どうしようもない侍なんだけど、戦ったらめちゃくちゃ強い、という」
――では、「銀魂」の原作コミックも好きだった?
「実は読んだことがなかったんですよ。もちろんとても人気のある漫画だということは知ってましたけど。でもあるとき、うちの高校生の息子が、『「銀魂」を実写化するなら、監督は「勇者ヨシヒコ」の福田雄一がいいんじゃないか、ってネットで盛り上がってるらしい』と教えてくれて。だから、『ヨシヒコ』の世界観に通じるものがあるんだろうなとは思ってました」
――人気のある原作を映画化するということで、プレッシャーはありましたか?
「もちろん、原作ファンの人に怒られるようなものができちゃったらイヤだし、映画がコケたらみんなに悪いし。それなりにプレッシャーは感じていました。今回は、製作費もたくさんもらえたし、キャストもかなり豪華なメンツがそろいましたから、正直どうしようかなと。ただ、僕は普段からあんまり事前にプランを練らないタイプで。今回は、クランクインの前の日に考えたんですよね、どうやって撮ろうかって(笑)」
――それで結局、どのようなプランを?
「結局、全然考えがまとまらなくて(笑)。だからクランクイン当日は、朝出掛けるときから緊張してたんですけど、そんな僕の様子を見ていたうちの奥さんが『雰囲気がいつもと違うやん』と声を掛けてきて。『バジェットもでかいし、そりゃ緊張するよ』って答えたら、奥さんが『「ヨシヒコ」と似てるって言われて始めた企画なんだから、「ヨシヒコ」と同じ感覚で撮ってくればいいんじゃない?』って言うんですよ。その瞬間、ものすごく気持ちが晴れましたね。『そうだね、そうじゃないと「銀魂」に対して失礼だよね』とか言いながら(笑)。でも本当に、あの一言で気持ちが楽になって、ふざけるところはとことんふざけて、真面目にやるところは徹底的に真面目な感じで作っていく、という『ヨシヒコ』と同じような感覚で撮ることができるようになりました」