コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、世の厄介者を悪魔がド正論を振りかざしながら抹殺していく新感覚ホラー漫画『悪魔の論破 ~信じてはいけないあの娘のために~』をピックアップ。
作者である洋介犬さんが5月12日にTwitterに投稿したところ、8,200件を超える「いいね」や、470万インプレッションを獲得し反響を呼んだ。この記事では、洋介犬さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
風刺とホラーが盛りだくさん!悪魔が振りかざす過激な正論は"現代のワクチン"となるか
「特別」コンプレックスを持った女子高生・蝉庵(せみあん)カラが喫茶店で怪しげな男の「キミは特別」という言葉に流され騙されそうになっていると、背後から誘い文句をことごとく論破する悪魔が現れる。悪魔にド正論を振りかざされ全てを見透かされた男は抜け殻のようになって去っていくのだった。
この悪魔の正体が喫茶店にいたクラスメイトでありカルト教団の元『神様』・降雛初(ふりひなうい)だと気付いた蝉庵だったが、実は蝉庵は人の触れてほしくない部分をド正論で刺して人を囁き殺す悪魔・パヴズに憑依されていたのだ。
悪魔・パヴズの手によって自身のカルト教団は解体され、学校にも通いづらくなった初。学校では腫れもののように扱われ、無視される日々が続いていた。そんな初に初めて救いの手を差しのべたのは事情を知っている蝉庵で、悪魔の過激なド正論に立ち向かっていくのだった…。
現代社会にはびこる見せかけの論破や自己満足の正論から騙されずに生き抜くためのバイブルとも言える本作。Twitter上では「人間の嫌なところをついてるな」「考えさせられる」「人間の悪意を叩きのめすの快感」「すさまじい世界観」「切れ味すごい」など反響のコメントが寄せられ、話題を集めている。
読み終わった後にも思い出して考えられるように 作者・洋介犬さんが語る創作の背景とこだわり
――『悪魔の論破』を創作したきっかけや理由についてお聞かせください。
きっかけはかねてから「憑依もの」のホラーをやりたいという志があり、いくつか原案のようなものは存在していました。それも大本は映画『エクソシスト』が大好きで、そのオマージュをぜひやりたいという気持ちからです。
そこに今まで培ったホラーのテクニックと社会風刺のエッセンスを合体できるのでは?そうすればこれは集大成作品となるのでは? と思い今回作品化させていただいております。
――本作では、正論ばかりを突きつけて自尊心を失わせる悪魔のキャラクターが新鮮で印象的ですが、それぞれのキャラクターや設定はどのようにして生まれたのでしょうか。
前述の『エクソシスト』でも悪魔パズズが相手にとって聞きたくないこと、心苦しいことを言葉で突きつけて動揺や混乱を招いており、そこは大きなヒントとなっております。さらに昨今は人間である我々が詭弁や詐術的言動をしていることに対する皮肉として「悪魔の方が正論を吐く」という味付けを施しております。
――『悪魔の論破 ~信じてはいけないあの娘のために~』(小学館)は5月12日に書籍として発売されたばかりですが、洋介犬さんが本作に込めた思いや作品を通して読者に伝えたいことがあればお聞かせください。
嬉しいことに反響が大きく、すでに深い感銘を受けたという旨のご感想を続々いただいており、感謝ばかりです。
今回、今までチャレンジしなかったこととして、主人公サイド間で意見が割れる・制止するというシーンを盛り込んでおります(蝉庵カラとパヴズ・初の意見対立)。ぜひこの漫画での結論を鵜呑みにせず、どちらが正しかったのか、いやどれでもない自分の意見は…と御一考いただく一助となれば幸いです。
――本作の中で洋介犬さんが特に気に入っているシーンやセリフがあればお聞かせください。
悪魔パヴズが相手を正論で陥れる時に、幻覚を伴ったイメージを描写しているのですが、のびのびと現実的でなく、それでいて心騒ぐようなシーンが描けて、一ホラー漫画家として楽しいです。ぜひその幻覚シーンの妙をお楽しみいただければ。
――洋介犬さんは本作以外にもホラーと風刺を掛け合わせたような新ジャンルの漫画を創作されているようにお見受けします。ホラー作品を描く上で意識していることやこだわりなどがあればお聞かせください。
やはり第一に「怖いこと」ですが、「尾を引く」ような作品になればと心がけております。俗に言えば「トラウマもの」ですが、今回は「考えさせる」風刺性も高いことがあり、読み終わった後、たとえばベッドやトイレの時とかに「あのシーンはどう捉えればいいのだろう」など思い出していただけるようなものに仕込んでおります。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
ホラーに風刺性と、悪魔やエクソシストオマージュと、この作品は今までの洋介犬漫画の集大成と自負しており、なおかつその通りのご評価もいただいております。たどり着いた果てに「他では読めないホラー漫画」になっているとも思いますので、「読むワクチン」となるか「眠れぬ毒薬」となるか、どうか読んでお確かめいただければと思います。