美大在学中から音楽活動をスタートしたシンガーソングライター・小林私が、彼自身の日常やアート・本のことから短編小説など、さまざまな「私事」をつづります。今回は、“習慣”について考えたことや、「まとめてやるデー」の素晴らしさについて。
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毎日同じことを繰り返すのが苦手だ。
繰り返しの日々がつまらなく嫌だから、みたいな格好良い理由ではなく、出来なくなってきている。
毎日学校に通っていた時でさえ同じ時間に起きる・眠るということが出来ず、朝3時に目が覚めてしまうこともあれば一睡も出来ずに学校で寝ることも多かった。
大学の時はもう諦めて、どうせ二年以上からまともに通えないと見越して一年で単位を取りまくっていた。
睡眠だけにあらず、朝昼晩ご飯を食べることも出来ない。朝食べなかった分昼にモリモリ食べて、夜はその余波でスナック菓子で済ますことも多い。逆に朝も昼も夜もバランスのいい食事を摂ることもある。これを繰り返せない。習慣、ルーティンと呼ばれるものを持てない。
一人暮らしを始めて約一年経ったが、その悪癖は抜けない。ふいに一週間くらい朝起きてご飯を食べ、洗濯物を定期的に回してこまめに掃除をし、ゴミも毎日出せていたと思えば、突然全て出来なくなって部屋が散らかり放題になる。と、思えばまた急に溜まっていた書類の整理から家中の埃という埃が払える。
日々の習慣が良いこと、みたいな風潮が悪いんだと思う。いっそのこと、祝日みたいな感じで一週間の内の一日か二日間を「まとめてやるデー」として、人類全体で取り決めてほしい。そうすれば急な来客で部屋が散らかっていても「まとやるデー、まだだから仕方ないよね~」と、なると思う。
まとめてやるデーの朝は早い。日頃は怠惰に怠惰に重ねる人達もこの日が来たとばかりに目を覚ます。足の踏み場を失くし、うず高く積まれているゴミを一気に袋へ入れる。
いつもは締め切られているカーテンを勢いよく開けて日差しを浴びる。光に反射した埃がキラキラと舞うのを見て「まとめてやるデー」の始まりを感じ、口元が自然と綻ぶ。まとめてやるぞ、という気持ちが高まるのだ。
床中に脱ぎ捨ててある一週間分の服をがばっと持って洗濯機に放り込む。洗剤の量も気にしなくていい、最大量入れるだけなのだから。ズボンの裾をたくし上げて風呂掃除へ。まとやるデーのおかげで垢やカビもむしろ溜まらない。磨いて流せばピカピカだ。
シンクにも汚れた食器が溜まっている。しかし、このまとやる制度が導入されてからは、シンクに水を溜めてそこに皿やカトラリーを沈めてあるので変にこびりついているということもない。
次第にゴウンゴウンという音が聞こえてくる。洗濯機のラスサビである。
いつの間にか夢中で、まとめてやった部屋は日差しで煌めいている。
まとめてやるデー、なんて素晴らしい日なんだ!まとめてやるデー最高!まとめてやるデー万歳!
そんなことを考えていたら土日が終わっていた。部屋の埃がまた少し増えている。
●ダ・ヴィンチWeb
https://ddnavi.com/serial/kobayashi_watashi/
小林私(こばやし・わたし)
1999年1月18日、東京都あきる野市生まれ。
多摩美術大学在学時より、本格的に音楽活動をスタート。
シンガーソングライターとして、自身のYouTubeチャンネルを中心に、オリジナル曲やカバー曲を配信。チャンネル登録者数は14万人を超える。
2021年には1stアルバム「健康を患う」がタワレコメン年間アワードを受賞。
2022年3月に、自らが立ち上げたレーベルであるYUTAKANI RECORDSより、2ndアルバム「光を投げていた」をリリース。
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