コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。“骨董店の店番兼物書き”という肩書の主人公が語る形式で、さまざまなストーリーを世に送り出しているかんさびさん。なかでも4月8日に投稿された「外套とまじない」は、1.7万件ものいいねを獲得した人気作だ。不思議な余韻の残る独特のお話作りについて、インタビューをおこなった。
後悔を抱いたまま囚われた男が、指針を見つけるお話
「普段からやっているおまじないとか、家族から聞いた迷信とかありますか?」というコメントとともに投稿された「外套とまじない」は、主人公がある日仕入れた“上質な外套”にまつわるお話。来店した女性が興味を持ったため、着てみた時の形を見せるために主人公が外套を身にまとったという。
そのとき、主人公が着ていたシャツの袖口にあるボタンが取れかかっているのを見つけた客の女性。裁縫が得意なのか、服を着たままボタンを付け直すと申し出てくれたそうだ。手際よくボタンを縫いつける途中、女性は「弘法は旅の衣に急がれて着せて縫うのも目出度かりけり」と不思議な唱えた。着たまま服を縫うのは縁起が悪いので、ゲンを担ぐ意味があるとか。「弘法は衣を着たまま縫うくらい旅を急いでいる。それほど忙しいのは素晴らしいことだ」という意味だと主人公に教えた女性は、後日夫を連れて試着に来ると言って退店した。
そんなできごとがあった夜、店の中から男の泣き声が聞こえたという主人公。駆け付けると、外套のそばで男が泣いているではないか。話を聴くと、彼は生前に妻とあったいさかいについて話してくれた。妻が唱えてくれたおまじないに気づけず、病で妻を失ってしまったのだとか。外套に妻への後悔が残ってしまい、どこにいけばいいかもわからなくなってしまった男性。男性を哀れに思った主人公は、そこである“まじないの歌”を唱える…。
不思議を通して「古い時代の日本」を知ってもらいたい
――本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。
私は日本に古くから伝わる伝統や風習、迷信、民俗学に興味があり、色々と調べている時に現代にも伝わっているおまじないの唄というものを見つけて興味を惹かれ、この作品を思いつきました。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
この作品をはじめ、私の作品は読み手が主人公の目線で古い時代の日本を不思議を通して感じてもらえるように作っています。この作品も主人公の目線で日本に伝わる不思議を感じてもらえればと思います。
――やはり、歌っていた女性と外套を着ていた夫婦は血縁関係があるのでしょうか。
店に来たお客さんの女性と、外套に心を残していた男性の霊は関係はないので血縁関係ではないです。偶然にしろ何かしらの縁はあったのかもしれません。
――この歌は実際に存在するものなのでしょうか。
調べたところ、いろんな形に代わって日本各地に今でも残っているようです。いつから言われているものなのかは確かではありません。
――不思議なお話を描かれているかんさびさんですが、創作の源泉はなんですか。
日本に陰陽道が伝わったかなり昔の日本から、大正、明治、昭和と日本に伝わっている迷信や民間信仰などに興味があり、それを調べてながらお話を考えています。骨董品を調べる上で、それがなぜそういう形になったのか、模様にはどんな意味があるのかなどを詳しく調べていくことで、お話が生まれていく感じです。
――今後の展望や目標をお教えください。
引き続き定期的にお話を更新しながら、もっと他のシリーズや小説にも挑戦したいと思っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
色んな視点と価値観などを不思議な話を通してこれからも更新していくつもりですので、古き日本の不思議な話、昔話などがお好きな方は是非作品をお読みいただければと思います。