コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、神様になりたい物の怪が一族の跡継ぎを見守る物語を描く『見守り様』をピックアップ。
少年サンデーS(小学館)に過去掲載された読み切り作品である本作を、作者の夏葉かんなさんが4月27日にTwitterに投稿したところ、3.8万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では夏葉かんなさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
名家の跡取り息子と“見守り様” 二人の関係性と感動の結末に「胸を打たれた」
神様になりたいという野望をもつ物の怪は、かつて本物の神様から「人間の一族を1000年見守れば神様になれる」と教えられる。以降、“見守り様”として由緒ある賢生一族の繁栄を先祖代々見守ってきたものの、賢生家の900年目の跡取りで一人息子の亮一郎は幼少期からやんちゃばかりして手が掛かり、心配が絶えずにいた。
一度見たものに変幻できる物の怪は、小学校での亮一郎の様子を探るため人間に化けると、転校生の御守悟として共に学校生活を送ることに。幼なじみとして長い年月を過ごす二人だが、成長したある日、亮一郎は好きな子ができたと御守に初めて明かす。
亮一郎と彼女と御守の3人で学校から帰る途中、亮一郎に対する彼女の愛情を目の当たりにして「もう大丈夫なのかも」と感じる御守。しかし次の瞬間、突風により建物の壁が剥がれ、下にいる亮一郎を目がけて落ちてくる。御守は亮一郎を助けるため駆け寄ると自らを犠牲に下敷きになってしまい…。
跡取りである一人息子と見守り様の切なくも心温まる物語を描いた本作。見守り様の“神様になれなかった”その後を描いた感動的なラストシーンも話題を呼び、Twitter上では「良い話」「胸を打たれました」「見守り様に涙腺の元栓持ってかれた」「地下鉄で読んでて泣いてしまいました」「このページ数の漫画にここまで感動したの初めて」「素晴らしい作品」など読者からのコメントが寄せられ反響を呼んでいる。
「“脇役の一生を描きたい”をきっかけに」作者・夏葉かんなさんが語る創作の背景とこだわり
――『見守り様』はどのようにして生まれた作品ですか?
「脇役の一生を描きたいな」と思ったのが見守り様を描く最初の動機でした。キラキラした恋愛や友情を経験していく主人公のようなキャラクターの横にいる人に焦点を当てた話を作りたいなと。私自身が『名脇役』みたいなキャラクターを好きになりがちなんです。
―― “跡継ぎ”と“物の怪”をテーマにした本作ですが、亮一郎と見守り様、それぞれのキャラクターや設定はどのように生み出されたのでしょうか?
作品のテーマが『脇役の一生』だったので、亮一郎と見守り様の関係は『主人と従者』のようなものにしようと考えました。そこから亮一郎が代々続く名家の生まれに、そしてその傍にいる存在…というよりその家・家系に仕えているような存在として妖怪の『座敷わらし』のイメージが浮かびました。見守り様はそこから派生して生まれた物の怪でしたね。なので見守り様はいいやつな面とちょっと恐ろしい面があります。
――本作をTwitterで公開後3.8万以上の「いいね」が寄せられ、心温まる物語が話題を集めています。今回の反響について夏葉かんなさんの率直なご感想をお聞かせください。
自分の作品をたくさんの人に読んでいただき、反応をいただけたことに素直に驚いています。漫画を描いている時は自分の伝えたいことが読んだ人にきちんと伝わるかは予想をすることしかできないので、細かい表情の変化やちょっとした小ネタに気付いて貰えるとすごく安心しますね。
一度どこかで『見守り様』を読んだということを覚えていて、今回のツイートを見て再度反応をくださった方がいて印象に残っています。その人の記憶の一部に残る話が描けたんだなとうれしく思えましたね。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。
「誰かが誰かを見守っている」ということをお話全体を通して感じていただけたらと思います。
あとは亮一郎と御守はずっと一緒に過ごしているので、小学校時代から高校時代に変化する間でお互いの振る舞いに影響を受けていたりします。些細な変化ですが、気にしていただけたらとてもうれしいです。
――夏葉かんなさんは本作以外にも『魔王様にはまだはやい!!』や『ご契約は食事のあとで!』など人外と人間の物語を多く描かれていますが、創作全般においてのこだわりや特に意識している点があれば教えてください。
日常の中に少しだけ不思議なものが混ざっているような話を描きたいと考えています。クラスの同級生やアパートのお隣さんなんかが実は人とは少し違う存在だったりしたらそれだけでひとつ物語が生まれると思います。
そういう互いに理解しきれない異質なもの同士が交流を深めつつ、私たちと同じような世界で当たり前の日常生活を送ろうとしている姿に魅力を感じますね。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
読者の皆さんからいただいた反応やコメントはひとつひとつ大切に読んで励みにしています。話を描いていて不安になることが多いので全部がとてもありがたいです。これからもたくさんの作品を残せるようがんばりますので、どうか見守っていただけたらと思います。