毎週金・土に配信中の韓国ドラマ「悪鬼」でメインキャラクターを演じるのは数々の受賞歴を持つ実力派俳優のキム・テリ。同作は、不可解な死を遂げた父親の遺品を受け取ったことで、悪鬼に取り憑かれた女性ク・サニョン(テリ)が、悪鬼の姿を見ることができる民俗学者の男性ヨム・ヘサン(オ・ジョンセ)と出会い、疑問の死を暴くオカルト・ミステリー。テリは「第58回百想(ペクサン)芸術大賞」(2022年)のテレビ部門にて、女優最優秀演技賞を受賞したことも記憶に新しいが、注目を集めるきっかけとなった長編映画のスクリーンに登場したのはわずか数年前の2016年だった。今回はそんな彼女のこれまでのキャリアを振り返る。
映画「お嬢さん」で新人賞を総なめ!
1990年4月24日生まれのキム・テリ。韓国映画界の名手の一人でもある、パク・チャヌクが監督を務めた映画「お嬢さん」(2016年)で、長編映画デビューを果たす。同作はイギリス出身の作家、サラ・ウォーターズの小説「荊(いばら)の城」を原作に、劇中では詐欺グループに育てられ、詐欺師にスカウトされたことをきっかけに、莫大な財産の相続権を持つ令嬢・秀子(キム・ミニ)のメイドとして働くこととなった主要人物の一人、ナム・スッキを演じた。
このオーディションで1500倍の競争率の中から抜てきされたテリは、センセーショナルな内容にもかかわらず堂々たる演技が評価され、青龍(チョンニョン)映画賞をはじめとする、数々の映画賞で新人賞を獲得し、一気に注目を浴びた。
その後、韓国民主化運動を描いた実録映画「1987、ある闘いの真実」(2017年)、日本の同名漫画を原作にした映画「リトル・フォレスト 春夏秋冬」(2018年)などに出演。どの作品でも自然体な姿を演じ、時に強いまなざしで訴えてくる迫真の演技に、見る者の多くが引きつけられた。ベテラン俳優の間に入ってもヒケを取らない存在感のある演技力は彼女の魅力の一つだ。
31歳にして“高校生役”を見事に体現!
着実に俳優としてのキャリアを積み重ねていく中、2021年は宇宙SF映画「スペース・スウィーパーズ」(Netflix)で宇宙ゴミ掃除船“勝利号”のリーダー・チャン船長を演じた。オールバックに強面なサングラスをかけ、これまでとは違った新たなビジュアルへ変身を遂げた姿も印象に残る。
また、2022年にはナム・ジュヒョクとの共演も話題を集めたドラマ「二十五、二十一」(Netflix)に主演。フェンシングに出合いスポーツに青春のすべてを捧げたナ・ヒドを好演した。
何事にも真っすぐで天真らんまんなキャラクターのヒドが、高校生から大人へと成長していく繊細な“青春期”を丁寧に表現したテリの演技に心を打たれ、涙する人も多かっただろう。もともと童顔なテリだが、実年齢とはかなり離れた高校生役を演じると聞き、「(高校生に見えるよう)スキンケアを一生懸命頑張った!」というエピソードもまた彼女らしい。そのおかげか、高校生姿にも違和感がなかった。
一方で、ヒドの高校時代はピュアでありながらも、強い芯を持ち、そして時には学生らしいチャーミングなキャラクターには、どこか等身大のテリの姿と重なって見えてしまうような一面も。この作品で「第58回百想(ペクサン)芸術大賞」の女優最優秀演技賞と人気賞をダブルで獲得し、名実ともに実力派俳優としての地位を確立した。
これまでの作品でも幅広い役柄を演じてきたテリが出演する新作「悪鬼」では、“悪鬼”に取り憑かれてしまう女性・サニョンという難しい役どころに挑んでおり、普段の表情と取り憑かれ豹変した状態とのギャップも見応えたっぷり。
ジョンセ演じるヘサン教授とのコンビも回を追うごとに魅力を増し、ただ怖いだけのオカルト・ミステリーではない深みのある物語となっている。“悪鬼”の核心に近づく中盤から終盤にかけてのテリの演技にますます期待したい。
「悪鬼」は、ディズニープラスのスターで毎週金・土に1話ずつ独占配信中。
◆文=suzuki
TCエンタテインメント