「面白いものならどの国でも受け入れてもらえる」
――いまや韓国ドラマは世界で見られることが前提となっていると思うのですが、海外の視聴者を意識されることはありますか?
これは私だけかもしれないんですが、たとえば「今回は地上波で放送されるから地上波のやり方に合わせよう」とか「今回は配信で流れるから配信のやり方に合わせよう」とか、そういうことは考えないようにしているんです。
「悪鬼」でも、どうすればもっと面白い作品、もっと完成度の高い作品になって、視聴者に好きになってもらえるか、たとえば登場人物だったらもうちょっと地に足の着いた、リアルで共感してもらえる人物として描けるのか、そっちのほうを中心に考えるようにしています。
そして、たとえば日本のお客さんに受け入れてもらえるように日本の要素を入れるとか、アメリカの視聴者のためにアメリカの文化の要素を入れるとか、そういう風にやると作品としての個性が希薄になってしまうと思うんです。
韓国でも、日本の「スラムダンク」や「すずめの戸締まり」が人気になっていますし、面白いものだったらどの国のものでも受け入れてもらえるんじゃないかなと思っています。
――最後に、日本のファンに向けて本作の見どころを含めてメッセージをお願いします。
この作品は韓国的な要素もありますが、根底にある“人間の暮らし”には、国が違っても似たようなところがけっこうあると思うんですね。
特に韓国特有の“恨(ハン)”という感情、ちょっと無念さとか、なかなか晴らせない悲しみの感情、いろんなものが絡み合った複雑な感情を指すんですが、私が日本の小説や漫画、アニメを見ても、韓国の恨(ハン)に近い感情が描かれているような、そういう印象を受けます。
ですから、この「悪鬼」というドラマをご覧になって、韓国と日本のどういうところが違うのか、どういうところが近いのか、世界の人々はだいたいこういうことを考えて暮らしているんだなというところにも注目していただきたいなと思います。
◇取材・文=酒寄美智子
TCエンタテインメント