【試写室】「遺留捜査」上川隆也の“ライフワーク”は健在だ
「三度のメシより遺留捜査」で、実際に東京の西の方から、月島に引っ越し、それを上川氏本人に伝えて恐縮されてしまった筆者にとって、「遺留捜査」が連ドラで復活!の報は今年イチうれしい出来事と言っても過言ではなかった。
それと同時に、「だがしかし…京都府警へ異動!」と聞き、人知れず、もんじゃストリートで泣き崩れたのは言うまでもない。テレビ朝日の視聴者センターに電話しようかと本気で悩んだほど。ええ、筋違いですけどなにか。
私情はさておき、いよいよ13日に初回2時間スペシャルでスタートする本作。“木曜ミステリー(夜8時)枠”という、「科捜研の女」や「おみやさん」など、テレビ朝日にとって大事な作品がたくさん生まれてきた枠で初めて放送されるのだが、これまたどうしてしっくりくるのは、作品の持つ味からか。
誰もが子供の頃に乗ったことがありそうな遊具が爆破されるバイオレンスなシーンからスタートした初回。
その後の船の爆破シーンといい、やはりというべきか、そんじょそこらの刑事ドラマとは比べものにならないほどリアルというか、生々しいそれ。一発で作品の世界に引き込まれた。
そして、土地が変わったこともあって、オープニングのタイトルバックもまたこれまでとは違った味わいのあるものに。ベースの音楽が変わらないだけあって、遺留捜査感は損なわれない上、とても上品で格好いい。
SPドラマでは割と知らないチームで事件を解決することがあったからか、今回新たに京都府警捜査一課の「特別捜査対策室」の捜査に加わっても、全くもって違和感がない。マイペースで何色にも染まらないが、どこにでもすぐに溶け込めるのが糸村の糸村たるゆえんか。いや、そこまでは言えんか。
というより、第1シリーズから糸村がいる所に必ずいる村木という男の影響もあるのかも。今回も、村木との台本を超えたやりとりは健在だ。あまり意味を持たなそうな遺留品が持ち込まれたとき、“嫌な予感”がするくだり、「ここは京都だぞ♪」の言い方はちょっとかわい過ぎる…。
村木ファンが萌えること間違いない。しかも先日のトークショーでも断言していたが、歴代この村木とのやりとりは、脚本家のせりふ回しをそのまま演じるということはないらしく、長年培われた2人の空気感によって毎回オリジナリティーあふれるものになっているんだそう。
今回、画面を通して2年ぶりの再会のシーンはまるで上質なシットコムを見せられているかのように、クスッと笑えるので、油断して見逃すことないよう。
何なら、そのうち糸村&村木の“村々コンビ”で「M-1グランプリ」に出たとしても、いい線いきそうな予感だ。“結成(作品誕生)15年”になる前にぜひ、出てほしいなあ。
さらに、本作から登場の戸田演じる佐倉の“聞き込みの心得”は、今どきの記者に見てもらいたいくらい参考になるし、栗山演じる莉緒の150キロの直球のような真っすぐな刑事としての立ち居振る舞い、財前のデキる女性代議士感、金剛地武志の実にいそ~な秘書っぷり、困ったときの東根作寿英、伊東四朗の“業界のドン”感などなど、見どころ十分だ。
また、今回の糸村さん。これまでもしれっと多才な面を見せてきたが、まさか“手旗信号”までビシッと決めてしまうとは…。ものすごく真剣な表情で旗を動かす糸村には、申し訳ないが思わずニヤリとしてしまった。それに、彼の記憶力も今回まざまざと見せつけられた。
個人的には、京都の街でも肩掛けバッグにおなじみの自転車で捜査に臨んでいるところを見られたのはうれしい限り。冒頭で触れた3分だけ~のシーンもバッチリあるし、3分じゃ終わらないのも彼の“仕様”として、「もう糸村さんったらしょうがねえなあ~」とニヤニヤしてしまった。
はてさて、相変わらず長くなってしまったな。
では、そろそろ不動産屋さんに行ってみようかな。今度はどこに住むかって?ふっ、ここまで読めばお分かりでしょ?
そうだ京都、行こう。