長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『行列のできる相談所』(毎週日曜夜9:00-9:54、日本テレビ系)をチョイス。
ユニークなテンポ、そしてリズム…見ているときは油断ができない「行列のできる相談所」
またしても『行列』を見てしまった。前回の記事で、その奔放な番組内容にすっかり魅了されたが、今回鑑賞した7月16日の放送回はしっかりスジの通っていた印象があり、まっすぐ楽しませてもらった。とはいえ、やはり異彩を放つ番組だと言わざるを得えない。今回は、企画内容ではなく、番組そのもののユニークさについて考えてみたい。
まずオープニングからしておかしい。MC・東野幸治とアナウンサー・市来玲奈の立つ司会者席の後ろには2頭のライオン(?)の像が鎮座していて、番組が始まると、左側のライオンの顔がアップになり、口が開き、そのままカメラが引いて司会者席の全容を捉えてタイトルコール、という流れなのだが、右側の口は一切開いていない。左側のライオンだけが口を開けている。予算や技術的な都合もあるのかもしれない。そもそも、2頭とも口を開けないのはおかしい、というのは私の勝手な感覚であり、そのアシンメトリーさが魅力であるとも言えるかもしれない。ただ私が、左側のライオンだけ口を開くって何だよと思ったというだけの話だ。
あとはやっぱり、独特のスピード感が全編に通底している。速い、遅い、ではなく、『行列』にしかないテンポ、リズムというものがあって、VTRの編集はわりあい普通に見えるのに、スタジオの映像に切り替わると凄い。東野幸治がゲストに面白く質問を振って、ゲストが答えて、皆が笑い、その笑い声がまだ響いている中、東野幸治はもう次のゲストに話を振っている。東野幸治がとにかく人の話を聞きたくて仕方のない化け物であるという可能性も0ではないが、実際これは編集によるところで、決められた尺の中に面白い”くだり”を入れられるだけ入れようという意思が感じられ、なるほど、それは合理的だ、と思って見ていると、たとえば話をする吉沢亮とただ相槌を打つ東野幸治との分割画面だったり、はたまたテロップで示されるレベルのツッコミをした後藤輝基の姿を一切映さなかったり、合理性とのズレみたいなものが際立ってくる。だから奇妙な印象が残るのかもしれない。そもそも私はテレビのド素人、素材の編集やカメラのスイッチングについては何の知識も有していない為、まったく的外れなことを言っている可能性が高いが、ともかく『行列』を見ているときは、決して油断ができない。最後までくぎ付けになってしまう。定位置にいる役者たちが次の瞬間にはスタジオの真ん中に横一列に座っていたりする。本当、めちゃめちゃ面白い番組ですよ。ていうか今回の企画、肉がどれも美味そうすぎて、それは普通にたまんなかったですね。高級店ばかりが紹介される中、吉沢亮が一皿1,000円程度のジンギスカンを紹介していて、とても助かった。週末あたり、私もジンギスカンを食べに行くことにしよう。