コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“高校生の変わった悩み”を描いた漫画『腕が4本ある女子高生のはなし』をピックアップ。
作者である漫画家・イラストレーターのよしづきくみちさんが、2023月6月10日に本作をTwitterに投稿したところ、5.1万件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事ではよしづきくみちさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
女子高生に突如生えた“見えない両腕”
物語のヒロインとなるのは、高校2年生の伊良林ふみ。彼女は水泳部のエースであるにもかかわらず、なぜかかけもちまでして「オカルト同好会」に入部する。そして同好会のメンバーでふみの同級生でもある諫早信は、毎日オカルト本を読みふけるふみの様子を見て「いつも熱心に何調べてるんだろう」と興味を抱いていた。
そんなある日、諫早はふみが部室のパソコンで「生える 透明」と検索している現場を目撃する。諫早が「…何調べてるの?」と話しかけると、驚いたふみは「いやあああー!みないでえええーっ!」と叫び、その瞬間諫早は“見えない何か”に叩かれて吹き飛ばされてしまう。
そしてパニック状態のふみを落ち着かせようとした拍子に、“見えない物体”に触れる諫早。「な…なんだこ…れ」と困惑していると、突然ふみは涙を流しながら諫早に助けを求めるのだった。
実は諫早が触れたのは、ふみに生えている“見えない手”。もともと水泳部で落ちこぼれだったふみは、「もっと速く泳ぎたい」と強く願った結果、いつの間にか両肩から“見えない2本の手”が生えてしまったというのだ。
ふみの話を聞いてオカルト愛好家としての血が騒ぐ諫早。しかしふみは「一生懸命やってきた水泳でズルしちゃってて…」と引け目を感じていることを告げ、「この透明腕を諫早君の豊富な知識で消滅させてほしいの」とお願いする。
そんな彼女の気持ちを汲み取り、協力することにした諫早。“透明腕”をなくす手伝いをする中でいつの間にか彼女のことを好きになってしまうのだが、その後諫早とふみには思わぬ展開が待ち受けるのだった――。
“腕が4本ある女子高生”という変わった設定をもとに、様々な出来事が繰り広げられる本作。物語終盤では感動的なシーンも描かれており、ネット上では「めちゃくちゃ面白いし、深くて良い話だった!」「ふみの心理描写がとても丁寧に描かれていて、思わず共感してしまった」「不思議な面白さがあって、最後まで楽しく読めた」「終わり方が神すぎる」「最高のラブコメ」など称賛コメントが続出している。
キャラやストーリーの構築は「何かを失った人は別のより強い何かを得る」という法則がベース
――『腕が4本ある女子高生のはなし』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
私はよく「何かを失った人は別のより強い何かを得る」といったことを作品の根底テーマにすることが多いのですが、本作では逆に「人より余分に持たされた者のつらさや弱さ」に焦点を当ててみようと着想したのがきっかけです。
さらにそこへ、子供の頃に読んだオカルト本に載っていた「キルリアン効果写真」の不思議な現象をプラスして、あまり他に類を見ない“悩みを抱えた女子高生”を誕生させるに至りました。
――本作では、伊良林ふみが諫早を助けるシーンが印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
入魂した作者的注目ポイントはまさにそのシーンです。たとえ世界中の人たちから忌み嫌われても、たった一人に認めてもらえればそれだけで救われる──。そしてそんな奇跡の転換ができたら、あなたのコンプレックスは様々な人を助ける強さになるかもしれない…と、そんな風に感じて頂けたら嬉しいです。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
「君がわざわざウチに入部したのは、困ってたからなんでしょ?」というセリフ、伊良林さんと諫早の行動を端的かつ純粋に表していて個人的に気に入っています。
あと伊良林さんが諫早に「怪奇現象って言わないで!」と苦言を呈している割に、自分で「この怪奇現象は~」って言っちゃってるところがちょっと間抜けで好きです(笑)。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
前述したように「何かを失った人は別のより強い何かを得る」という法則をベースに、あとはその時々で目にした出来事や記憶に留めていた要素を、その法則に当てはめてキャラやストーリーを構築していくことが多いです。
“極めて高度にバランスがとれている世界”を最大限魅せられるよう切り取っていくようなイメージです。
――よしづきくみちさんの作品は、キャラの描写がとても繊細かつ丁寧で、特に女性キャラに関しては表情や仕草、ビジュアルなど1つ1つがとても魅力的に描かれている印象を受けました。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
漫画だけでなく、イラストでも人物描写に強く意識しているのは「日常感」です。「こんな女の子ってクラスの隣の席にいそう」とか「隣にいて欲しい」と思わせるような仕草だったり自然さだったり清潔感だったり、そうしたものを注意深く入れ込んでいます。
キャラに日常感を持たせられたら、あとはどんな背景世界にも観る人を導入できるので、彼らや彼女らにはいつもその呼び水になってもらっています。
――今後の展望や目標をお教えください。
現在講談社現代ビジネスサイトにて「南海トラフ巨大地震」をテーマにした漫画連載を手掛けており、そちらの単行本が8月30日に発売予定です。こちらも前述の法則に当てはまった物語ですので、是非ご一読頂ければ幸いです。
それと来年に新作連載予定がもう一本あります。またSNSも今年に入ってから活発に使い始めているので、ぜひフォローをお待ちしております。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
小学校の卒業文集に「将来の夢は漫画家」と書き、以来これまでずっと絵描き一本道の人間です。これからももちろんずっとずっと描き続けますので、応援の方何卒宜しくお願い致します!
作者Twitter:よしづきくみち
▼「現代ビジネス」で連載中の漫画『南海トラフ巨大地震』はこちら▼
https://comics.gendaibusiness.com/viewer/nankaitrough/1