夏のドラマがだいたい出揃ってきましたが、おもしろいのが多すぎる。ひとことで「おもしろい」と言っても、世界を巡る大冒険ドラマあり、すぐ隣にいる人との小さな世界のドラマもあり。いろいろな「おもしろい」のうち、特に私が「おもしろい!」となっているのは次の3作です。
『VIVANT』(TBS)
広大な砂漠をさまよう、スーツ姿の男。そんなびっくりする映像で始まったVIVANT、次々出てくる俳優陣は全員主役級の豪華な顔ぶれ。今までの日本のドラマではなかったスケールの大きな物語、特に第一話は本編が100分ほどと長かったこともあり、映画を一本見たような心地よい疲労感がありました。主人公の乃木はなぜもうひとりの自分と会話するのか、彼がうなされる夢の意味はなにか。謎だらけで気になる……んですが、今のところなんでもできちゃう有能なドラムがかわいくて、彼が出てくるとうちわを振って応援したくなります。ここまで一難さってまた一難な道のりですが、ドラムは絶対最終回まで生き残ってほしい。
『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ)
かわいさではドラムに負けていない向井くん。性格も穏やかで、モテモテでしょう?と思いきや、この10年恋をしていない。どうしてだろうと彼の日々を見ていると「あー、なるほど……」となんとなくわかってしまう。「彼女を守ってあげたい!」という空回りや、「好きになってあげなきゃ」と、合わない相手への無理。うまくいかない恋愛に悩む向井くんの話を友だちとして「そりゃダメでしょ」と聞いてあげたくなるけど、今の彼との恋についてはちょっと躊躇する、絶妙なダメさ加減。赤楚衛二さんの清潔なピュアさがあるからギリギリ許せる向井くん、最終回くらいには「つきあってください!」って言いたくなるほど成長するんでしょうか。恋や結婚というとても身近な人と人の話こそ、なかなか踏み出せない大冒険ですね。
『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日)
スランプの小説家・三馬が都会から引っ越してきた緑豊かな集落「ハヤブサ地区」。住人たちに誘われて消防団に加入、そして「連続放火騒動」「不審死」など、続けて起こる不穏な事件。と書くと、陰湿なサスペンスになりそうなんですが、中村倫也さんの醸し出すなんともほんわかとした雰囲気のせいか、あまりドロドロと怖い感じにはならない。それにプラスして、消防団のみなさんのおかしみと味わい深さがかわいらしくて怖くない。でもこの先、あのすてきな彼らのうち誰かが凶悪な放火魔で殺人犯とかだったら、人間不信になりそう。村人以外の誰かが悪人だったらいいな……とつい思ってしまいますが、身内は善で悪いのは外の人と思いたがる心自体が、一番怖いかもしれない。
他にも、繊細な恋心にキュンとする『初恋、ざらり』や、島の人たちがいとおしい『ばらかもん』、働くことの意味を考えてしまう『転職の魔王様』などなど、「おもしろい!」ドラマ多すぎですね。見逃しているものを追いかけるならTVerで。
■文・イラスト/渡辺裕子